POLPO|出会って30年のPABLOとZAXが、今鳴らすオルタナティブロック

PABLOの思うオルタナティブロックとは

──これからアルバム「peels off」が世に出るわけですが、お客さんにどう受け止めてほしいですか。

PABLO うーん……(長い沈黙)「こう聴いてほしい」というのはないけど……。

ZAX 爆音で聴け!

PABLO うん。すっげえ音がいいからね。あのね、あと付けではあるんだけど、オルタナティブミュージックというもののあり方の意味が、このアルバムを作ってわかったんですよ、オレ。中学とか高校のときに全盛期でしたけど、Nirvanaやスマパン以降のオルタナティブロックという言葉の意味。オレ、よくわかってなかった。辞書で「オルタナティブ」を引いてみてもよくわかんない。でも大人になって英語もちょっと理解して、オルタナティブという言葉の意味がわかって、そしてこのアルバムを作ったときに、オルタナティブロックってものが、世の中に対してどういう意味を持つものなのか理解できたんですよ。だから、(本作が)そうあればいいなと思ってます。

──PABLOさんの思う「オルタナティブロック」とはなんですか?

PABLO メインストリームの音楽は素晴らしいと思うし、最高にエンタテインメントだし、めちゃくちゃ楽しい。でも人のパーソナルな心の影とか穴とか傷とか、そういうものを埋めてくれるのはオルタナティブな音楽だと思うんですよ。アンダーグラウンドなものって言うか。限定するつもりはないし、人それぞれ違うと思うけど、でも僕も音楽の仕事をやってて、今の日本の音楽業界を見ててもわかるけど、メインストリームのものって、どうしても似通ってしまうという弊害もある。どっちもいいところと悪いところがあるけど、僕が振り返ってみると、メインストリームじゃない音楽の中に、自分の心の襞にマッチするものが見つかったりするんですよ。自分の心の欠けてる部分にぴったりはまるものを、音として与えてくれる。それがオルタナティブロックの役割なんじゃないかと思ったんですよ。POLPOの音楽もそうなればいいなと、と。これはもう、相手があっての話なんで。結果として受け取った人にとってそうなってくれればいいと思う。それがオルタナティブミュージックと呼ばれるものの役割だったりするのかな。

──P.T.P.もオルタナティブなロックだったわけですよね。

PABLO 初めはね。今はわりと……「ラウドロック」って言葉も一人歩きしてるし。いろんなバンドもたくさんいる。人によってはそれがメインストリームだったりするわけじゃないですか。僕は今のラウドロックがオルタナティブだと思ってないですね。

──そうですか。

PABLO そういうのって繰り返すじゃないですか。ロックにしても。

──ああ、最初はロック自体がオルタナティブだったけど。

PABLO そうそう。1960~70年代初期にロックが生まれて、不良が聴く音楽だと言われたところから大きく羽ばたいていくと、商業的だって批判される。メタルもそうだと思うんですよ。インディーズ的なところ、小さなライブハウスから発生したものが、商業的な成功を収めると批判する人が出てくる。流れが変わったのは1990年代の後半ぐらい。その頃、商業的な成功を目指して、オルタナティブな音楽をやってる人たちが増えてきたと思うんですよ。自分たちもスターダムに行こうと。特にカリフォルニア系のバンドって、すごくそれを目指してる人が多かったと思う。KornとかLimp Bizkitみたいな。

──カート・コバーン(Nirvana)が自殺したときとは状況が違うと。

PABLO そう。むしろそういうの(カートの自殺)も影響してるかもしれないですよね。インディーズでいることを貫こうとして破滅するよりも、「オレたちはちゃんとスターダムに上がるんだ」っていう風潮が1990年代に盛り上がったのは。どんなバンドもどんどんデカくなっていって。

音楽との出会い方は「部屋にCDが落ちてる」が理想

──でもご自分たちは違う。

PABLO いや全然。売れたいですけどね(笑)。

──POLPOが売れたらPOLPOがメインストリームになっちゃうかもしれない。

PABLO 絶対売れないです(笑)、大丈夫です。

──いいんですか、そんなこと言って(笑)。

PABLO いやいや、今の音楽業界のことは熟知してますから。1万枚売れたらすごい、5万枚売れたら大ヒット、10万枚売れたら超売れてるねって世界だから。でも絶対そんな枚数売れない。売りたいけどね。僕たちはこのCDを作るにあたって、予算の編成も自分たちでやってるし、ここまで売ったら採算分岐点をクリアだよねってラインも考えてるから。だけどそれ以上売れたいとは思わないですよ。売れたらラッキーだしうれしいし、みんなハッピーになるけど、そこが目的じゃないから。

ZAX 売れる売れないなんて事故すね。

PABLO こういう音楽やってて稀に売れるバンドいるけど、まあ事故だよね。

──ああ、ある程度余裕がないとできない音楽というのは、そういう意味もある。

PABLO そうそうそう。

──でもそれとは別に、より多くの人達に聴いてもらいたいという気持ちはあるわけですよね。

PABLO うん、もちろん。でもね、それってオレが姉ちゃんの部屋に入ったらそこにスマパンの「Siamese Dream」(1993年リリースのアルバム)が落ちてる、みたいなことでしかないと思うんですよ。人と音楽が出会うきっかけって。僕が中学生で渋谷を歩いてて、そこに「Siamese Dream」のデカい広告看板が出てたら、スマパン好きになってなかったと思うから。

