Perfume|コロナ禍で迎えた20周年を経て、生まれ変わろうとする3人の今

キャリア20年は伊達じゃない

──その後のステイホーム期間中、皆さんはどんな思いで過ごしていたんですか?

のっち 1カ月くらい経ってからやっと「こうすればライブができる」とか「テレビの収録ができる」みたいなガイドラインが決まり始めたんですけど、それまではやっぱり「これからどうすればいいんだろう」という不安をずっと抱えながら過ごしてましたね。でもそのことが、今まで「もっと改善できるはず」と思ってたいろんなことを変えるきっかけになるんじゃないかとも思ったんです。Perfumeにとって進化のときなんじゃないかって。

──Perfumeは今までも、3人が離れた国でパフォーマンスを配信してリアルタイムで合成したリモートライブとか(参照:Perfumeの3人が世界3都市で同時にダンス、1万km離れてもタイムラグなくシンクロ)、今コロナ禍になって多くのアーティストが取り組んでいる新しいライブの形をいち早く実現させていましたよね。そう考えると皆さんは、コロナ以降に対応したライブは得意そうな印象があります。

のっち でも、みんなが無観客ライブとか新しいことを始めた時期に、焦って動かなかったのもPerfumeっぽいなって思ってましたね。

あ~ちゃん これまでの方法が通用しないとなると、やっぱり誰でも焦るじゃないですか。「もう自分の仕事は求められなくなるかも」っていう恐怖感もあるし。だからみんな「何かやりませんか?」っていろいろ言ってくれてたんですが、自分たち的には、急いで何かをやらなきゃというのはなかった。ステイホーム期間中に自分たちのDVDを見漁ってたんですけど、どのライブを観てもマジでカッコいいんですよ。自分のことなんですけど(笑)。どれも涙が出るような感動や心が震える感覚があって、いつの時代の自分も今の自分が観てカッコいいと思えたので、なんか心が満たされてたんですよね。2人と会えないことに向き合うと寂しい気持ちになっちゃうんですけど、毎日ビデオ通話でつないで「最近アジサイ買ってさー」とか「私も豆苗を育ててるんだよねー」みたいな話をしていたので、温かい気持ちで過ごすことができました。

──3人がこれだけ長い期間会わないって、これまでなかったのでは?

かしゆか 2カ月以上会わないのは、結成以来初なんじゃないかな。長くても1カ月くらいだったもんね。

のっち うん、そうだね。

──Perfumeは3人で息を合わせて動きをシンクロさせるダンスが特徴でもあるので、会えない時間が長いのは大変そうだなと思ってました。その間、自主練みたいなことはそれぞれ自宅でやっていたんですか?

のっち 運動はしたよね。

かしゆか しました(笑)。

あ~ちゃん 私は毎日Perfumeを踊ってましたよ。あれは得意げに踊れるやつなんで(笑)。NiziUをコピーしたりもしてたけど、Perfumeのほうが自信たっぷりに踊れるんですよね。

──2月の東京ドーム以来、初めて3人で会ったのはいつですか?

かしゆか 3人がひさしぶりにそろったのは、NHK「ライブ・エール」の事前番組かな(参照:NHKで岡村靖幸、岸田繁、山口一郎ら18組がユーミン名曲リレー!キックオフ番組にPerfume出演)。

のっち 一緒に踊ったのは7月にTBSで放送された「音楽の日2020」ですね(参照:TBS「音楽の日」に三代目JSB、いきもの、エレカシ、Perfume、BiSH、松平健、マンウィズら24組)。むっちゃくちゃ楽しかったです。

──ひさびさに一緒に踊ることの緊張感はなかったですか?

かしゆか 3人で踊ることは安心感とか喜びのほうが大きいんですけど、生放送のカメラの前に出て「わー、テレビってこんな緊張するんだー」って驚きました(笑)。やっぱり3人で会うと楽しいです。

──しっくりくる、みたいな?

かしゆか そうですね。しばらくラジオの収録もZoomとかを使ってやってたんですけど、どうしても時差があるし、声がかぶるとどっちかの声が消えちゃうから、お互いちょっと譲りながら会話してたんですよ。挨拶するときも、お互いになんとなく空気読みながら「Perfumeです! よろしくお願いします!」って合わせたり。だからひさびさに会って話したときのリズム感のよさに感動しました。「こんなにうまく噛み合うのか」って(笑)。

あ~ちゃん 「もう何カ月間もZoomを使ってラジオをやってるけど、もし次に会ったときに、会話にグルーヴが生まれなかったらどうする?」って心配はしてたよね(笑)。ラジオは限られた時間内でトークをするから、その中で大サビを迎えて終えなくちゃだと思うんですけど、それができなくなってたらどうしようって(笑)。

──やっぱりそれも、長く活動を重ねてきた成果なんでしょうね。

かしゆか キャリア20年は伊達じゃないなって思いますよね(笑)。

かしゆか

最近の曲は、めっちゃ笑顔になっちゃいます

──ベストアルバムに収録された「Challenger」は結成20周年の幕開けを意識したような曲と歌詞でしたし、配信シングル「再生」もミュージックビデオで過去のさまざまなMVを再構築していて、どちらもアニバーサリー感の強い楽曲でした。今回のシングル「Time Warp」も、デビュー15周年記念日に合わせてリリースすることを念頭に置いた曲だったんでしょうか?

