霜降り明星が大会史上最年少で優勝し、第14代王者となった「M-1グランプリ2018」から1年。今年の「M-1グランプリ2019」は過去最高のエントリー数・5040組の中から、からし蓮根、ミルクボーイ、ぺこぱ、オズワルド、すゑひろがりず、ニューヨーク、インディアンス、見取り図、かまいたちの9組がファイナリストに選出された。12月22日(日)にABCテレビ・テレビ朝日系で生放送される決勝で、彼らに敗者復活1組を加えた10組が頂点を目指す。
お笑いナタリーは前回大会に続き、今年の「M-1」で優勝、2位、3位となるコンビの三連単予想をお笑い好きとして知られる著名人5名に依頼した。そのメンバーはDJ KOO、IMALU、川谷絵音、井口綾子、RAM RIDER。とりわけDJ KOOは霜降り明星の優勝を含め「M-1グランプリ2018」の三連単予想を完全的中させたことも話題となった。決勝で爪あとを残しそうなコンビや敗者復活を勝ち上がりそうなコンビについても併せて尋ねたので、彼らの「M-1」に対する思いを読んで12月22日を楽しみに待とう。
取材・構成 / 成田邦洋
DJ KOOの予想
オーディエンスを巻き込み大きなインパクトを持って優勝すると思います!!
本命:インディアンス
とにかく勢いがあって楽しい! 笑わせようとする気合いが凄く伝わって来ます。笑いの多さと田渕さんの変幻自在なボケ&ギャグの連続攻撃はまさにイリュージョン!! さらにきむさんの軸のぶれないツッコミはテンポ良さ、笑いの加速を増していく!! 序盤から笑いのピークを幾つも作り常にテンション高くもっていく構成は決勝でもオーディエンスを巻き込み大きなインパクトを持って優勝すると思います!! 今大会それぞれが個性ある笑いを持った強豪揃いの決勝戦、本当に迷いましたが、その中でも笑いの数、大きさでインディアンス!!
対抗:かまいたち
ネタの安定感、一旦つかみ出したら止まらないかまいたちゾーン! 本番での勝負強さと数々のメディア露出での経験値は決勝でも必ずその実力パワーを発揮しM-1をかき回してくれると思います!! 緩急と予想外の展開で会場は爆笑の連発、間違いなく優勝戦線に絡んでくる!!
穴:オズワルド
ボクがこんな言い方をするのはアレですが、内容がとてもよくできていて無駄がない!! 笑い所が明確なので確実にオーディエンスをつかんで笑いを積み上げてくる。互いのキャラは飄々としてフラットだけど逆にその口調から発するマイペースで絶妙なボケとツッコミバランスがたまらない! 刺さりだすとヤバい! 何より強引ではなくオーディエンスと共有していく空間が心地よい!!
爪あと残しそう:すゑひろがりず
音(口調)×ギャグで笑わせられるインパクトは強い!! 和と英を巧みに使いこなし、ギャップを笑いに変えていく展開に期待!! 無二のスタイルとクセの強さは今大会でも爪あとを残す!!
敗者復活:和牛
ここでプラン修正してきた和牛最強では!! 正直敗者復活から優勝に勝ち上がるドラマチックな令和牛を見てみたい!!
- DJ KOO(ディージェーコー)
- TRFのリーダー、DJ、日本屈指の盛り上げ番長。トータルCDセールスは2100万枚を超え、多くの人に今なお愛され続けている。現在はTRFの活動と共に「日本を元気に!笑顔に!」をモットーに、盆踊りとDJを融合させた“進化型お祭りエンタテインメント”で話題を集めている。日本伝統芸能の世界発信を目指すお祭りエンタメユニット・UKOON(ウコーン)を結成し、精力的に活動中。
IMALUの予想
田渕さんのおじさんキャラは何度見ても楽しい
インディアンスのネタは自然と場が笑いに包まれます! 田渕さんのおじさんキャラは何度見ても楽しいです! 今、勢いのある芸人さんだと勝手に思っているので、M-1を絶対盛り上げてくださると期待しております!!!
