クリープハイプ尾崎世界観×JMS鈴木健太郎インタビュー|最後の「REDLINE」への意気込み語る (2/2)

最後にしようと思った理由

──「REDLINE ALL THE FINAL」は12月7、8日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催されます。タイトル通り最後ということですが、なぜ最後にしようと思ったんですか?

鈴木 理由はいろいろありますが、お客さんが求めるものと自分がやりたいことが乖離してきたんですよね。お客さんにアンケートを取ると、8、9割くらいの人は、いわゆる“冬フェス”を望んでいるんですよ。「『RADIO CRAZY』や『COUNTDOWN JAPAN』と肩を並べるような冬フェスにしてほしい」という。実際ライブハウスでやるとなかなかソールドアウトしないんだけど、フェスのような規模感だとチケットが動く。たださっきも言いましたけど、僕はフェスがやりたくて「REDLINE」を立ち上げたわけではなくて。

鈴木健太郎

鈴木健太郎

尾崎 そうですよね。

鈴木 フェスって、どうしても似たようなブッキングになりがちじゃないですか。お客さんのお財布事情も考えながら、「REDLINE」らしいオンリーワンのブッキングをしようと思うと、めちゃくちゃ難しいなと。そういう部分も含めて、需要と供給のバランスが取れないと思い、最後にしようと決めました。

尾崎 それはいつ決めたんですか?

鈴木 2022年にぴあアリーナMMで「REDLINE ALL THE REVENGE」をやったあとですね。

尾崎 ちょうどその頃に、鈴木さんから「2024年12月7日、空けといて」と言われました。

尾崎世界観

尾崎世界観

鈴木 1日目はクリープハイプ、2日目はSiMに出てもらいたかったんですよね。どちらのバンドも初期の頃から出てもらっているから、最後も任せたかった。

尾崎 本当にありがたいです。でも「REDLINE」をやめるとなると、周りから反対もあったんじゃないですか?

鈴木 ありますね。会社から大反対されました。

尾崎 そうですよね。せっかくここまで育ったのに。

鈴木 会社側からしてみれば、年に1回「REDLINE」をやれば、会社の売上的には取れるのもあるので。半年くらい話し合ったんですけど、続けるとしたら、結局、ブッキング含めて自分がやっていくしかないという結論になって。それだと何も変わらないし、やっぱりやめるしかないなと。

尾崎 やっぱり「REDLINE」のブッキングは、鈴木健太郎という人じゃないとできないですからね。

出ていただけるバンドには感謝しかない

──「REDLINE ALL THE FINAL」の出演アーティストも、すごいラインナップですね。

鈴木 出ていただけるバンドに対しては、感謝しかないですね。初めて出てくれるバンドもけっこういるんですよ。サンボマスターもそうだし、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)もそう。スカパラは以前から出たいと思ってくれていたみたいなんですよ。そのことを聞いていたので、「最後なので出てもらえますか?」とお願いしたら、二つ返事で「スケジュール空けます」と言ってくれて。

尾崎 本当にジャンル問わず、いろんなバンドが出ますよね。

尾崎世界観

尾崎世界観

鈴木 だからできれば2日間通しで来てほしい。普段ラウド系に触れている人がギターロックを聴いたり、ギターロックが好きな人にパンク系のライブを体感してもらえたらいいなと。

尾崎 ステージの数は2019年と同じですか?

鈴木 うん。全部で5ステージあって、そのうちの1つは360°のセンターステージ。2019年はKOTORIに立ってもらったんだけど、ライブ中にお客さんがステージに押し寄せて、中断しちゃいました。柵がないから、どこからでもステージに上がれてダイブできるんですよね。あ、もちろん幕張メッセ側に許可はもらってますよ。

──安全に楽しんでほしいですね。オーディエンスを信頼してないとできないことでもあると思うので。

鈴木 幕張メッセは動線を作りやすいし、トイレの数だけしっかり準備しておけばなんとかなると思っています(笑)。アーティストエリアにもかなり力を入れてるんですよ。バンドマンのためのフェスだと思ってるので、とにかく快適に過ごしてほしくて。

尾崎 それもずっと言っていますよね。

鈴木 付き合いのあるバンドも年齢を重ねて、結婚して子供がいるメンバーもけっこういるんですよ。だから今回は出演者、関係者用のキッズスペースを作ろうと思ってます。「家族も連れて行きたいんだけど、子供が小さくて」という話も聞いていたし、メンバーの家族の皆さんには、モニターで観ながらくつろいでもらって。運営は大変ですけどね。バンドの楽屋を作るだけでもスペース的にヤバいのに、出演者向けのキッズスペースを作ろうとしてるんだから。

──尾崎さんは最後の「REDLINE」に向けて、どんな思いがありますか?