かしゆか いや、そういうわけではないんです。

──最近の曲は特に「Perfumeが歌うことで説得力が増す」みたいなものが多いような気がしていて、「Time Warp」にもそれがあるように思えたんです。歌詞は「初めて体験したときの感動はかけがえのない宝物」のような内容だと思うんですが、今のPerfumeが歌うと「自分たちの原点を忘れない」と宣言しているように聞こえるというか。

のっち そうですね。中田(ヤスタカ)さんが書く歌詞って、私たちにとってセラピーなんですよ(笑)。私たちは基本的にあんまり悩んだりしないんだけど、歌詞をもらって救われた感覚になることがホントに多くて。「Time Warp」の歌詞で描かれてるのは「少年のときに感じたドキドキを今は感じられなくなってた」「もうあの頃には戻れない」というものだけど、「だから悲しい」じゃなくて「今だってドキドキできるでしょ?」「もちろん未来だってドキドキできるよ!」っていう歌なんですよね。「今まで生きてきた全部の時代が素敵やん?」みたいな、人生全肯定の歌というか。私たちは長く続けてきたからいろんな時代があったけど、いつの時代も戦ってるしキラキラしてる。どの時代も最高だったという歌をこのタイミングでくれたのはうれしかったです。

かしゆか 歌詞を読み込むと、やっぱり中田さんは今のPerfumeを客観視して歌にしてくれてるんだなってすごく感じますね。

──「Time Warp」はいつ頃レコーディングしたんですか?

かしゆか 2月のツアーの最中でした。東京ドームの前あたりかな?

のっち いや、あとだよ。2月29日。本当はドームの前にレコーディングする予定で、このあたりに“仮レコーディング日”みたいのがいっぱいあったんだよね。

──本格的にコロナ禍になってからだったら、レコーディングもみんないろいろ苦労してるのかなと思ったんですけど、まだ大丈夫なタイミングだったんですかね。

あ~ちゃん ギリギリ大丈夫でしたね。そういえば確かに、レコーディングがもうちょっと遅かったらどうなってたんだろう?

のっち いつも通りにはできなかっただろうね。

──曲を聴かせてもらったときの印象は?

かしゆか ポップでかわいいなと思いました。こういう明るいサウンドが最近の中田さんのモードなんだなーというのを察しました。

──確かに少し前までの楽曲はフューチャーベースを意識していたり、ダンスミュージックのトレンドをリアルタイムで追っていた印象がありますが、ここ1年にリリースされたのはどれも初期のPerfumeを思わせるかわいい曲ですよね。昔は「大人っぽい曲なのでちょっと背伸びして歌ってます」みたいなことを言っていたのに、皆さんが30代になってから逆転してかわいい曲が増えてきてるのが面白いなと。

のっち 確かに! 「無限未来」のときはまだ背伸びしてる感覚がありましたけど。

──それ1つ前のシングルじゃないですか。つい最近まで背伸びしてたんですか(笑)。

のっち ホントだ(笑)。

──歌っててどうですか? 最近の曲は。

かしゆか めっちゃ笑顔になっちゃいます(笑)。「Challenger」も「再生」も「ナナナナナイロ」も、パフォーマンスしてて楽しいんですよ。ドームツアーでは、過去の活動を走馬灯のように振り返る演出の「Visualization」のあとに「再生」をやったんですけど、それまでクールな顔をしていたのに「再生」が始まったら全員顔がほころんでる(笑)。踊りながら気付かないうちに笑ってたということはよくあります。「Time Warp」はまだそんなに踊ってないから、振りに追われて必死なんですけどね(笑)。

──レコーディングでの苦労などはありましたか?

あ~ちゃん サビの音程がけっこう高いんですよ。「限られた時を駆ける」「それぞれが今を生きる」のところ。裏声を出すほどではないけど地声だとちょっと苦しい、くらいの高さで。どうしようかなと思ってるときにミックスボイスで強めに出した声が「あ、じゃあそれで録ります」って採用されちゃって、「うわー……これ一番キツいやつ」って(笑)。一生懸命歌って、めちゃめちゃお腹が筋肉痛になりましたね。

かしゆか どこで切るとかどこを伸ばすとか、そういうことは中田さんからけっこう細かく言われました。例えば「時を駆ける」はつなげて歌えるけど、そこは「時を」「駆ける」と切ってほしいとか。そういうところをそろえるのに今回こだわっていた印象があります。歌詞にいっぱい斜線を引いてメモしましたね。

あ~ちゃん あとあれ難しかったよね。「駆ける」と「生きる」の微妙なメロディの違い。

かしゆか わかる! 「どっち?」ってなっちゃう。地味な変化付けるの好きよねー(笑)。

あ~ちゃん でもそういう中田さんらしさを期待してこっちも聴いてるしね(笑)。ほかの人に提供した曲でも、中田さんが作った曲だとそういう細かいところを探しちゃうもん。