ミルクボーイは準決勝のネタで1つのテーマであれだけ面白くされてるのがすごいなと思いました! 話せば話すほど笑いが増えていく感じを決勝でも期待したいです!
かまいたちが面白いのはもう日本国民みんなが知ってるかと思います!笑 本番はどんなネタなのか、今から本当に楽しみです!
ぺこぱは松陰寺さんの変わったツッコミが中毒性あります! インパクト大ですが、少し時間が経つと、またおかわりしたくなる。そんなイメージがあります。笑 これからもっともっとテレビでも観たい芸人さんです。
そのほか、ラランドの決勝のネタが見たかったです。本当に面白いですし、同じ女性としても女性芸人さんに出場してほしかったですね!
敗者復活の予想はアインシュタインです。ネタが面白いのはもちろん、今人気のある芸人さんでもありますし、決勝の舞台で稲田さんのボケを見られなかったらなんだか寂しいです!笑
- IMALU(イマル)
- 語学を学ぶためにカナダの高校へ留学し、帰国後はファッション誌でモデルデビュー。現在は、タレントとして幅広く活躍中。
川谷絵音の予想
ニューヨーク特有の毒と皮肉は視聴者みんなが心に飼っている裏側
ニューヨークはずっと好きなので希望も込みで優勝予想にしました。ニューヨーク特有の毒と皮肉は視聴者みんなが心に飼っている裏側だと思うので、ハマれば大ウケしそう。誰も傷つけない笑いも良いですがこういうコンビが優勝する未来も見てみたいです。2人の底意地の悪さにクスッとしてしまうのは僕だけではないはず。
2位は安定のかまいたち。完全な優勝候補で無敵のコンビなのですが、逆に安定しすぎているので2位にしました。ネタのクオリティも山内さんの表情も濱家さんのツッコミも完璧です。他の若手の勢いが勝つか安定感が勝つか、のような気がします。
ミルクボーイは1つのモノを思い出すという新たな形のネタの斬新さがウケるかウケないか、会場の空気に左右される気がします。でも実際めちゃくちゃ面白いので会場にハマってほしい。商品名を出して半分ディスるネタでもあるのでそういう危険性は孕んでますが。笑
爪痕を残しそうなのはぺこぱだと思っていて、今の社会の雰囲気に合った誰も傷つけないネタであり、松陰寺太勇さんのキャラはテレビウケもバッチリ。M-1後にテレビ露出ももっと増えそう。
あと敗者復活戦は波乱の予感で、まったく予想できないんですが和牛が底力を見せるんじゃないかと。敗者復活からの和牛の優勝は実際一番見たいですけどね。
- 川谷絵音(カワタニエノン)
- indigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoroのボーカルおよびギターとして活動中。小籔千豊や野性爆弾くっきー!が参加するバンド・ジェニーハイのプロデューサー兼ギターでもある。
井口綾子の予想
令和初のM-1は今までに増して新たな風が吹きそうな予感
わたしが予想するなんておこがましいのですが、お笑いファンの一意見として予想させていただきたいと思います。
かまいたちはラストイヤーでキングオブコントの王者でもあり、コントはもちろんのこと漫才も起承転結がしっかりと付けられていてネタの終わり方も突然終わって「えっこれで終わり!?」と見ている人に思わせず、自然に落としていくのもすごいなあと思いますし、観客の人たちに話しかけるような、見ている人を巻き込んで自分たちのアットホームな空気を作る魅力もあるなと思ったので、キングオブコントとM-1の初の二冠をとるのではないかと直前まで悩んだのですが、テレビにももうすでに沢山出ているし、実力が認められているベテランすぎて見ている方のハードルが無意識のうちに上がっている可能性もあるなと思いました。
その点インディアンスはお笑いファンの知名度は確実に100%ですし、田渕さんは芸人さんが尊敬する芸人さんというトーク場面でよく耳にするほどの実力の持ち主ですが、世間的にはまだかまいたちほどの知名度はいい意味でなく、新鮮さもあって、田渕さんの持ち前の明るさとコミカルな動き、コロコロ移り変わる表情全てに引っ張られてこっちまで笑顔にさせられるし、つっこむ暇がないくらい間髪入れずにボケ続ける田渕さんに引っ張られて思わず笑ってしまったり、元気をもらえるので、令和最初の優勝者にふさわしいのではないかと思い、優勝予想させていただきました。
