Perfumeロングインタビュー|声出しライブを解禁した“革命の日”に、3人は何を感じていたのか?

Perfumeのライブ映像作品「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」がBlu-rayとDVDで発売された。

今作には最新アルバム「PLASMA」を携えて昨年8月から11月にかけて9都市で開催されたアリーナツアーの模様を収録。初回限定盤の特典ディスクには、ツアー初日の東京・有明アリーナ公演、およびファイナルとなった北海道・北海道立総合体育センター 北海きたえーる公演に密着したムービーや、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ初日公演の模様など、さまざまな追加映像が収められている。

この宮城公演1日目は、当初は新型コロナウイルス飛沫感染防止のため声出しが禁止されていたが、事前に想定された観客の収容率が32%だったことから、県が定める「イベント収容定員50%以下では声出し可能」という規定に従って、開催2日前に急遽“大きな声出しが可能な公演”としての開催を発表。ほかの多くのライブではまだ歓声を上げられない時期に、結果としてPerfumeが声出し公演の口火を切る形となった。そしてこの宮城公演は、当日のMC内で「革命の日」と名付けられ、ファンの間で伝説化するほどの盛り上がりに。このことはさまざまなニュース媒体で記事になり、戻りつつある日常を感じさせる出来事として喜びの声で迎えられたが、同時に多くの人々の間で、マイナスイメージな「32%」という数字を包み隠さず明かしたPerfumeへの驚きの声も上がっていた。

メンバーはどのような気持ちでこの“大声出し”公演の日を迎えたのか。3人に当時の心の内を明かしてもらった。

取材・文 / 橋本尚平ライブ写真撮影 / 上山陽介

「PLASMA」ツアーは「今まで隠してきたことを、あえて全部見せるライブ」

──音楽ナタリーでは昨年12月に、ライターたちで「PLASMA」ツアーの感想を語り合うという特集を公開したんですが(参照:Perfumeとゆかりの深いライターたちが振り返る「PLASMA」ツアー)、今回は本人たちにツアーの話を聞けるということで、その答え合わせができるのかなと思っています。ちなみにその座談会で僕が言ったのは「2021年の『polygon wave』公演は観客が上からステージを見下ろすというコロナ禍に最適化したライブだったので、メンバーとお客さんとの物理的な距離が遠かったのに対して、今回の『PLASMA』ツアーはいろんな意味でメンバーとの距離が近く、『polygon wave』公演ではやらなかったことをやろうとしているのを感じた」という話で。

かしゆか 確かに真逆な感じはありましたね。「polygon wave」のライブはラップトップ型のステージの床と壁が全部LEDだったのに、「PLASMA」ツアーではサービス映像(ステージ上の様子をリアルタイムに映した映像)を除いて、演出にはほとんどLEDを使ってないし。

あ~ちゃん 映像をバキバキに使った演出をあまりやらなかった分、シンプルに自分たちの生身だけで勝負することになったので、振付を合わせることはより一層意識しました。「polygon wave」のときなら映像と一緒に目に入っていたパフォーマンスも、視線が本人たちだけに向くことになるので。「ここの振りがそろってないよ」って、3人で毎日やってました。

かしゆか あと「polygon wave」のときはELEVENPLAYの皆さんに参加してもらう演出もあったけど、今回は「とにかく3人だけでやる」って感じで、原点に戻ろうとしているところが多かったと思います。

──原点回帰は感じましたね。特にライブ序盤は、会場の広さとは対照的にステージをコンパクトに使っていて、デビュー当時のような小さなライブハウスでのライブを思い出しました。

あ~ちゃん MIKIKO先生もそれはすごく意識してくれていたと思いますね。Perfumeのチームは今まで「転換しているところを見せないのが美しい」と考えてたんですよ。実は人力でやってるようなことも、なるべく3人以外の人の気配を感じさせないようにしようって。でも「PLASMA」ツアーでは、あえてそれを全部見せちゃうことで、みんなが一緒にPerfumeのステージを作ってるんだっていうことを感じてもらいたかったんです。

──なるほど。

あ~ちゃん 例えば、最初にステージの上を覆っていた白い布は、「ポリゴンウェイヴ」が始まるのと同時にスタッフが手で引っ張って取ったんですけど、トラスの尖った部分に引っかかって取れないことがあって。本番に向けて何度も練習してるとはいえ、みんなすごい緊張感があったし、そういう今まで隠してきた舞台裏での緊張をあえて見せるというのも新しい挑戦だったと思います。

Perfume

Perfume

──センターステージでのライブだと背面がないので、通常のライブと比べて裏方の存在を隠すのが難しい、というのもありそうですね。

あ~ちゃん センターステージについては「正面だけでなくいろんな角度から観てもらおう」という思惑もあったんですよ。「polygon wave」のときみたいなラップトップ型のステージは、映像とリンクしたパフォーマンスをしても正面からじゃないとわかりづらかったんですけど、あのとき横から観てくれた人たちから「メンバーが踊るのをこの角度で観たのは初めて!」っていう、むしろその角度が特別に感じたという感想がたくさん届いたので、「センターステージなら、また新しい角度で観れて特別感が際立つんじゃないか」と思って。

──でも大変ですよね。過去のセンターステージでのライブは曲ごとに向きを変えてパフォーマンスしていたけれど、このツアーでは振付や立ち位置をアレンジして、1曲の中でどんどん向きを変えていたので。

かしゆか そう、あっちが前になったりこっちが前になったり(笑)。「Party Maker」のときは私とあ~ちゃんが両サイドのサブステージにいるんですけど、会場によっては私たちが向いてる方向に客席がないこともあったので、当日に向きを変えたりもしました。そういうことを臨機応変に調整したし、会場ごとにやる曲を変えたりもしたから、覚えることが多かったですね。

──リハで客席の形状とかを見て判断するんですか?

