前篇は70年代から80年代、後篇は90年代に公開された映画……ということは?
──「巡ループ」の「いのちの火花を 抱きしめて」という歌詞は「FLASH」の「火花のように FLASH」とリンクしているし、Perfumeがやってきた一連の「ちはやふる」主題歌の中でもループしているのを感じました。
あ~ちゃん あと「Challenger」の「命の祈りが散らしたのは火花火花」もありましたよね。でも今回の「命の火花を抱きしめて」という歌詞で言っているのは、「何かに夢中になれる心の中の炎が生む火花は、ただ誰かと競い合うためだけのものじゃなくて、相手にとっても自分にとっても“がんばった証拠”だから、その証をちゃんと抱きしめて自分を肯定してあげよう」という意味だと思うんです。がんばったことは無駄じゃないよって。
のっち ドラマに合ってる! 中田さんホント天才!
──あと「巡ループ」は、過去の曲の振付をサンプリングしたダンスも話題になっていて。
のっち MIKIKO先生も天才!
かしゆか あれは私たちもうれしかった。最初はあまり踊らない曲にする予定だったんですけど、「結局たくさん踊ることになっちゃったー!」って言われて(笑)。届いた振付の映像データを観たらもう大感動でした。「ちはやふる」の歴史を感じさせながら、私たち自身のストーリーにも重なっているっていう。
──この振付って、「ネビュラロマンス」という映画のエンドロールでこれまでの名シーンが流れている、みたいなイメージも湧きますよね。
かしゆか 確かに!
あ~ちゃん MIKIKO先生はこの振付を「未来から過去を見ている私たち」と「過去から未来を見ている私たち」という両方の視点で、走馬灯のように歴史が巡るイメージで作ったと言っていました。私たちが輝いていた瞬間というのは、同時にファンのみんなの人生の中でも大切なシーンとして火花のように光ってて、そのすべてを合わせた総決算。歌詞もメロディも振付もすべてがエモーショナルすぎて、パフォーマンスするたびに込み上げてくるものがあるんです。自分たち自身が一番感動しているというか(笑)。長く活動してきたからこそいただけた1曲ですよね。
のっち そしてその長い活動で、曲も振付もずっと変わらずに同じ人が作ってくれている、というのは大きいと思う。人が変わっていたらこういう気持ちにはならなかったかも。
かしゆか 確かに、もしこの振付を考えたのが別の人で、オマージュみたいになったらちょっと意味合いが変わってくるね。
──そしてPerfumeにとって最も象徴的な「ポリリズム」のポーズで歌が終わり、アウトロで3人がそっと本を閉じるという、「ネビュラロマンス」のエンディングも示唆するような振付になっていて。
かしゆか でもその「閉じる」は「終わらせる」という意味じゃなくて、「大切にしているものをしまう」みたいな感じがあって。
──ああ、思い出のアルバムをそっと閉じる、みたいな。とはいえ、1年以上かけて続いてきた物語が終わってしまうのは、ちょっと寂しさもありますね。
のっち 視聴会で最初にアルバムを全部通して聴いたときの私の感想は「寂しい」でした。
あ~ちゃん ただ、終わってほしくないな、寂しいな、という気持ちはあるんだけど、これからまたサイドストーリーとしてこの先の未来を描いていきたい気持ちにもなりますよね。中田さんは「ネビュラロマンス」について、前篇は1970年代から80年代ぐらい、後篇は90年代に公開された映画をイメージして作ったと言っていて。ということは、2000年代から現在までの「ネビュラロマンス」もまだあるよね?って思って。
のっち 60年代のエピソード0もいけるよね(笑)。
かしゆか 「巡ループ」のミュージックビデオのラストシーン、その設定を知ったうえで振付をよく見ると「2000年代!」ってなります(笑)。
──あれがなんの曲の振付なのかに気付けば、「この世界に生まれ変わった3人が、現実のPerfumeとして2000年代に活動を始めた」というラストシーンの意味がわかるんですね。
かしゆか そう、面白くてエモい作りになってます。
──でもそれって、物語のオチの部分じゃないですか。東京ドームでの後篇ライブの前にミュージックビデオでオチを公開しちゃって、ライブ当日はどうなっちゃうんですか……?
あ~ちゃん そうなんです! どうなっちゃうんだろうなんです(笑)。そこはお楽しみに!ってことですね。
私たち自身にもあった「迷いが生まれる感覚」を、リアルに突きつけてくる
──先ほど、「巡ループ」が作られるまではバッドエンドを想定していたという話がありましたが、ということはその1つ前の曲「exit」で終わる案もあったということなんですかね。この曲、いかにもラストバトルっぽいクライマックス感があるなと思いました。
あ~ちゃん たぶんそうだと思います。「このループを閉じるわ」って歌ってるから、ここで終わりかな? アウトロかな? と思ったら長い長い間奏だったから、また歌が始まってめっちゃびっくりしたんですよ。だから「たぶん、この間奏でいろんな展開があって、そこで物語を終わらせるつもりだったんだろうな」と思いました。
──ループを閉じちゃうんですよね。Perfumeは今まで何回もループに関する曲を歌ってきたのに(笑)。
あ~ちゃん 本当にそうです。「∞ループ」とか。
──あと「くり返す このポリリズム」とか。前篇のラストも「メビウスの輪」という言葉からループを感じますし。
かしゆか そのループを「exit」で一度終わらせようとしたけど、「巡ループ」でまた巡るんですね。たとえループを閉じたとしても、“あの日の僕たち”は消えないし、みんなの中に居続ける。すごく素敵なメッセージが込められたエンディングだなって思います。
──あとは「Human Factory - 電造人間 -」も、きっと後篇において重要な1曲なんじゃないかなと思いました。例えば、何か謎が解けてストーリーが急展開する、みたいな。
あ~ちゃん すごく重要だと思います。「自分はこの星の歯車の一部となって、永遠に踊らされていた」ということに、主人公がはっと気付いてしまう。そのときの、悲しいけれど「まあ、そういうものだよね」と受け入れる冷静な部分がサウンドで表現されてて。だんだんその気持ちと歯車が噛み合わなくなって、不協和音のような響きに変わっていくという。
──ああ、確かに終盤ちょっと不安定な感じになりますよね。
あ~ちゃん 物語の中で「ロボットだと思っていた相手が実は人間だった」とわかるんですけど、この曲では「大切なのは見た目ではなく、その人の中身なんだ」ということを言っている気がします。相手の内面が、自分とどうリンクするのかが重要だ、って。あと、自分の中で迷いが生まれてしまう瞬間の感覚を、この曲はリアルに突きつけてくる感じがして、聴くたびにドキッとさせられるなと思います。