バンドではステージで再現できる楽曲を

──作曲に関して、例えば1曲目の「SUPERCHARGER」はすごく前のめりな、勢いのある曲なんですけど、意識的に音を抜いて隙間を設けているというか、音のデザインが緻密ですよね。

堀江　昔はいろんな音をぐしゃっと詰め込んでいたこともあったんですよ。

──過去に堀江さんが作曲されたアニメの楽曲などは、その典型ですよね。

堀江　そうですね。すさまじい音圧、すさまじい質量で塗りこめるっていうのも好きだったんですけど、それも好き放題に音を詰め込んだからそうなったわけではなくて、積み木を積むように音を組み立てていって、それをやっていくうちに、逆に抜いていく手段も覚えていって。

──よく「引き算のおしゃれ」みたいに言われるような感じでしょうか？

堀江　そう、「アレンジは引き算」ともよく言われていて、僕もその通りだと思ってます。一度フルで積み上げることを覚えると、本当に必要なピースが見えてくる。で、PENGUIN RESEARCHはバンドなので、基本的にステージでそのまま再現できるように、つまり今いるメンバーだけで演奏できるように最低限のピースで組んでいく手法で曲を作っています。それはこれまでの作曲やアレンジの経験が生きているなと思います。

──話が戻りますが、そもそもバンドを結成するにあたって鍵盤を探していたということは、その時点で堀江さんの中で楽器編成は見えていたんですか？

堀江　僕自身がもともとピアノから音楽の道に入っていて、一番うまく弾けるのはベースだけれど、一番頭の中のイメージを具現化しやすいのはピアノなんですね。だから、バンドでもそれを表現しやすい編成がいいなと思って、メンバー集めの段階からギターとベース、ドラム、そしてピアノでいこうと思っていました。

──その意味ではキーボードの柴崎さんは、ダジャレじゃないですけど、キーパーソンですよね？

堀江　アレンジにおいてはピアノが全体のバランスを担っているので、ピアノが変わってしまうと一気に崩れるんですね。それは本人にも伝えていて、基本的には僕が打ち込んだフレーズを再現してもらいつつ、本人の色を出してほしいと伝えています。

柴崎　デモの段階でめちゃめちゃクオリティが高い、完成されたものが来るのでまずはそれを完璧に弾きこなす。その上で、それこそ「SUPERCHARGER」のような曲では、わりと自由にソロをとっている感じですね。

今はとにかく判断材料がほしい

──4月には愛知と大阪でレコ発ワンマンライブがありますが、それに対する意気込みも含めた今後のPENGUIN RESEARCHのあり方、あるいは目指すところをお1人ずつ伺ってもよろしいですか？

生田　PENGUIN RESEARCHの大きな目標として、日本武道館でのライブを掲げているんですけど、昨日のワンマンも含めて本当にたくさんの人たちに支えられてるなって感じているんです。なので、今応援してくれている人たちはもちろん、これから僕たちのことを知ってくれるであろう人たちと共に、みんなで武道館を目指したい。そしてその先も、みんなで歩き続けていきたいです。

新保　僕らは結成からまだ1年ですけど、初ワンマンを無事成功させることができて、当初は小さかったPENGUIN RESEARCHの輪というものが、どんどん広がってきている実感があるんですね。そこに大きな充実感を覚えている一方で、もっと僕らの音楽をいろんな人に伝えたいという欲求も強くなってるんです。だから、この輪を際限なく広げたいですね。

柴崎　昨日は僕にとって生涯忘れられない1日になりそうで、ライブ中も、PENGUIN RESEARCHをやっていなかったら経験できなかったことや出会えなかっただろう人たちのことが頭をよぎったり、いろんな感情が渦巻いたりして本当に幸せでした。あと、僕にはバンド歴がなかったこともあり、お客さんの熱いリアクションにも圧倒されたので、より大きなステージでその熱気を共有できるようにがんばります。

神田　昨日の初ワンマンは、僕らもお客さんも楽しみにしてたし、熱量もハンパなかった。それを、これから僕らは超えなきゃいけないですよね。今度の愛知と大阪は初めての土地ですけど、ワンマンという意味では“ホーム”で、昨日と同じかそれ以上のパフォーマンスをお見せできると確信しています。そして、その次のステップとして、対バンやフェスといった“アウェイ”的な状況でも、そこにいる観客全員に突き刺さるような、強度のある音楽を届けられるバンドになりたいです。

堀江　バンドとしての目標は4人が話してくれたので、自分のことを話すと、昨日のワンマンは、僕にとっても大きな分岐点だったんですね。昨日をもってクリエイターからアーティストの世界に足を踏み入れられたという点で。と同時に想定外だったこともあって、それは自分たちの音楽が、思いのほかダイレクトにお客さんに響いてしまったこと。ステージでそれを感じて、もちろんうれしかったんですけど、その反面、少し怖くもあって。

──怖い？

堀江　バンドというものが、こんなにも大きな力を持っているのかと。これはヤバイなと思って、まだ昨日の今日で、自分の中でうまく整理できてないんですけど、とにかく僕らのメッセージを、僕らが想像している以上に深いところで受け取ってくれる人たちがいる。その人たちに対してこれから自分は何ができるのか、それを判断する材料がもっと欲しいんですね。要は、早くまたライブがしたいし、新曲もたくさん作りたい。だから次の愛知と大阪でのライブも本当に楽しみで、そこでまた“材料”を増やして、バンドというものがどういう存在なのか、自分の体に叩き込んでいく作業をしたい。今はその気持ちが一番強いですね。