「Rocket」~「Pretty Good」~「We ate the machine」
変拍子の曲で客がみんな棒立ち。「おかしいな」と思って
そこでちょっと、どうしようって悩むんですよね。ライブやって「プロテニス」とか変拍子の嵐でめまぐるしく変わるんだけど、めまぐるしく変わって拍子とか拍がとれない分、ポゴれよ!って思うんですよ。暴れられるだろ!って思うんだけど、みんな、超棒立ちなんですよ。あれ?って思って。「KARATE HOUSE」はそんな曲ばっかだから、レコ発ライブとか、みんなポカーンだったんですよね。で、「あれ、おかしーな」って思って。踊りづらいのかなと思って。じゃあそんな曲いっぱい作ってやるよ、って、またふて腐れて曲作り始めちゃうんですよ。そのときは「We ate the machine」のコンセプトはなくてただ闇雲に作り続けてたんですけど。そういう、怒ってるみたいな、ブラック・フラッグみたいな。凶暴じゃないですけど。ほんとワンコード、ワンアイディア、2分、1分半!みたいなの曲ばかり作ったりするんですよね。それが「ポニーとライオン」とか「ありがとう」とか。でもあまり前向きな姿勢で曲を作ってないのは確かで。これをPOLYSICSの新作として出すのには、まだまだだろうっていうのがあって。
で、「Rocket」ができるんですよ。これはフミがちょっと前に作った「ズボン」って曲の歌メロだけ引っ張ってきて、僕がまたプログラミングして曲作り直したんですよ。解体、再構築して。そしたら見事にはまって。で、結果シングルにもなって、ライブでやっても盛り上がる曲になったんですよね。
売れる売れないとか、そういうのぜんぜん関係ねえよって思えた
でもこれでいいのかって疑問もあったりして。どういうものを作ればいいのかわからなくなったときに、去年の夏フェスで、他のバンドのライブをたくさん見たのが自分にとって大きい変化。どのバンドもすごい良くてね。各々、いろいろ悩んでることはあると思うけど、ちゃんと自分たちのやりたいことをやってんだなぁって思って。そう思ったとき、じゃあ今の自分はどうだって思ったら、お客さんに対して「こうやりゃいいんだろ」っていう風にしか曲作ってなかった。それじゃぜんぜんダメ。POLYSICSにしか作れない音楽を作って、それを自分たちが楽しめれば、そしてそれをファンに向けてちゃんと届ければそれでいいじゃん、って気づいた。売れる売れないとか、そういうのぜんぜん関係ねえよって思って。
そう思ってフミと曲作りを始めて、できたのが「Pretty Good」だったんです。これは大きかったですね。ほんとに新人バンドのデビューシングルのような新鮮な衝動に満ちあふれてて。俺もフミも、やっぱ初期の頃が好きなんですよ、どのバンドでも。例えばディーヴォでもビートルズでも。勢いがあって、制御されてない感じ。あと、やんちゃな感じとか、はっちゃけてる感じとか。歌い方も洗練されてない感じもあったりとか。要は、若気の至り感もふくめて、1st、2ndが持ってる感じが好きだったりするんですけど、そういうのを作りたいと思って、この曲で出せた。
昔だったらピアノって恥ずかしくて入れたくなかったけど。こんなのロックンロール過ぎるじゃん、みたいな。でも今は、弾いてるほうもアガるし、聴いてるほうもアガるアレンジって言ったら、ピアノでダダダダダン、って8ビート刻むことだろうって思って。うん、だから余計な、変な頭でっかちのニューウェイヴ感みたいなものもぜんぶ抜けてましたね。
フミとの作業はすごい刺激的でね。オレがポンと出したアイディアをポップなものにまとめる作業がうまい。たとえばメロひとつにしても、今まで曖昧に済ませてたところもちゃんとキーボードでメロを追っかけて、ここはこうで、こういうメロが鳴る、みたいな作業をちゃんとやって。歌詞ひとつにしても、伝わる言葉、伝わらない言葉があるんですよね。英語日本語関係なく。たとえば「Rocket」も、海外でやるとみんな普通に「うかぶーぎもんぎもん」って、サビをみんな歌うんですよ。だったら伝わる言葉で面白い歌詞を書く方がいい。意味ないのは変わんないんだけど。意味がないなりに伝わる言葉で意味ない言葉を書いて、それで歌詞の面白い部分が伝わればいいんじゃねえかって。今まで適当に書いてたものも、ちゃんと見直して書くようになりましたね。