のっち そういうときもあったよね。どの方向から見てもバランスよく見えるように立ち位置を意識して。演出やステージングをお手伝いしてくれたELEVENPLAYの3人に相談しながら、「そこ、どうやって裏返ってるんですか?」って足の動かし方を教えてもらったり。裏返りといえば、「ハテナビト」のアウトロでの、かしゆかの裏返りがすごいです。3人の正面が映るようにカメラが動いてるから映像だとわかりづらいかもしれないけど、ほぼ全曲に裏返りがあるからチェックしてみてほしいです。

かしゆか MCのときも、お客さんにおしりを向けっぱなしにしないように気を付けてたよね。挨拶するときも4方向に、それぞれたっぷり時間を取って(笑)。

あ~ちゃん 「演説みたいだね」って同級生に言われました(笑)。

のっち 衣装も、背中にすごく装飾してくれました。後ろから見ても面白いようにって。

ことあるごとに「Flow」って言うように

──アルバムのリリースツアーなのでセットリストは「PLASMA」の収録曲がメインでしたが、それ以外の曲はどういう意図で選曲したんですか?

かしゆか 後半にやった昔の曲は、お客さんとの距離が縮まるようなものを選びました。

あ~ちゃん そうだね。「Party Maker」はやりたいよね!とか。あとドラマで「STAR TRAIN」が劇中曲になったことで(参照:原曲はPerfume、「ファイトソング」で間宮祥太朗が歌う「スタートライン」未公開カット編集版公開)、この曲を歌ってほしいっていう声をたくさんいただいたので「じゃあやろうか」って話になり、「スタンドマイクを使うから、流れで懐かしい曲もやろうか」と言って「Puppy love」を入れたり。すごくスムーズに決まったよね。

のっち うんうん。「STAR TRAIN」については、あのドラマの中で歌ってくれたことでPerfumeの曲だと知らない人たちが「いい曲だな」って気に入ってくれて、あとで「えっ、Perfumeの曲だったんだ!」と気付くというのがすごく面白くて。次のツアーでは絶対に歌いたいと思ってたんです。

──「Party Maker」にしろ「Puppy love」にしろ、お客さんを巻き込んで一緒に盛り上がるタイプの曲だから、コロナ禍のライブではやりづらかったのかなと思っていたんですよ。

あ~ちゃん うん、確かに。

──だからこそ、お客さんとの距離が近いこのライブでやりたくなったのかな?って。

あ~ちゃん セットリストを決めるときに「声を出さなくても体を動かすことで発散できる曲」というのをずっと意識していたんですけど、同時に「声を出して盛り上がった曲の記憶を忘れないでほしい」という気持ちもあって、あえてそういう曲も入れたんですよ。例えば、公演日ごとに差し替えて歌った「エレクトロ・ワールド」「ポリリズム」「ワンルーム・ディスコ」もそう。それで歌ってみたら、聞こえないはずのみんなの声を、震える空気を細胞レベルで感じたんですよ。すごい疑似体験をしたなって。

あ~ちゃん

あ~ちゃん

──あと、前回のインタビューのときに「このツアーでついに私たちの夢が叶う」と言っていたんですけど(参照:Perfume「PLASMA」ロングインタビュー)、それって天井からゴンドラで降りてくるオープニングのことですよね?

あ~ちゃん そうです(笑)。

──実際に夢を叶えてみて、どうでした?

かしゆか すごく感動的でした。セットリストを作った段階で「Plasma」から「Flow」までの流れがすごくきれいだなと思ってたんですけど、実際にお客さんが入った会場を上から見たときに、なんてピッタリなんだろうって感じて。演出と楽曲がマッチしていて、アルバムの世界観が表現されてるのを毎回体感してました。

あ~ちゃん この演出でまた「Flow」がめっちゃ好きになっちゃって、ことあるごとに「Flow」って言うようになりました(笑)。

──ことあるごとに?

のっち テレビで歌う曲を決めるときに「『Flow』じゃダメですか?」って言ったり。やっぱり「ポリリズム」とか「チョコレイト・ディスコ」を歌うことになるんですけど。

かしゆか 誰も「Flow」とは言ってくれないよね(笑)。

あ~ちゃん ラジオで流す曲も「Flow」を推すんですけど、「なるほど、もうちょっとポップな曲のほうがいいですよね……じゃあ『ポリゴンウェイヴ』にしましょう!」ってなっちゃう(笑)。でも今回のライブDVD、本編のエンドロールが「Flow」なんですよ。誰ですか選曲したのは!あんた最高!ってなりました(笑)。

──ははは。

あ~ちゃん もう「Flow」という言葉自体を気に入っちゃって。このあいだ、春菜ちゃん(ハリセンボン近藤春菜)がお誕生日にラグをプレゼントしてくれることになって、2種類あるラグのどっちを選ぶか迷ってたんですけど、よく見たら片方の商品名が「Flow」だったので、そっちを注文しました。2カ月後に届きます。