からし蓮根はもともと面白いとは思っていましたが、準決勝でネタを初めて生で見て想像を超える面白さに衝撃を受けました。舞台を広く存分に使っていたり、予想外のボケを繰り広げたり、明るいながらもシュールなネタにすっかり引き込まれてしまったことが強く印象に残っています。今回のファイナリストの中で最年少のフレッシュさで初出場のM-1決勝の場で大きな爪あとを残しそうだなと思ったので、3位に予想させていただきました。
爪あとを残しそうな芸人さんは、許されるのであれば全員と言いたいほどみなさんほんっっとに面白かったのですが、今回はミルクボーイと予想させていただきました。ずっと平和なへりくつを言っているようなネタは、サンドウィッチマンの“カロリー0理論”のような雰囲気を感じ、見ていて真似したくなりますし、癖になってもっと聞いてみたいと思わされ、トーク番組でも活躍しそうな雰囲気を感じました。
準決勝を会場で見せていただいたのですが、今回もすごくレベルの高い戦いで決勝進出者を決めるのもすごく大変だったんじゃないかなと思います。知名度が高かったり人気のあるコンビが決勝に進めなかったことで、疑問に思う方もいるかもしれませんが、やはり今回決勝進出したコンビは会場の笑い声も大きかったし、見ていてすごく面白くて結果発表されたときは正直私も少し驚きましたが、なるほど、たしかにめちゃくちゃ面白かったもんなあと納得できる結果でした。それだけに、本当に知名度、芸歴、人気度など一切関係のない実力主義のこのM-1のガチさを改めて痛感し、さらにM-1グランプリという大会に対する私の想いも強まりました。
9組中7組が決勝初出場ということで令和初のM-1は今までに増して新たな風が吹きそうな予感がします。しかし、今回は敗者復活でもう一度M-1ができそうなくらいの精鋭が待ち構えているので、以前のサンドウィッチマンやトレンディエンジェルのように敗者復活からの優勝もかなりの高確率でありえそうだなと思うだけに予想するのがとても困難でした。頭を抱えながら考えに考えて予想させていただきました。
すゑひろがりずはテツandトモ以来の楽器持ち込み漫才で、服装や口調もキャラが確立されていて確実に見ている人の記憶に残る印象的な2人。中高生や大学生やこれからの忘年会シーズンで真似したくなるような存在でした。
個人的にニューヨークの決勝進出が決まったときはすごくうれしかったです。ニューヨークの単独ライブにも行くくらい大好きで、2人の仲良し感が伝わってくるほのぼのさがある中で屋敷さんが嶋佐さんの小ボケも全部拾って適切ながらも辛辣な良い意味で性格の悪いッコミがじわじわきて、途中から惹きつけられて離れられなくなってもっと見たいもっと見たいと癖になり、YouTubeで公開されているネタはほとんど見ました。毎回いろんな面白さがあってマンネリにならないし、若者が共感できるようなネタがたくさんあるんです。ただ、ブラックな面白さがあるため年配の方などにはもしかしたらハマらない方もいるかもしれません……。でも、これをきっかけにニューヨークの面白さをもっともっと多くの方に知ってもらえたらうれしいです。
ぺこぱはとにかく優しいポジティブシンキングでツッコミがあるようでないような、ボケと大ボケといいますか……。また、M-1決勝は笑神籤で行われる順番決めもかなり結果に影響してくるので、そこも注目です。
そして、今回は敗者復活もかなり大きな注目ポイントの1つです。ここ数年毎年決勝進出し、優勝争いをしている和牛をはじめ、ミキ、東京ホテイソン、トム・ブラウン、カミナリ、アインシュタインなど、もうかなりの知名度と人気、実力のある芸人さんたちが控えているのもしびれます。個人的には、敗者復活戦から和牛が復活してそのまま優勝する姿もかなり鮮明に見えます。他の敗者復活組の芸人さんもですが、特に和牛は決勝戦に進めなかった分、敗者復活戦に向けて今まで以上にネタを考え込んでもともと完成度が高いのにさらに完成度をググッと上げてきそうな予感がします。逆にここでストレートに決勝戦に進めなかったことで和牛にさらなる闘志を燃やさせてしまうのではないでしょうか。
12月22日が今からとっても楽しみでそわそわします!!
