レキシが7thアルバム「レキシチ」を4月20日にリリースした。
音楽ナタリーでは、3年半ぶりのアルバムとなる本作のリリースを記念して特集を展開。GAMO(東京スカパラダイスオーケストラ)、ハナレグミ、柏木ひなた(私立恵比寿中学)、かみちぃ(ジェラードン)、八嶋智人、西加奈子、錦戸亮というレキシと親交のある7人の著名人に「レキシチ」のキャッチコピーを考えてもらった。
また特集の後半にはアルバムインタビューを掲載。あ、たぎれんたろう(Atagi[Awesome City Club])、にゃん北朝時代(カネコアヤノ)、ぼく、獄門くん(打首獄門同好会)といった豪華アーティストとのコラボレーションなど、作品の制作エピソードを語ってもらった。
取材・文 / 宮内健ヘッダ手書き文字 / レキシ
7人が考える新作のキャッチコピー
今日の取材は何やら企画物だって聞いたけど……どんなことやるの?
──今回は、レキシの通算7枚目となるアルバム「レキシチ」のリリースをお祝いするべく、7人の著名人の方々に「レキシチ」のキャッチコピーを考えてもらいました。
へえ、すごいね! 「七人の侍」的なやつ? いや、待てよ。「地獄の7人」って映画もあるよね。怖い怖い……。
──いやいや、お祝いですから。殺伐とした企画にはならないはずです(笑)。1人目はこの方……東京スカパラダイスオーケストラのGAMOさんです。
えっ、ちょっと待って! 今日俺が着てきた服、見てよ!(と、上着を脱いで、おもむろにTシャツを見せる)
──GAMOさんのソログッズじゃないですか! なんという偶然(笑)。
ヤバくない? このTシャツ、通販で買って届いたばかりなのよ。
──プライベートでTシャツを買うくらい大ファンであるGAMOさんからのキャッチコピーとコメントがこちらです。
GAMO(東京スカパラダイスオーケストラ)
キャッチコピー
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池ちゃんの必殺技である言葉遊びに磨きがかかりニヤニヤが止まらないが、
オモシロのウラ側にはいつの時代も変わらない普遍的なテーマやロマンが隠されている。
皆気付いてないかもしれないが実は池ちゃんは歌がイイのだ!
ふふふ。イナバ物置やん(笑)。元ネタは「やっぱりイナバだ」なんだけど、「やっぱりレキシでしょ」にしてる。この“でしょ”って語尾にしちゃう感覚が、GAMOさんらしさ(笑)。おおらかで優しい感じだね。
──コメントでは、「池ちゃんは歌がイイのだ!」と、ボーカルについて絶賛されています。
歌を褒めてもらえるなんてうれしいね。ま、GAMOさんにだったら何を言われてもうれしいけど(笑)。俺が高校時代に初めて買った邦楽のCDが、スカパラとスチャダラパーだったからさ。その2組は、直接的に影響受けた存在だから、何度会ってもピシッとする。高校の頃の感覚がよみがえるというか。好きな人に認められたいみたいな気持ちの延長で、先輩たちの視線は心のどこかで常に意識してるかも。いつか追いつきたいって気持ちもあるしね。
──そんなスカパラのメンバーにおいても、GAMOさんはまた特別であると。
唯一、素のテンションで接することができるというか。もちろんミュージシャンとしてリスペクトしてるんだけど、とにかく親しみやすくて、親戚のおじさんみたいな安心感がある。スカパラとフェスで一緒になっても、バックステージでついついGAMOさんのところに行きがち(笑)。GAMOさんはコラボレーションする前に、唯一レキシネームを付けた人だから。
──“ケニー爺”ですね。
それも飲みの席で決まったから。“ケニー爺”って、ちょっと先輩をイジってる感じの名前じゃん(笑)。だけども「面白いね!」って大笑いしてくれて。GAMOさんは俺が何を言っても面白いって返してくれるんだけど(笑)。GAMOさん、大好き。
──さあ、あとにも控えているので、次に行きましょう。
この感じで、どんどん来るの? カロリー高っ!
