ナタリー Power Push [POLYSICS]

「We ate the machine」完成記念! ハヤシが振り返るPOLYSICSの10年史

ヤノ加入~海外進出

ヤノは顔がディーヴォのドラマーのアランに似てたんです

イシマル君はずっとポリでやりたいって言ってたんだけど。状況も悪くなってきて。やっぱりずっとポリやるのは厳しいな、ってムードもあって。イシマル君はフミとの相性も良かったし、演奏面でもすごい良かったから。叩いてほしかったけど。このままじゃダメだと思ってドラマーをちゃんと探そうと。それでヤノに出会うんですね。最初(のオーディション)は5曲ぐらいでハァハァいっちゃってて。「限界です」とか言うの。「何だコイツ?」って思って。ナシナシ、って思ってたんですけど、なんか。顔がディーヴォのドラマーのアランに似てたんですよね(笑)。そんでもう一回会ったんだけどやっぱりダメで。でもほかの候補はけっこう自分のプレイが固まってて。「これはできないな」「こういうドラムは自分の中にはないな」って言うんですよ。ちょっと待ってよ、巧いけどそれじゃダメだよなと思って。POLYSICSはドラムが本来ある8ビートを解体してナンボだろうって。俺がいまやりたいことはそれだし。俺のやりたいアレンジができないんだったら、違うなって。だったら、もう一回、あのコと(スタジオに)入ってみようと思って。で、その前にライブを見に来てもらったら何か感じたらしくて、ぜんぜんドラムが変わってたんですよ。ハードになってて。まだまだだったけど、でもいけるんじゃね?って。ほかのメンバーには「ええー?」とか言われたけど。なんでも吸収してほしかったんですよ。形ができてないドラマーがほしかったんです。

イギリスツアーが盛り上がって「なんかいいぞ?」と思った

もう一回、なんかね。一からやり直したかったんです。それでダメだったらダメで。ほんとに(バンドは)終わりだと思ってました。で、ベスト出したときにちょうどQueで7daysがあって。その最終日にヤノがデビュー。すぐイギリスツアーに行くんですよ。ヤノがどうなのか俺もわからなかったし、イギリスでどうやってPOLYSICSが受け入れられるのかって不安もあったし。でもそれが自分の中で転機だった。ヤノってツアー自体が初めてだったし、海外も初めてだった。何も知らないしできない。それ、ぜんぶ俺の責任でしょ。俺がちゃんとしなきゃだめだなって。リーダーとして彼を育てなきゃいけない。今までのハヤシヒロユキは捨てようって思って。メンバーとして彼を入れたいって言った以上、ちゃんと彼の面倒見なきゃいけないって思いました。そこで、異様に話すようになりましたね。ヤノだけじゃなくメンバー同士で。今までメンバー間で踏み込めない部分があって、それでうまくいかなかったんだから。そういうのはもう絶対やめようと。そうやってバンドがうまくいかなくなるのはゴメンだって。

それでイギリスツアーが始まるんですけど、ロンドンで2回目にやったライブで、お客さんがすごい来てくれて。なんかPOLYSICSってバンドが面白いらしいぞみたいな噂があったのか。で、すぐまた7月にもう一度イギリスツアー行ったら、なんかもう待っててくれた感がすごいあってね。リリースもしてないのに。みんな歌ったりとか、えらい食いつきがいいんですよ。みんな目が爛々としてて。なんかこの感じ、なんかいいぞ?と思って。そこでなんか、バンド内が固まってきたというか、リーダーとしての自覚っていうものがいままで以上に出て。やっぱライブをやると待ってくれてる人たちがいて、すっごい盛り上がってるのを見て。いいじゃんこれで、って。自分のやってることってやっぱイケてるよね?みたいな(笑)。ここにわかってくれる人たちがいた、みたいな。そういう気がしちゃったんですよね。だったらもっとこの場を楽しませるような、今来てる人たちをもっと喜ばせるライブをしてやろうって思ったんですよ。そこでMCも変わってきたし、面白い曲もいっぱい作りたくなってきた。

