ナタリー PowerPush - RAM RIDER
アルバム「AUDIO GALAXY」2枚同時リリースで本格再始動
空白期間に作ったラジオという場所
──リリースが途切れた空白期間に「この先どうなるんだろう」という焦りはありませんでしたか?
いや、プロデュースやリミックスの仕事はたくさんやってたから、焦りはなかったかな。リリースがなくても音楽を続けていけるっていう自信だけはあったので。
──でもそれだけじゃダメだと考えたから、今回のソロ再始動があるわけですよね。
そう。やっぱり考えてたんですよ。次の活動の柱になる何かをやらなきゃいけないって。それがちょうど2年前、2010年の4月なんですけど、そこで僕は「オーディオギャラクシー」っていうネットラジオを始めるんです。で、番組を核として、同じコンセプトのイベントをスタートさせて、そこでRAM RIDERのライブをやる。それが最終的に「AUDIO GALAXY」っていうタイトルのアルバムになるっていう構想を考えて。
──最初からそこまで見据えての活動だったと。
だから番組の中で自分の曲をいっぱいかけて、とにかく自分の曲を浸透させようと思ってた。ネットラジオはこれからもっと重要なものになるだろうと思ってたし。
──RAMさんは元々ラジオ好きですしね。
規模はともかく、活動のベースになる場がインターネット上に必要だなって思って、それはホームページとブログじゃないだろうっていうのをすごく感じてたから。単なるアーティストとファンじゃなくて、ラジオ番組とリスナーっていうほうが広がりがあるし。
──単なるファンとの交流の場ではなく。
うん。RAM RIDERのファンって、古くから見守ってくれてる人が多くて、当時僕はなんだか心配されてるような感じだったから(笑)。優しいファンが多い分、ちょっと湿っぽい。それはファンの人たちもよくわかってるし、僕もわかってて。だからそうじゃなくて、もっと楽しいものを始めたいなって思ったんです。
──ラジオが今回のアルバム制作に与えた影響も大きいですか?
そうですね。3年とか4年とか発表の場がないまま曲を作り続けるっていうのはやっぱり結構つらいものがあって。人に聴いてもらえる場所があるっていうのは大きかったです。
1人になったことで得た自由
──ネットラジオは一般人の友達と始めたんですよね。事務所やレコード会社は関係なく、完全に1人で?
2010年から1人で活動を仕切り直して、それですぐラジオを始めて。そのままずっと動き続けてやっとアルバム完成まで来たっていう。
──フリーになったことは創作活動に影響を与えました?
それはもうものすごく。全部1人でやらないといけないから大変なことのほうが多かったけど自分で始めようと思ったことや興味をもった仕事がなんでもすぐやれるというのが当時の僕には合ってたみたいで。ただそこで初めて、いろいろな面で守られていたんだなということに気付かされたり。
──バカリズムのコントライブの音楽を作り始めたのもこの頃からですね。
バカリズムの升野さんとはTwitter上で出会ったんだけど、升野さんは元々僕の曲を聴いてくれてて、僕もバカリズム好きだったから、すぐに意気投合して「じゃあ僕が音楽やります」みたいな感じで作らせてもらいました。今までだったら実現するまでにいろいろ手続きが必要だったりしてすんなり引き受けられたかどうかわからないし、これは自分で動けたからこそやれた仕事ですね。
新しさで勝負しないポップス
──RAMさんがアルバムを出さなかった7年の間に、クラブやダンスミュージックのシーンでは新しい音楽が次々と生まれましたよね。ボーカロイドのフィールドで活動する人や、若いトラックメーカーもたくさん出てきました。
でも相変わらずみんなあんまり歌わないから、自分で。だから全然大丈夫だって思ってた。
──音楽的な流行が移り変わる中で、自分の音楽が古くなってしまうという危機感はなかった?
うん。僕は新しさで勝負してないから。新しさを追って作った音楽はすごく刺激的で面白いから大好きだけど、出た瞬間から古くなっていくでしょ? 特にダンスミュージックの現場では流行りの音色を使った、すごく新しい音楽が次々と生まれてて、そういう音楽は爆発力がある分、どれもすごい早さで古くなっていく。でも僕がやってるのはそういうものじゃないし、そこを目指す気は元々なかった。例えば岡村靖幸さんの「だいすき」って曲を今聴いて、アレンジが古いとか曲が古いって思う人はいないわけで。僕は自分の音楽をクラブミュージックだとは思ってなくて、ポップスだと思って作ってるから。
──デビューのときにRAMさんが示した「PORTABLE DISCO」というコンセプトが、今もぶれていないということですね。
そうですね。僕が考えてた「PORTABLE DISCO」っていうのは、平日でも日曜の昼間でも聴ける、踊れる音楽。週末の夜とかタバコとかお酒とか、そういうイメージとは切り離したものを作りたかった。それはそういうものが好きじゃないからではなく、それをできる人が周りにいっぱいいるから僕は違うことをやろうって。そこは全然変わってないですね。
──なるほど。
「PORTABLE DISCO」を更新できるのは自分の次の作品しかないって思ってたし、その間に作り続けてた自分の曲のクオリティには自信があったから。その間にも新しい音楽をたくさん聴いたけど、自分の曲が負けてるとは全然思わなかった。好きな音楽もたくさんあったけど、自分が出そうとしてるものとは全然違うから「やられた」っていうのもあんまりなくて。だから焦らなかった。自分の曲が古くなるんじゃないかっていう怖さは全然なかったですね。
CD収録曲
- HELLO starring ORANGE RANGE
- VOICE -とおくのきみへ- starring 南波志帆
- 非実在ボーイ starring MEG
- ファストラブ starring Bose(スチャダラパー)
- Memory starring フルカワミキ
- ベッドルームディスコ starring 桃井はるこ
- Sun Will Shine starring NAO☆(Addy)
- RAINBOW -なみだのあとで- starring 中川翔子
- 放課後★サスペンス starring バカリズム&藤岡みなみ(PANDA 1/2)
- ユメデアエルヨ starring 野宮真貴
CD収録曲
- chapter#1 "launching"
- GALAXY
- No Continue
- GOOD BYE
- chapter#2 "Beautiful Planet"
- 非実在ガール
- アイデンティティ
- DREAM
- chapter#3 "Sweet Star"
- 催眠
- Memory
- マグネット
- END OF THE PARTY
- chapter#4 "ReturnToTheEarth"
- 君をピンチから救えなかった際の歌(ボーナストラック)
※ローソン・HMV限定販売
RAM RIDER(らむらいだー)
1人で作詞作曲、トラックメイキング、歌唱を手がける男性ソロアーティスト。2003年から本格的な活動を開始。2004年3月に1stシングル「MUSIC」をインディーズでリリースし、2005年6月に「ユメデアエルヨ」でメジャーデビュー。同年11月に発表した1stアルバム「PORTABLE DISCO」がスマッシュヒットを記録し、大型フェスなどにも多数出演する。その後はDJとして人気を集める一方、プロデューサーやリミキサー、作曲家として活躍し、2010年4月からは映像同期型ネットラジオ「オーディオギャラクシー」を開始。同コンセプトのパーティを主宰し、ライブ活動も積極的に行う。2012年4月に約7年ぶりのオリジナルアルバム「AUDIO GALAXY -RAM RIDER vs STARS!!!-」「AUDIO GALAXY -RAM RIDER STRIKES BACK!!!-」を2枚同時リリース。