──次はまさに盟友といえるこの方です。
ハナレグミ
キャッチコピー
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今作もメロディラインいいなぁ~
とうっとりしていてふと、、あれ? でも今草履って言ってる??
こいつはまたレキシの歌のマヤカシにはめられた! 夢とうつつを行ったり来たり!
コロナ禍でも夢の城下町レキシーランド、今日も元気に開催中! メロ代官様に小判餅送ってメロディを三万石ほど分けてもらいたい!
2番目がタカシでちょっと安心した(笑)。なぜか、みんなレキシのメロディを褒めてくれるんだよね。
──特に今回の「レキシチ」は、先行でミュージックビデオが公開された「マイ草履 feat. にゃん北朝時代」をはじめ、メロディのよさが際立つ作品なのかもしれませんね。
でも、メロディのよさについていえば、最近の若い人たちのほうが、すごいじゃない。起伏の激しい複雑なメロディで、ファルセットで歌ったら、すぐ地声に戻ってみたいな。しかもみんな歌が上手だし。逆に言えば、歌えるからそういう曲を作るんだろうね。
──確かに。
これまでは、複雑なメロディが思い浮かんでも、「ライブで歌えないな」って理由で曲にするのを躊躇しちゃってたわけ。だけど今回はそれを取っ払って、とにかく1回作ってみてから、歌えるか歌えないか判断したところがあって。それが結果的に今回のメロディアスな作風につながったのかもしれない。
──永積さんのコメントにある「メロディの美しさにうっとりしてると、“草履”って言葉がふいに出てくる」みたいな感覚。それってレキシが初期から続けていることでもありますよね。
うん、そうだね。それはもともとのコンセプトだし……なんならあなたも一緒に作ったんですけど、みたいな(笑)。レキシを始めた頃、俺が書いた曲を聴いてタカシも一緒にゲラゲラ笑ってたでしょ。「Let's 忍者!(笑)」とか言って。
──そんなレキシの誕生に立ち会っていた人物が、今もなお新鮮に楽しめるようなアルバムだということですよ。
そうだね。しかし、“メロ代官”ってウマいこと書くよなー。逆に言えば、この人は“コトバ代官”だもんね。ちなみにこのコメントでも使ってるけど、タカシって「●万石」って言葉が好きなんだよね。昔からよく使ってる。でも、こういう感覚をレキシではすごく大切にしていて。
──というと?
タカシくらいの、歴史に対しての接し具合を曲作りで参考にしてるというか。マニアックになりすぎても聴き手に伝わらないし。日本史にさほど詳しくない人が「●万石」ってワードを面白がる感覚とか雰囲気を意識して、いつも曲を作ってるんだよね。たぶんタカシは代官が何をする人なのかもよくわかってないんじゃないかな(笑)。
──なんとなく偉い人、くらいの(笑)。
そうそう。でもその感覚が俺にはすごく大事。あんまり歴史を知らないタカシに伝わるかどうかが、レキシの肝だね。
──なるほど。さて、続いては若い世代を代表してこの方です。
柏木ひなた(私立恵比寿中学)
キャッチコピー
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1曲の中でいろんな色があって飽きることがなく
もっと欲しくなるくらい次の展開が毎度楽しみになります
今回もたくさんの楽しみ方があって
池ちゃんだからこそ作れる作品たちなんだなと
リリースおめでとうございます!
