新しいことするときほど、あえて昔の音を入れて耳馴染みをよくする
──「Moon」は2年前のシングルなのに、前篇でなくこのタイミングでアルバムに収録されたので驚きました。
のっち 私たちもです(笑)。
かしゆか 本当に同じ気持ちです。「ネビュラロマンス」の主人公は月から地球に来るし、めっちゃピッタリな曲なのに入らないの?って、前篇のときに思っていました。
のっち じゃあ、もしかしたら後篇にも入れないのかな?ってね。
──だから「Moon」ほどではないにしても、後篇にはずいぶん前に録った曲も入っているのでは?という気もしたんですが。
のっち まさにです。「Teenage Dreams」は前篇のレコーディングのときにすでに録ってたし。
かしゆか もともと「Teenage Dreams」は前篇の序盤に入れるつもりで。まだ戦いとかが始まる前の、主人公たちの日常パートみたいな想定だったと思います。
のっち あと「ソーラ・ウィンド」は、かなり早い段階からあった曲なのに前篇に入ってなかったことがみんなショックで(笑)。「なんであれ入れなかったの? 後編に絶対入れてくださいね!」ってプレッシャーをかけてたんですよ。そしたら「ガンダムカードゲーム」とのタイアップが決まって、商品CMも作っていただいたことで宇宙っぽいイメージがより強まって。
あ~ちゃん メランコリーで気だるい感じが、ゆかとあう!(笑) 3人の声質の生かし方が本当に天才!
のっち 前奏からAメロにかけてのちょっとキッチュなシリアスさが、サビでの往年のアイドルっぽい歌に展開していくのがたまらないです。「ソーラ・ウィンド」が後篇の中で一番好きかも?
──「ソーラ・ウィンド」は間奏に「The Light」のメロディが使われたり、歌メロが「IMA IMA IMA」っぽかったり、前篇の曲の要素がちりばめられていて後篇とリンクする役割があるので、もし前篇に入っていたらちょっと印象が変わっていたかも?と思いました。
のっち だと思います。「シーズン2でシーズン1の主題歌が流れる」みたいで、胸熱でした。
──あと、それと関係があるのかはわからないんですけど、懐かしの「Butterfly」を思い出すメロディが全体的に使われていて。
あ~ちゃん やっぱり気付きますよね。私もそうなのかなと思ってた。たぶん中田さんは意識的に使ったと思う。「新しいことをするときほど、あえて昔の音を入れて耳馴染みをよくする」みたいなこと、すごく考えてるって言ってたので。
レコーディングスタイルの変化がもたらした、英語発音へのこだわり
──のっちさんは「ソーラ・ウィンド」が後篇の中で一番好きかもしれないと言っていましたが、あ~ちゃんさんとかしゆかさんが後篇で気に入っている曲はどれですか?
かしゆか 私は「再起動世界」が大好き。1曲目の「Cipher」で「ああ、そうだ。前篇はこんなだった」みたいなことを思い出させたあとの、後篇始まるよ!っていう感じの疾走感。アニメのオープニングみたいで最高です。ストーリー後半の怒涛の展開に、勢いよく突入する入り口になっているというか。あと、歌い出しのあ~ちゃんが好きすぎて(笑)。絶対マイクスタンドを手で持って歌ってほしい。
──満員のお客さんがハンドクラップしながら盛り上がってる光景が目に浮かびますよね。
かしゆか 確かに! 間奏はどういう振付になるんだろう?ってドキドキしてます。
あ~ちゃん 1曲に絞るのは難しいけど、「Virtual Fantasy」が好きです。
のっち いいよねー。
あ~ちゃん この曲でアルバムの角度が急に変わる感じがするというか、ここまで緊迫感がずっと続いていたのに、ふっと日常に戻る瞬間が描かれる。緊迫した世界の中にも、ソファに座ってひと息つくような瞬間ってきっとあるんだろうなって。まるで日常にBGMが流れ込んできたような感覚があって。
──ああ、確かに。
あ~ちゃん 実はこの曲、最初は全部英語詞だったんですよ。日本語詞が一切なくて。それを見たときはもう「うわ来たよ……これは大変だぞ」って感じで(笑)。レコーディングが本当に大変で、「この1音にこんなに単語を詰め込むんですか!?」って思いながら(笑)、とにかく必死に録りました。でも、途中で「日本語の歌詞を足したい」という話が出て、再レコーディングすることになったんです。それで新しく日本語のパートを入れたんですけど、曲の途中で3人の声が日本語になった瞬間に、わーって鳥肌が立って、「これだ!」って思いました。
──それはなぜ?
あ~ちゃん 英語で歌っているときって、なんとなく声が少し低めになるんですけど、その3人の声が合わさって日本語になった瞬間に、きっと皆さんの頭の中にもインプットされているはずの「Perfumeの声」になって。「ああ、3人の魅力はここにあるんだ」って再認識したんです。
──今まで25年間、すっとそばで聞いてきた声が聞こえてきたんですね。
あ~ちゃん まさにそんな感じで、間奏を聴いていたら涙が込み上げてきたんですよ。たぶん、緊張から解き放たれて力が抜けたからこそ、そういう感情が自然と出てくるのかなって思いました。あと、この曲はオクターブ下で歌ったのもすごく面白かったです。自分の声なのに、低すぎて「えっ、誰?」ってなったし(笑)。それに、最後にフェイクが入るのもPerfumeとしては珍しいですよね。そういうところも含めて、この歌は本当に好きです。
──英語詞の曲だと、やっぱり普段のレコーディングよりも大変なんですね。
かしゆか レコーディングのスタイルが今回から変わって、中田さんが立ち合わなくなったんですよ。中田さんはどんどん新曲を作るから、レコーディングはディレクターさんにお願いすることになって。で、そのディレクターさんが英語をしゃべれるから、すっごい発音に厳しい(笑)。
のっち ゴリゴリのネイティブの人なんだよね。だからまったくごまかしが効かない(笑)。「ここは“sと“th”をちゃんと使い分けないと意味が伝わらないから」とか。あと“R”と“L”の違いにも厳しかった。
かしゆか かなりスパルタされてます。
あ~ちゃん あのディレクターさんじゃなかったら、こういう曲になってなかったかもね。
──英語の発音のよさは、表題曲「ネビュラロマンス」を聴いたときにも思ったんですけど、やっぱり海外のリスナーも多いから気を使うようになったのかな?と思っていました。
かしゆか あと、これは前篇のときから中田さんが言っていたんですけど、日本語詞もそう聞こえない、はっきりと“THE 日本語”ではない歌い方をするように指示されました。ちょっと気だるくて、ハキハキしてない歌い方。
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「好き」という気持ちに時間の長さは関係ない