Perfume「ネビュラロマンス 後篇」1万3000字ロングインタビュー|25年を巡る物語はラストシーンへ (4/4)

「好き」という気持ちに時間の長さは関係ない

──そしてそんな「ネビュラロマンス 後篇」の世界を具現化するライブが東京ドームで行われるわけですが、このライブの情報が解禁されたのが2月26日14:22、つまり2020年に新型コロナウイルスの感染防止のために東京ドーム公演が開場直前に中止になった瞬間からちょうど5年後で。やっぱり自分も含めて、ファンの多くはあの日のことを思い出しました。ここでリベンジを果たして、Perfumeファンにとってのコロナ禍がようやく終わるんだな、という。

あ~ちゃん 2月26日のあの時間に発表するというのは、私たちが提案したものではなかったんですけど、その反応を見て「私たちが思っている以上に、5年前のあの日のことを今も熱く、大切に思ってくれている人がいるんだな」ということを、改めて思い知らされた気がします。正直なところ、私たち自身はリスタートして5年も走ってきたので。

──まあ、それはそうですよね……。

あ~ちゃん チームには新しいメンバーもたくさんいて、当時のことを直接知っているスタッフばかりではないんです。でも、その新しく入ってくれた子たちが、私たちの歴史をちゃんと知ってくれて、その文脈を大切にしたいと言って行動してくれて2月26日に発表することになった。その事実が本当にうれしくて。「好き」という気持ちに時間の長さは関係ない、Perfumeへの思いの深さにファン歴は関係ない、と強く感じました。スタッフは一番身近なファンでもあると思ってるので。

あ~ちゃん

あ~ちゃん

──そう思います。

あ~ちゃん スタッフがそう動いてくれたことで、私たち自身もハッとさせられたんです。Perfumeが東京ドームに立つというのは、あの日会場に来られなかった皆さんの気持ちも一緒に連れて行くという意味もあるんだって。長く活動を続けていると、こうやって周りの人たちが私たちの物語に意味を与えてくれる。本当にありがたいです。

かしゆか あと、25周年の締めくくりでもあるから、「ネビュラロマンス 後篇」のライブというだけでない、今までのPerfumeの総括にもなっているライブにしようと思っています。前篇のツアーに来れなかった人も楽しめるように、ストーリーのおさらいはできるようになってるし、みんなで一緒に周年のお祝いもするつもりです。

あ~ちゃん 盛りだくさんでヤバいよね。体があと2つぐらい必要なくらい(笑)。

かしゆか みんながやりたいことを最大限入れようって話してるので、絶対面白いと思います。後篇と周年がリンクしたり。本当に「MIKIKO天才!」って思うはず(笑)。

のっち MIKIKOの演出プランが爆発してます。やばいよー?

Perfumeの目標はなぜ変わったのか

──アニバーサリーイヤーらしい質問を1つ。Perfumeは世間的に、いろいろな意味で「変わらないでいるところがすごい」という評価をされがちですけど、25年やっているとたぶん、自分たちの中では変化を感じていると思うんです。振り返ってみて、ここが変わったなという点はありますか?

のっち 結成したのが小学生のときだったから、変わったことといったら、大人になるにつれて3人の関係性がどんどん強固になっていったことかな。

あ~ちゃん 確かに、私たちの場合はPerfumeが人生そのものなので、変化というよりは成長なのかもしれない。

のっち 周りのスタッフが子供として扱わないで、早い段階で大人として接してくれたおかげか、「3人主体で動こう」というスタンスになるのが早かったんです。Perfumeをあんまり知らない人からは「髪型も変えさせてもらえずに縛られてる」みたいな見られ方をされたりもするんですけど、よく知ってくれているファンの人は「誰かにやらされているわけではなく、自分たちが選んでいる」と理解してくれてるので、そのイメージのギャップが面白いなと感じてます。

のっち

のっち

あ~ちゃん ただ、その大人になっていく過程の中でずっとPerfumeがあったから、真面目に過ごしすぎちゃった時間が長かったんですよ。本当はもっと開放的でよかったのに、「Perfumeはこうあるべきだ」というのを3人とも追い求めていたのかもしれません。例えばツアー先でも、ごはん屋さんに行ったりしないでコンビニで食事を買って、各自ホテルの部屋で振付や歌詞を復習したり、自分の映像を観て研究したりしていました。何かをお願いするのも「申し訳ない」と思っていたし、慎ましくあることが普通だと思ってたので。

──そういうストイックなイメージはありました。

あ~ちゃん でもあるとき、「これじゃ長くは続けられないな」と気付いたんですよ。それで、私たちの目標が「日本武道館に立ちたい」みたいなことではなく、「3人で長く一緒にいたい」に変わっていって、「じゃあ、3人で長くいるためにはどうすればいいか?」に考え方がシフトしました。

──何か具体的なきっかけがあったんですか?