「We ate the machine」は一見ポップだけど、実は相当狂ってる
「Pretty Good」でアルバムの方向性が決まって。あとはフェスとかで後ろで見てる人まで振り向かせるような楽曲、大バコ映えするような曲が欲しくて「Moog is Love」を作ったりして「We ate the machine」が完成しました。
今回のアルバムは、自分としては「KARATE HOUSE」以上に、感覚ずらせるんじゃないかって思うんです。今回「ポップですね」とか、「シンプルでストレートなサウンドになってますね」とか言われるんですよ、たまに。これはバッチリ、と思うんですよね。「今、なんていいました?」って感じで。これのどこがポップ?って思うんですよ。こんなに狂ってるアルバムってないでしょ。でも、それが、シンプルとかストレートなサウンドで、とか言われる。まさに自分の意図通り。よっしゃ、この人ズレてる!って(笑)。一見ポップでストレートだから受け入れられやすいんだけど、実は相当狂ってる。だからこれを発表してどうなるのか、すごい楽しみ。みんなの感覚がズレてくれることを願いますね。
あと初回特典の日比谷野音のライブDVDもいいですよ。夏の興奮が甦りますね。ふたつ見どころがあって、僕の袖がずっと折れたままなんですよ(笑)。超直したいんですよ、それ。しかも本編終わってアンコール戻ってきてもまだそのまんまなんですよ。誰か言ってよって思うんですけど(笑)。あと、ヤノの髪型がめちゃくちゃ気持ち悪い(笑)。「DEVOワカメちゃん」って呼んでるんですけど。お前よくこんな髪型してたなって。そこ注目です。気持ち悪いですよ(笑)。
(しかしよく働きますね。休ませてくれよ、とか思わないですか?)
思いますよー。さすがに思うよ。忙しいのは性に合ってるタイプなんですけど。休みてえなって最近思うんですよね、さすがに。自転車みたいなもので常にこいでないと倒れちゃうみたいな、そういう危機感がある。ポリはずっとそうやってきましたよ。だからこそちょっとそろそろ休憩したいなっていうのもある。これが売れて結果が出て、余裕ができることを願いたいです(笑)。でも実際休みがあっても結局曲作ったりしてんじゃねえのかなとも思う(笑)。
初回生産限定盤 [CD+DVD]
2008年4月23日発売 / 3360円(税込)
KSCL 1240~1241 / Ki/oon Records
通常盤 [CD]
2008年4月23日発売 / 3059円(税込)
KSCL 1242 / Ki/oon Records
CD収録曲
- Moog is Love
- Pretty Good
- Rocket
- 機械食べちゃいました
- DNA Junction
- Kagayake
- ポニーとライオン
- ありがとう
- イロトカゲ
- Mind Your Head
- Digital Coffee
- Boys & Girls
- Blue Noise
- Dry or Wet
DVD収録内容(初回盤のみ)
POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2008!!!! ~KARATE HOUSE!!!!~FINAL JUNE.2 日比谷野外大音楽堂
- ワトソン
- PLUS CHICKER
- サイボーグ彼女
- Tei! Tei! Tei!
- ハードロックサンダー
- AT-AT
- COMMODOLL
- PEACH PIE ON THE BEACH
- BUGGIE TECHINICA
プロフィール
POLYSICS(ポリシックス)
2007年で結成10周年を迎えた、日本が世界に誇るニューウェイブロックバンド。そのユニークなキャラクターと、ニューウェイブの神髄を自身のスタイルに昇華させたサウンドは海外からも熱烈な支持を受け、過去にも数回にわたるツアーを大成功させている。ボーカル・ギターのハヤシは飛び道具的魅力を持ったDJとしても引っ張りだこ。