尾崎 11月にクリープハイプのKアリーナ横浜公演(「2024年11月16日」)があるので、それを経て、“成長した”ところを見せたいです。あとはとにかく恩返ししたいですね。

左から尾崎世界観、鈴木健太郎。

左から尾崎世界観、鈴木健太郎。

鈴木 Kアリーナでのライブから3週間後くらいだからね。今年クリープハイプは夏フェスのヘッドライナーもやってるから、「REDLINE」の最後を締めてもらうのに最高に仕上がっているタイミングだと思います。

──どのバンドも気合いを入れて臨みそうですよね。鈴木さんにとって、“いいライブ”とはどういうものですか?

鈴木 説明するのは難しいですけど、ライブはやっぱりお客さんと作るものだと思うんですよ。1曲だけでもいいし、部分部分でもいいんですけど、お客さんとアーティストのケミストリーが起きる、カッコいい瞬間を見たい。

尾崎 お客さんがライブに本当に飢えている。そんな感じになるといいですよね。ライブやフェスに行くのって、大変じゃないですか。お金や移動の面、会場での物理的なストレスもある。そこから「それでもこのアーティストを観たい」という欲求につながって、爆発力が生まれると思うので。鈴木さんはお客さんとバンドマン、その両方の気持ちを知っていて、主催者の立場でもあるから、何が大事なのかわかっているんだと思います。クリープハイプのライブも昔から観てもらっているけれど、本当によかったと思ったらよかったと言ってくれるし、特に何も言われないこともある(笑)。

鈴木 そうだね(笑)。

尾崎 ハッキリと評価をしてくれる。長く活動していると、そういう人はほとんどいなくなってしまうので、ありがたい存在です。

──「REDLINE」は今年で一旦終わりですが、今後、何か考えていることはありますか?

鈴木 やっぱりゼロからイチを作りたいし、もう1回ライブハウスに戻ろうかなと。「REDLINE」というタイトルは使いませんが、クリープハイプやSiMと出会ったときのように、また新しいバンドに出会いたいと思ってます。

左から尾崎世界観、鈴木健太郎。

左から尾崎世界観、鈴木健太郎。

イベント情報

REDLINE ALL THE FINAL

2024年12月7日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30 / CLOSE 22:00(予定)

出演者

ACIDMAN / Awich / AgeFactory / ALI / ASP / bacho / FAT PROP / FOMARE / go!go!vanillas / SATOH / HERO COMPLEX / KOTORI / MONGOL800 / MY FIRST STORY / PEDRO / RIZE / SIX LOUNGE / THE FOREVER YOUNG / TETORA / tricot / w.o.d. / 04 Limited Sazabys / クリープハイプ / サンボマスター / ハルカミライ / 東京スカパラダイスオーケストラ / 優里 / WurtS


2024年12月8日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30 / CLOSE 22:00(予定)

出演者

AFJB / BLUE ENCOUNT / coldrain / Crossfaith / Crystal Lake / CVLTE / Dragon Ash / dustbox / EGG BRAIN / ENTH / Fear, and Loathing in LasVegas / FOR A REASON / HEY-SMITH / MAN WITH A MISSION / MONOEYES / MY FIRST STORY / NOISEMAKER / Northern19 / Paledusk / ROTTENGRAFFTY / SHADOWS / SHANK / SiM / The BONEZ / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / TOTALFAT / マキシマム ザ ホルモン / FACT

公式サイト


チケット購入はこちら

チケットぴあ

ローチケ

イープラス

プロフィール

尾崎世界観(オザキセカイカン)

4人組ロックバンド・クリープハイプのボーカルギター担当。2001年にクリープハイプを結成し、2009年に現メンバーで活動を始める。2012年4月にアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」でメジャーデビュー。コンスタントにリリースを重ねていき、2024年12月4日には、7枚目のアルバム「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」をリリースする。また作家としても活躍し、半自伝的小説「祐介」やエッセイ「苦汁100%」「苦汁200%」「泣きたくなるほど嬉しい日々に」を刊行。2020年12月刊行の小説「母影」は「第164回芥川賞」候補作品に、2024年7月刊行の小説「転の声」は「第171回芥川賞」候補作品に選出された。

鈴木健太郎(スズキケンタロウ)

2004年に株式会社ジャパン・ミュージック・システムに入社。2010年にライブイベント企画「REDLINE」を立ち上げる。その後マネジメント業務にも携わり、アパレルブランドや飲食店の運営も行っている。2015年に渡辺旭と共に音楽レーベルsmall indies tableを立ち上げた。

記事初出時よりリードと本文を一部変更しました。

2024年11月8日更新