あ~ちゃん NHKでやった志村けんさんとの対談で言っていただいた言葉も大きかったです。「あなたたちはもう完成形なんだから、何cmも大きく成長する必要はない。今日、1mmでも上を向けていればそれでいい」と。それを聞いて「そっか、私たちは目標としていたPerfumeというものに到達できてたんだ」と思えて。今でも「自分はまだまだだ」っていう焦りはあるんですけど、目標の角度を変えようと思えたんです。それからはツアーでも「せっかく地方に行くなら温泉のある宿に泊まって、おいしいものを3人で一緒に楽しもう!」という考え方をするようになって、ライブ当日をもっと楽しめるようになったんですよ。何年もアウトプットばかりで干からびていて、自分の中から何かを出したいと思っても何も出てこないので、自分はつまらない人間だなと思っていたところに、ようやくインプットが生まれた感覚。気付くのが遅すぎたのかもしれないけど、このときに「変わったな」って感じました。

かしゆか もちろん、3人で長く一緒にいるためには「なんで3人が求めてもらえているか?」ということを考えないといけなくて。やっぱりそれは音楽なんですよ。「次はどんな曲を出してくれるのかな?」「どんなビジュアルでどんなライブしてくれるんだろう?」とか、みんながそういう期待をしてくれるからPerfumeを続けられる。だからその期待に応えられるようにしながら、私自身もそれを楽しみにしています。

あ~ちゃん あと、音楽についての夢とか目標って私たちの中にもあって。例えば、昔やった「リニアモーターガール」「コンピューターシティ」「エレクトロ・ワールド」の3部作みたいな、ストーリーがつながっている曲をまた作りたいって中田さんにリクエストしたことがあるんですよ。Perfumeの近未来的な世界観とかアンドロイドっぽさって、あの3曲が多くの人に印象付けたところがあるから。で、それに対する中田さんの回答が「ネビュラロマンス前篇・後篇」だったんです。

──それは面白い話!

あ~ちゃん 自分たちの想像をはるかに超える壮大なものが返ってきたから、それを映像やライブにするという宿題がめちゃくちゃ多くててんやわんやなんですが(笑)、私たちもPerfumeのファンの1人として「次はこんな曲を聴いてみたい」という期待は持ち続けていますね。

もしも2周目のPerfumeがあったなら

──今日アルバムについてのお話を聞いてきて、たびたび「ループ」が話題になりましたが、もしPerfumeが今の記憶を持ったまま2週目のPerfumeをやるとしたら、やり直したいことはありますか?

あ~ちゃん 私は「ポリリズム」がリリースされたあとの、初めてのLIQUIDROOMでのライブ(参照:LIQUIDROOM超満員!熱狂のPerfumeワンマンライブ)。それまで300人くらいの動員でがんばってたのに、憧れのLIQUIDROOMがキチキチに埋まってて、感じたことがないような熱気で、開演前から感情が満タンに到達してうるうるしてて(笑)。振り落としでライブが始まる瞬間の、ものすごく泣いてる映像が今でもよくテレビ番組とかで使われるんですけど、当時はそんなことになるとは思ってもみなかった。だから2周目はもっと立派な顔で振り落としをしたいですね。「この映像、数年後に使われるよ」って(笑)。

かしゆか 難しいな……今までがあったから今がある、って考えると。

かしゆか

かしゆか

のっち 私ありました! 結成日を覚えとく(笑)。

あ~ちゃん あの、エレベーターでのっちをPerfumeに誘った日?

のっち それだけじゃなく、もう全部全部覚えときたい。2人が初めて会った日とか、あ~ちゃんと初めて握手をした日とか(笑)。本当にそれだけです、心残りは。

──じゃあ、やり直したいことでなく、もう一度体験したいことは?

あ~ちゃん 「ひみつの嵐ちゃん!」っていう番組に3人で出て、嵐さんと一緒に富士急ハイランドの戦慄迷宮に入ったんですよ。でも3人ともお化け屋敷は本当に無理で、入り口のところの説明を聞く部屋にいるだけで泣き叫びそうになってて。そしたらニノと松潤が「代わりに行くよ」って言ってくれて、私たちは相葉くんと外でソフトクリームを食べて待ってたんです(笑)。たぶん私たちが緊張してたのを汲み取って気を効かせてくれたんだと思うけど、相場くんが自分の家の近くの和食屋さんのこととかプライベートな話をしてくれて。その時間がマジで楽しくて忘れられないです。

のっち たまに思い出すよね、相葉くんをテレビで観るたびに(笑)。

かしゆか 「あれ楽しかったなー」ってね(笑)。

のっち 私は昔行った海外ツアーとか海外のフェスをもう1回やりたい。さっきあ~ちゃんが言ってたように、今だったら昔よりももっとライブ以外のことも楽しめると思うから。3人で海外に行くの楽しい。

かしゆか 私は秋葉原のストリートライブですね。当時どんな気持ちでやってたのか思い出せなくて。

──またやってみましょうよ。

かしゆか 何かをゲリラでやるって、今はなかなかできないんですよね(笑)。今だったらどういう気持ちでやるんだろう? そういうことをする機会がなくなっちゃったので、過去に戻ってもう1回体験してみたい気持ちがあります。

Perfume

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公演情報

Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME

  • 2025年9月22日(月)東京都 東京ドーム
    OPEN 16:30 / START 18:30
  • 2025年9月23日(火・祝)東京都 東京ドーム
    OPEN 15:00 / START 17:00

プロフィール

Perfume(パフューム)

あ~ちゃん、かしゆか、のっちからなる3人組ユニット。1999年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsule(現:CAPSULE)の中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たす。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には東京・日本武道館、2010年には東京・東京ドームでのワンマンライブを完売させる。2012年10月にはアジア4カ国で初の海外ツアーを敢行。2015年にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催された世界最大規模のフェスティバル「SXSW 2015」に出演し、インタラクティブメディアの祭典「SXSW Interactive」のヘッドライナーを務めた。2019年にはアメリカの野外音楽フェス「Coachella」への初出演を果たす。同年、自身初のベストアルバム「Perfume The Best "P Cubed"」をリリースし、これを携えて2020年2月に全国ドームツアーを敢行。2024年10月に「ネビュラロマンス 前篇」、2025年9月に「ネビュラロマンス 後篇」という架空の映画サウンドトラックをコンセプトにした2部作のアルバムをリリースし、9月22、23日に東京ドームで2DAYSライブ「Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME」を開催する。