わーお、ひな! 意外! えーと、なになに……「色を操る200年奇術師」。最近の若い子って、こういう言語感覚なんだね。エヴァ以降っていうか、綾波レイがボソボソってしゃべってるイメージ。ひなに比べると、GAMOさんとタカシのコピーにはちょっと時代を感じるね(笑)。
──40代、50代をさりげなくDisらないでください(笑)。エビ中とは番組で共演(2012年4~9月にTOKYO MXで放送された番組「エビ中の永遠に中学生(仮)」。翌年4月からは第2シリーズがスタート)して以来の付き合いですよね。
ひなは当時、中学生くらいで自分にとっては姪っ子みたいな感じだったよね。こないだ、23歳になったのかな。しみじみ大人になったなって思う。それこそ親戚のおじさんみたいだけどさ(笑)。
──(笑)。
番組で共演してた頃は、エビ中もデビューしてすぐの時期だったし、俺も「レキシとしてこれからがんばっていこう!」みたいな時期だったから、どこか同期みたいな感覚もあって。お笑い芸人とかで歳が離れた同期とかいるじゃん。あの感じ。でもエビ中のメンバーが心を開いてくれるまで、ずいぶんかかったよ(笑)。
──「このモジャモジャのおじさんは、いったい何者なんだろう?」みたいな。
そうそう、得体が知れなかったと思う(笑)。本当に心を開いてくれたのって、番組がワンクール終わってから、エビ中に「頑張ってる途中」って曲を書き下ろしたあとじゃないかな。半年後に番組が再開したら、メンバー全員わかりやすく心を開いてくれた(笑)。
──「この人、ちゃんとしたミュージシャンだったんだ!」って。
子供って、わかりやすいじゃん。警戒が解けた瞬間、一気に距離を縮めてきた(笑)。そういう姿を見てるから、常に見守っていたいような気持ちがあるよね。エビ中のYouTubeチャンネルも登録してるし、みんなの活動はいつもチェックしてるよ。歌もどんどんうまくなってるし。
──今や、歌がうまいアイドルグループの筆頭ですもんね。
みんながんばってるなって思う。ひなが考えてくれたキャッチコピーも、がんばって絞り出してくれたんだろうなあ。すごく愛おしい……。お年玉あげたくなるね(笑)。
──続いてのキャッチコピーは、お笑い界からこの方です。
かみちぃ(ジェラードン)
キャッチコピー
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稀にアタック西本が西郷隆盛、かみちぃが坂本龍馬に似ていると言われるんです。
このレキシさんのアルバムを聴き終わると心までなっていました。
そんな力が詰まっている魅力たっぷりのアルバムでした。
ジェラードン、大好き! 今回、「たぶんMaybe明治 feat. あ、たぎれんたろう」のMVに出てもらってるんだよね。
──もともと池ちゃんはお笑い好きなんですよね。
ネタ番組もバラエティ番組もよく観るし。劇場まで行って若手をチェックするみたいなことまではしないけど、「M-1」は敗者復活戦から欠かさず観るくらいのお笑いファンだね。ジェラードンは、「勇者」ってコントを2年くらい前に観て、それがめちゃくちゃ面白くて、YouTubeとかでネタをチェックするようになった。
──MVはどういう経緯でオファーしたんですか?
江戸東京博物館(現在休館中)で去年の秋に開催された「縄文2021―東京に生きた縄文人―」に行ったとき、多摩ニュータウンで出土した、縄文中期の“丘陵人(おかびと)の肖像”っていう土器の装飾部分が展示されていて。それが、かみちぃにそっくりだったんだよ。ほら、これ(と、iPhoneで写真を見せる)。
──わ、本当にそっくりですね!
でも待てよ、と。「これ俺にも似てるな」って(笑)。三白眼の感じとか。ということは、「かみちぃと俺、似てるかも!」と思って、かみちぃについてネットで検索してみたら、なんと本名が上村宜史(かみむらたかふみ)で、字は違うけど俺と下の名前が一緒だったんだよ! そこで一気に親近感が湧いて、かみちぃとアタック西本さんにMVに出演してもらった。かみちぃがダンスがうまいことも知ってたから、じゃあダンスも踊ってもらおうってことになって。
──そういう流れだったんですね。コメントによると、かみちぃさんが「坂本竜馬に似てると言われる」ということは、池ちゃんも、坂本龍馬に似ているということになりますね。
似てないでしょ(笑)。でもまさか、こうやって自分の好きな芸人さんがMVに出てくれるなんて。ミュージシャン冥利に尽きますよ。だって俺、好きすぎて、MV収録の空き時間ずっとジェラードンの楽屋にいたもん。何回か会話が途切れて、向こうはそろそろ楽屋から出ていくのかと思ってただろうけど、「ところでさ」って俺が話を続けちゃうから、2人とも「ずっといるんですね!」って驚いてたよ(笑)。
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