- 井口綾子(イノクチアヤコ)
- フリーアナウンサーとして、バラエティ番組、グラビア、ラジオなどで幅広く活躍中。「ビジネスクリック」(TBS)、「リーガダイジェスト!」(WOWOW)、「F.L.A.G.」(FMヨコハマ)、「アッパレ!ラジオトーカーやってまーす」(MBSラジオ)などにレギュラー出演している。
RAM RIDERの予想
逆ハンデを考慮しても圧倒的なんじゃないかな
優勝:かまいたち
すでに売れていて、テレビでのネタの認知度も高いというのは意外とM-1では不利に働く要素だと思いますが、そういった逆ハンデを考慮しても圧倒的なんじゃないかなというのが正直な感想です。ほかの順位、項目はかなり迷いましたが1位だけはすぐに決まりました。この予想が外れたとしても最終決戦に残らないということはまずなさそう。
2位:インディアンス
インディアンスのお二人はとにかく漫才を楽しんでいるのが伝わってくるのと、ミスをしたときのアドリブ(それ自体が筋書き通りなのかもしれませんが)も活き活きとしていてドライブ感があります。うまく言葉にできませんがこのタイミングでアンタッチャブルが漫才再始動したのも何か運命めいたものを感じました。
3位:オズワルド
個人的にすごく応援してるのですが、たいてい僕が優勝しないかなと思っている芸人さんは優勝を逃すので控えめ予想です。最後の3組には残ってほしいです。伊藤さんの決して高くないテンションと優しい感じが好きです。
爪あと残しそう:すゑひろがりず
漫才の大舞台で伝統芸能を観るというシチュエーション自体にインパクトがありそうだな、と思い予想してみました。お二人とも声がよくてテンポもゆったりしているので大爆発もありそう。かけあわせるネタがCMとかジブリとか認知度が高くて観る人を選ばないのも強そうだなと感じました。
敗者復活:ダイタク
敗者復活を予想するのは大変心苦しいですが、去年の単独ライブの漫才が面白かったので一票入れさせていただきます。
正直もうM-1は僕の中では「その年の最高峰の漫才が楽しめるお祭り」になっていて、どのコンビが優勝するか自体はそこまで重要じゃないのかなという気持ちになってます。それでも予想自体はすごく楽しいですね。個人的ににはオズワルドの漫才が2本観られたらうれしいです。今年は1回戦もある会場で観戦したので、あの会場から皆さん勝ち上がってこられたのだなあと思うと思わず背筋が伸びてしまいます。
また社会の価値観が大きく変化している現在においては過去の大会に比べてネタ選びや題材に苦慮しそうですね。技術論やフォーマットについては専門ではないのでわかりませんが(そもそもお笑い好きの素人ですし)、例えば性的なものに限らず男女を扱ったもの、外国人を引き合いに出すのであればその描き方など、芸人さんはものすごく悩みながらネタをつくっているのではないかと勝手に想像しています。
当日は敗者復活にも注目しつつ、生放送を楽しみたいと思います。
- RAM RIDER(ラムライダー)
- DJ、プロデューサー。2019年12月に自身のレーベル「401(よんまるいち)」を設立、6年ぶりのシングルとして「東京論」をリリース。バカリズムライブの音楽を長年手掛けるなどお笑いとの接地面も広い。