──ああ、なるほど。

PABLO 友達が「これ最近聴いてんねん」って教えてくれるとか、たまたまレコード屋でジャケ買いするとか、そういう出会い方でしかないと思ってる。マスに訴えてより多くの人に聴いてもらってお金をいっぱい稼ごうとか、まったく考えてない。ライブのMCでも言いましたけど、来た人との絆ってそういうことだと思うし。そういう人たちが発信したり、「POLPOめっちゃいいんだよね」って誰かに薦めてくれたり、そういうところで広がっていくものだと思ってるから。それでいい。結果のことはどうでも……もちろん目標はあるし、それは達成しなきゃいけないけど。

──すごくわかります。ZAXさんどうですか?

ZAX その通りです。しょせんは音楽って言うか。

PABLO それ、よく言うね。ZAXは酔っ払うと、ちょっとバカにした調子で「しょせんは音楽やから」って言い出すんですよ。メシや空気は生きていくために必要やけど、音楽はそんなんちゃうから、みたいな。音楽への愛があってそう言ってるのもわかるんです。でも僕はその言葉の真意を測りかねてる。

ZAX 死ぬほど好きですよ、音楽。音楽なしではやっていけない。でもそれは自分のためであって、土下座してまで聴いてくれとは思わん。さっきの、姉ちゃんの部屋にいくとスマパンのCDが落ちてるっていうのがすごくいい。この世界のどこかにPOLPOのCDが落ちてて、ゴミか、と思うヤツもいれば、「なんやこれ」って引っかかって聴くヤツもいる。それでいいと思う。

PABLO それこそApple Musicとかのオススメで聴いて「やべえ!」みたいなのあるじゃないですか。そうなったらもちろんうれしいしね。でもそれを聴いてくださいって頭を下げるのはちょっと違うな。聴いてもらうために音楽以外のことを一生懸命やるってことはないと思いますね。

──すごく純粋な動機で作られたアルバムということですね。

PABLO 中学校時代に初めて曲を作ったときもそうですよ。音楽でお金稼げるなんてまったく思ってないときに、ただ楽しくて作ったというだけのもの。なので25年経っても覚えてるし、盛り上がってやれるんですよ。

ZAX ふふふ。

2人でいるときに「音楽って楽しいな」が芽生えた

──POLPOというバンド名の由来は?

PABLO バンド名はだいぶ悩みました。インディー感のあるユルい名前にしたいねっていうのはあって、ゴミみたいなバンド名を100個ぐらい考えたんですけど、いいのがなくて。地元の中山五月台ってところに「タコ中公園」っていう公園があることを思い出したんです。コンクリートをタコの形に固めたような遊具のある。

ZAX 足の部分が滑り台になってな。

PABLO そうそう。で、「タコ中公園」をキーワードに、最初は「オクトパス・セントラル」とか「オクトパス・キッス」とか考えてたんですけど、「タコってほかの国の言語だとどんなんなんだろう」と調べたら、POLPOが出てきて。音の響きも文字の並びもいいので、そこから固めていきました。

──特定のイメージみたいなものをまったく思い出させないところがいいと思いました。

PABLO ああ、そうすね! 確かに。発音もしやすいし。

──お二人の小学校時代の思い出……原点ということですね。

PABLO そうですね。

ZAX 「音楽楽しいな」とか「ライブしたいな」と思う気持ちも、こいつと2人でいて芽生えてきたんです。中学のときに佐渡島に修学旅行に行ったんですけど、そのとき2人で作った曲を初めて人前で演奏したんです。そうしたら大受けで、全員が総立ちになって。すごかったよな?

PABLO すごかった。

ZAX オレはそれがきっかけなんです。「ライブって最高に楽しくて震えるな」って。それで今も音楽やってる部分はある。

PABLO 運命って面白いですよね。偶然が積み重なって。僕もZAXと出会ってなかったら、ここまで来てなかった。感謝ですよ。

POLPO
POLPO「peels off」
2018年1月20日発売 / TOWER RECORDS
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8100円 / TRJC-1073

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POLPO「peels off」通常盤

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2018年1月24日発売
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TOWER RECORDS

収録曲
  1. 30 Steps
  2. in the mountain
  3. encore
  4. Rhaphidophoridae
  5. Night Cafe
  6. Wings of Black
  7. Sleeping Bug
  8. Manhunt
  9. White Painted Johnny
  10. A fool born in April

ライブ情報

POLPO「PWYW LIVE 2018 "peels off"」
  • 2018年3月1日(木)東京都 WWW
  • 2018年3月4日(日)大阪府 SUNHALL
POLPO(ポルポ)
Pay money To my PainのPABLO(G)とZAX(Dr)からなるユニット。2017年で、知り合って30年経つことをきっかけに結成された。2017年12月に東京・shibuya eggmanにてショーケースライブを実施。2018年1月に10曲入りのアルバム「peels off」をリリースし、3月にチケット料金を観客が終演後に決めて支払って帰るという“Pay What You Want(PWYW)”方式でワンマンライブ「PWYW LIVE 2018 "peels off"」を大阪と東京で開催する。