POLPO|出会って30年のPABLOとZAXが、今鳴らすオルタナティブロック

再び別々の道へ

──なるほど。それでお二人は別々の道へ。PABLOさんはプロデュースやサポートギターの仕事、ZAXさんはT$UYO$HIさんと共にThe BONEZのメンバー、そしてAA=などサポートの仕事をやってこられた。その間、2人で何かやろうという機運はなかったんですか。

PABLO なかったですねえ。The BONEZはすごい入れ込んでやってたし、ZAXにとって新しいホームになってるのがすごくよくわかってたから。僕は僕で自分のやっていた道を……まあ「極める」とまでは言わないですけど、ちゃんと掘り下げてやっていきたいっていうのがあったし。また自分でバンドをやりたいって気持ちにもなれなかったんで。

──なぜです?

PABLO 大変なんすよ、バンドやるって。楽しいけど大変。もちろんThe BONEZのTwitterとか見てるとうらやましかったりするんですよ。地方のライブに呼ばれて、いいバンドと対バンして、いいライブして、楽しくお酒飲んで。バンドやってないと味わえないよさみたいなものも、僕もやってたからすごくよくわかるし。でも同時に、バンドやることのつらさとか大変さがよくわかるから。ツアーはときに過酷だし、バンドをやることは出口が見えないことだったりする。「オレたち、どこに向かってるんだ?」とか考えるときがあるし。多くのバンドが悩んでると思う。どこまで行けばいいのか。すごくいいものだし、素敵な活動だけど、反面影も強いから、なかなか……まあ一緒にやりたいってヤツがいればやるけど、僕から一生懸命探してやろうとは思えなかったですよね。

──むしろプロデュースやギタリストとしてのスキルを高めていきたいという思いですか。

PABLO いや、そういうエゴよりも、「求められること」に対しての喜びがすごくあったんですよね。まったく僕の知らない人が、自分という存在を必要としてくれる。そこに対して自分が貢献できるとか、その人を通じて音楽の喜びや楽しみを聴く人に与えることができる。そこのやりがいを見いだした。

──なるほど。

PABLO でもバンドの楽しさもわかる。だからZAXいいなあと思ってましたけどね。楽しそうやなあ、と。

──ZAXさんはThe BONEZとしての活動で、バンドをやる楽しさと苦しさは実感されてます?

ZAX そりゃありますよ。大変ですよ。でもオレはバンドしかできないんで。人をプロデュースすることもできないし。

──セッションドラマーとしての活動も。

ZAX うーん、やっぱり自分のバンドが好きです。“バンド”が好きなんで。

──そんなPABLOさんがなぜ今ZAXさんとやろうと思ったんでしょう。30周年というきっかけはあるにしろ、決め手となったのは。

PABLO いや、そりゃ一緒にやったら絶対いいものができるなっていうのはあるんですよ。P.T.P.を10年間やってきて、コイツがいなかったら作れなかったものもたくさんあるから。絶対いいものができるのは、僕にはわかりまくってる。でも30年というきっかけがなかったらやってなかったと思うけどね。

ZAX そうね。

PABLO このきっかけがなかったら、やろうとは言わなかっただろうし。日々って追われて過ぎていくじゃないですか。なかなか新しいことを始められなかったりするでしょう。思ってても。

──P.T.P.がああいう形で終わらざるをえなかったことで、何かひっかかるものがあったとか。

PABLO いや、別にそういうのはないすねえ……それがひっかかってるからもう一度やって、その気持ちを解消しようみたいなことはゼロですね。

──なるほど。この2人で組めばいいものになるとわかってるから、30周年というきっかけで決断してみた。

PABLO ある種、POLPOの音楽には実験的な部分もたくさんあるんで。そういうことをやってみたかったというのもありますね。「出たとこで好き勝手やって、どれぐらい世の中に通用するか」みたいな。そこまで考えてはいないですけど、そういう実験的なことをやりたいという気持ちはありましたね。

POLPOの曲作りは「このコードいいな、じゃあ作ろう!」

──最初の合宿の時の話に戻りますが、どういう手応えがありました?

ZAX よかったよ!

PABLO よかった。すげえよかった。音もすごいよかったし……ある種ゼロのスタート地点から始まって、義務もないし、プレッシャーもないところから作る音楽っていうものの純粋さ。でも……これはいろんな人に、降谷建志(Dragon Ash)にも言われたんだけど、結局それはThe BONEZがあるとか、オレはプロデュースワークがあるとか、そういう本業があって余裕があるからできることだってことなんですよね。そこで自分たちの生活とか金銭的に余裕があるからこそ、音楽的にピュアに楽しむことができる。それはあると思います。

──確かに「それしかない」となると煮詰まりそうです。

PABLO たぶんね、もっと考えちゃうと思うんですよね。本当に今回は何も考えないで作ったから。コードをバーン!って鳴らして「このコードいいな、じゃあ作ろう!」みたいな。

