音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH
“遺言”を刻んだ1stミニアルバム「WILL」
バンド名の意味は今もわからない
──ところで「PENGUIN RESEARCH」というバンド名の由来は?
堀江 僕が名前を考えたんですけど、すごい難航して思い付くままバンド名をつらつら書き出してたんですよ。全部で60個くらいあったんですけど、その中でなんとなく僕は「リサーチ」という言葉が気に入って。僕は引きこもりだったので、自分の性分的にも、ラボにこもって研究してるみたいでいいなって。だから「◯◯リサーチ」にしようと、一時期は◯◯に入れる単語をずっと考えてたんですけど、どこかで「ペンギン」という言葉がいきなり降りてきたんです。すると今度は「ペンギン◯◯」っていうバンド名がいっぱいできて。
──じゃあ、いっそのことくっつけてしまえと?
堀江 そしたらわりといい響きだな、かわいいなと思って。なぜ「ペンギン」なのかは結局わからなかったけど、ひとまずこれでいってみようと。
──ひとまずなんですか?
堀江 愛着はあとから湧くだろうと。なんとなく好きな言葉と、なんとなくかわいい言葉をくっつけてみて、意味はあとで考えようと思いました。今も意味はわかってないんですけど。
──わからないんだ(笑)。皆さんは異論はありませんでした?
柴崎 異論というか、違和感はありました。
生田 最初ずっとバンド名がなくて、ビシッとしたカッコいい名前がいいよねってみんな思ってたんですけど、「ペンギン」がつくことでかわいらしさが生まれてしまって。最初は「うーん……」てなったんですけど、徐々に慣れてきて。
神田 ロゴができてからなんかハマったんだよね。
新保 うん、今思うとペンギンでよかった。
堀江 バンドを組むときに、まだどういうバンドにしたいかも決まってもいないのに、名前が先行すると、可能性が限定されてしまう気もしたんです。なので、そこに余白を残しておきたいと思って、あえて意味を持たせず、なんとなくの感覚で付けました。
人は知らぬ間にたくさんの「遺言」を背負っている
──では、ミニアルバム「WILL」について聞かせてください。本作のテーマはずばり「死生観」とのことですが。
堀江 はい。「死生観」というと仰々しく思われがちですけど、そこまで深く考えずとも、日常の中で「こんなふうに生きたい」とか「死ぬまでにあれをやりたい」とか、ふと思うことがあると思うんです。僕自身は、いつもそうやって自分の生き様や死に様を考えてるんですよ。生まれたからにはいつか死んでしまうし、時間は有限だから、その中でどこまで行けるのだろう、自分は何になるんだろうと。そこには焦りや不安もあれば、反対に希望もある。それらをすべてこの1枚に詰めてみようと。
──英語の「will」には「遺言」という意味もあり、まさに「死生観」というテーマに沿っているわけですが、アルバム全体の印象としては重苦しい感じはなく、むしろリスナーがハッパをかけられているような印象です。
堀江 遺言には、遺す側と、遺される側がいるわけで。それから遺言って、解釈を拡大すれば、何も死ぬ間際の言葉だったり、遺書として書かれたものだけではないと思うんですよ。つまり、かつて出会った人が、どこかのタイミングで自分の前から消えた瞬間から、その人にもらった言葉は遺言と同じ意味を持つんじゃないかって。
──なるほど。もう会わなくなったり、会えなくなってしまった人が残した言葉という意味で。
堀江 それは別に子供の頃の約束とか、他愛のないものでもいいんです。人は知らぬ間にそういう言葉をたくさん背負っていくものだと僕は思っていて、じゃあそうしたメッセージを受け取った僕らは、この先どうやって生きていくべきか。そして遺言を遺された側は、同時にこれから遺す側でもある。そういう気持ちで「A WILL」という曲を書きました。
──PENGUIN RESEARCHでは堀江さんが全曲を作詞作曲されていますが、その詞やコンセプトを皆さんで共有した上でレコーディングに臨むわけですよね?
堀江 基本的にはそうですね。特にボーカルに関しては、歌録りの直前に1対1で話す時間をとっていて、詞を読みながら「俺はこういう気持ちで書いたけど、鷹司はどう思う?」みたいに擦り合わせをしています。言葉の捉え方は人それぞれなので、お互いに思っていることを出し合って。
生田 「A WILL」という曲は、僕の中では遺言を遺す側の歌なのかなと思ったんです、漠然と。
──死にゆく自分が何か言葉を遺すのだと。
生田 でも晶太から、今彼自身が言ったように、過去にいろんな人から言葉を受け取った自分が今後どうするか、残された側の歌だというのを聞いて「そうなのか!」と。そこで我が身を振り返ると、僕が上京するときに、地元の友達から「お前バカなんじゃねえの?」なんて言われたりしましたけど、一方で素敵な言葉をかけてくれる人もいて。この曲を歌うときは、応援してくれた人たちの顔が浮かんでくるんです。彼らはもう覚えてないかもしれないけど、僕はその思いを胸にこのバンドで全力でやっていくしかないって感じたんで、やっぱり晶太の気持ちをもらって、自分の中でうまく消化できたというか、歌につなげることができたかなと。
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収録曲
- SUPERCHARGER
- A WILL
- ジョーカーに宜しく
- 雷鳴
- 世界最後の日に
- 敗北の少年
ライブ情報
PENGUIN RESEARCH presents ミニアルバム「WILL」レコ発ワンマンライブ「アップセットも宜しく」
- 2016年4月9日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
OPEN 17:00 / START 17:30
PENGUIN RESEARCH presents ミニアルバム「WILL」レコ発ワンマンライブ「ジーラも宜しく」
- 2016年4月17日(日)大阪府 梅田ZEELA
OPEN 17:00 / START 17:30
チケット料金:前売り 3000円(ドリンク代別)/ 当日券 3500円(ドリンク代別)店頭 / イープラス
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴崎洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月には6曲入りミニアルバム「WILL」をリリース。また4月から放送のアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマとして「スポットライト」を提供する。