お客さんに心から「ありがとう」って言えるようになった

で、そのツアーが終わって日本に帰ってきてライブをやるんですよ。そん時に明らかに自分のマインドが変わってて。ちゃんとお客さんのほうを向いてライブやってることに気づいたんですよね。この場に来てる人たちをもっと楽しませてやろうと。自分のなかではなにか変わったような気がして。お客さんはそんなに増えてないんだけど、なんかいけるんじゃないかな?みたいな。希望の光みたいなものがちょっと見え始めたんですよね。ちゃんと見に来てくれるお客さんがいるってことがわかってきて、心から「ありがとう」って言えるようになった。それまでは、形だけ「ありがとう」って言ってたから。イギリスとかでライブするようになって、自分たちの演奏を初めて見る人たちばっかなのに言葉じゃない部分で通じ合える感覚があって。音とか、自分たちの吐き出してる空気みたいなのを汲んでくれて、興奮してるお客さんのことを、ほんとに「ありがとう」って思えるようになったんですよ。こんなに盛り上がってくれてほんとにうれしい、って。それ英語で言えたんですよ。それで日本でライブやって。あ、ほんと来てくれてありがとうって思えるようになったっていう。POLYSICSのライブ見てくれてありがとうって。そう思ってから、まだ状況変わってないけど、このままちゃんとやれば、何か変わってくるんじゃねえのかなっていう、自信みたいなものは見えてきたんですよね。

それで、どんどんライブやってくんですよね。とにかく、昨日の「カジャカジャグー」より今日の「カジャカジャグー」をもっとよくしようって作業をずっとやってて。で、カイザー・チーフスが、やっぱ大きかったかな。POLYSICSがBBCのスタジオでやってたライブを見てたらしくて。で、昨日のテレビ見た?POLYSICSってバンド見た?って言ってたみたいで。「こういうエキサイティングな演奏やってるヤツがいるんだ、POLYSICSみたいな曲作ろうぜ」って、カイザー・チーフスが曲作ったっていうのを聞いて。なんか、あれ?いいじゃん、やっぱり。みたいな風になって。ちょっとだけ、また自信みたいなのがついてきたんです。

POLYSICSニューアルバム「We ate the machine」

ジャケット写真
amazon.co.jpへ

初回生産限定盤 [CD+DVD]
2008年4月23日発売 / 3360円(税込)
KSCL 1240~1241 / Ki/oon Records

通常盤 [CD]
2008年4月23日発売 / 3059円(税込)
KSCL 1242 / Ki/oon Records

CD収録曲
  1. Moog is Love
  2. Pretty Good
  3. Rocket
  4. 機械食べちゃいました
  5. DNA Junction
  6. Kagayake
  7. ポニーとライオン
  8. ありがとう
  9. イロトカゲ
  10. Mind Your Head
  11. Digital Coffee
  12. Boys & Girls
  13. Blue Noise
  14. Dry or Wet
DVD収録内容(初回盤のみ)

POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2008!!!! ~KARATE HOUSE!!!!~FINAL JUNE.2 日比谷野外大音楽堂

  1. ワトソン
  2. PLUS CHICKER
  3. サイボーグ彼女
  4. Tei! Tei! Tei!
  5. ハードロックサンダー
  6. AT-AT
  7. COMMODOLL
  8. PEACH PIE ON THE BEACH
  9. BUGGIE TECHINICA
プロフィール

POLYSICS(ポリシックス)

2007年で結成10周年を迎えた、日本が世界に誇るニューウェイブロックバンド。そのユニークなキャラクターと、ニューウェイブの神髄を自身のスタイルに昇華させたサウンドは海外からも熱烈な支持を受け、過去にも数回にわたるツアーを大成功させている。ボーカル・ギターのハヤシは飛び道具的魅力を持ったDJとしても引っ張りだこ。