──お互いの好みや音楽的嗜好性が素直に出てきた。まさに原点回帰というか、子供の頃に一緒に音を鳴らした、その感覚でもう一度やったような。

ZAX 近かったよね。

PABLO 近いすね。

──もちろんその間30年の経験値と英知はたっぷり注ぎ込まれている。

PABLO そんな感じです。

──じゃあ最初の合宿でPOLPOの形は見えていた。

ZAX 半分ぐらいできたかな。4、5曲。

PABLO でも見えてはいないですよ。また曲を作るとなったら、全然違う曲が出てくるから。突然ハードコアやろうかとか。ノリが合えばそういうことをやる可能性もある。機会があればもっといろんな曲が出てくる可能性があります。ZAXは音楽にすごく詳しいし、僕も幅広く聴くし。今回は時間が足りなかったからこの10曲でこの幅だけど、もう1回ぐらい合宿行ってたら、ヒップホップとかやってたかもしれない。

「POLPO SHOWCASE LIVE "PWYW"」の様子。(Photo by Daisuke Ishizaka[Hatos])

──この10曲でも十分幅広いですけど(笑)。

PABLO いやまだまだ。ガチのアンビエントとかテクノとかやりますよ。

──オルタナティブなロックとして振り幅があるし、しかもすごくそれぞれ完成度が高い作品だと思います。でもまだまだ行ける、と。

PABLO うーん、欲が出てくるんですよね。こういう曲を作ったら「こういう曲をこのアプローチで作ったらカッコいいんじゃないか」とか。だからやればやるほどいろんな欲が出てきて、いろんな曲ができる。

互いに一番のよき理解者

──ZAXさんはThe BONEZがホームという感覚はあるんですよね。

ZAX そうですね。

──POLPOはどういう位置付けになりそうですか。

ZAX POLPOは……オレとPABLOなんで、恋人……みたいな感覚ってあるじゃないですか。会ってなくても、元気にしてるんやろなって。

──友達?

ZAX 友達……友達以上ですね。自分の兄弟よりも、両親よりも近いと言うか。こいつと2人で生きてきた時間っていうのは、母親や親父よりも長いから。

PABLO 僕もその感覚わかりますね。ZAXも含め、付き合いが20年を超えてくると、ある種肉親よりも近くなる。関係値として、友達とか家族とか恋人とかじゃない、もう1つ別の人間関係ができあがってくるんですよ。十代の頃から一緒にバンドをやってきた友達は、割とそういう空気になりますね。でもそれを言い表す言葉はこの世の中に存在しないんですよ。

──しばらく離れていても、感覚的にわかり合えている。

PABLO うん、そうそう。たぶん僕の親なんかより、こいつのほうがオレのことわかってるから。家族、恋人、親友……そんな漠然とした優先順位じゃない、そんなものを飛び越して一番のよき理解者だったりする。

ZAX 不思議やな。

──ほかのミュージシャンの方とはまったく違う感覚でできている。

PABLO うーん、まあ阿吽の呼吸もやっぱりありますしね。「こう行ったらこう返ってくる」「こう返ってきたらこうやって返す」みたいな。

──音を聴いただけで相手がどういった状態なのかわかる。

PABLO うん。突き詰めていけばそうなりますよ。

──2人で同じステージに立ったのは先日のshibuya eggmanがひさしぶりだったわけですか。

ZAX まあサポートで一緒にやったことはあるけど。

PABLO でもね、真ん中で立って歌ってるとZAXのこと見られないんですよ。P.T.P.やほかの現場ではずーっと見られるんですよ。せっかく一緒にやってるのに全然ZAXのこと見れねえじゃん、みたいな。

──それが不安だということですか。

PABLO いや、せっかく一緒にやってるのに見れないのはもったいねえ、みたいな。もっと見て一緒にやりたいのに。

ZAX ふふふ。

POLPO「peels off」
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収録曲
  1. 30 Steps
  2. in the mountain
  3. encore
  4. Rhaphidophoridae
  5. Night Cafe
  6. Wings of Black
  7. Sleeping Bug
  8. Manhunt
  9. White Painted Johnny
  10. A fool born in April

ライブ情報

POLPO「PWYW LIVE 2018 "peels off"」
  • 2018年3月1日(木)東京都 WWW
  • 2018年3月4日(日)大阪府 SUNHALL
POLPO(ポルポ)
Pay money To my PainのPABLO(G)とZAX(Dr)からなるユニット。2017年で、知り合って30年経つことをきっかけに結成された。2017年12月に東京・shibuya eggmanにてショーケースライブを実施。2018年1月に10曲入りのアルバム「peels off」をリリースし、3月にチケット料金を観客が終演後に決めて支払って帰るという“Pay What You Want(PWYW)”方式でワンマンライブ「PWYW LIVE 2018 "peels off"」を大阪と東京で開催する。