ORIGINAL LOVE|逆行し続ける男がたどり着いた新境地

カメラを通して開かれた新しいチャンネル

田島貴男
田島の愛機、Zenzabronica S2。

──最後に、ここ最近ハマっているというカメラの話を聞かせてください。今回のジャケットには田島さんが撮影した写真が使用されているんですよね。

そうなんですよ! この写真が選ばれたのは偶然ですけどね(笑)。

──そもそもどういうきっかけでカメラに興味を持つようになったんですか?

以前、ペトロールズの長岡亮介くんと一緒に「SESSIONS」というアルバムを作ったんですけど、そのときに撮影してくれたのが今作の初回盤に付属するフォトブックにも写真を提供してくれたカメラマンの松本直也くんで。彼がライカのフィルムカメラを使っていて、そこで「フィルムカメラって面白そうだな」と思ったのがきっかけですね。最初は、ライカってすごく高いカメラだと思ってたんです。でも調べたら中古で例えばバルナックライカだったら5万円とかで売ってて「買えるじゃん!」って(笑)。それでライカの傷が付いて安かったM3ってモデルを買ったんです。そこから一気にハマりまして。

──今に至ると。

はい(笑)。まさか自分の写真がジャケットに使われるとは思ってもみなかったですけど。でも、あがってきたデザインを見たら今回のアルバムのサウンドに妙に合ってるなと思って。あと、自分が撮影した写真が自分の曲とかライブにフィットすることに、最近気付いたんですよ。今年の「LOVE JAM」で、演奏してるバックで僕が撮った写真のスライドショーみたいなものをやったんですよ。そうしたら、お客さんがめちゃくちゃ盛り上がってくれて。前は単純に「写真を撮るのが面白い!」みたいな感じだったんですけど、自分が作ってる音楽とリンクしてることに気付いてから、また興味が深まって。実はビジュアル的なものに興味を持つようになったのって今回が初めてなんですよね。それまで写真とか一切興味がなかったから。カメラを通して自分の新しいチャンネルが開かれたような感覚がありますね。

──しかも気付いたばかりだから、ここから先、新しいものが見えてくるかもしれないし。その第一歩が今回のアートワークなわけですね。

田島の愛機、Nikon F3。

うん、そうかもしれないですね。

──そして田島さんの場合、カメラに続く新たな求道が数年後にまた始まるんじゃないかという感じもあって(笑)。その連鎖がORIGINAL LOVEなんだろうと今の話を聞いて改めて思いました。

でも僕に限らず、特に音楽を作ってる人は、何かにハマりやすい傾向が強いと思いますよ。40代半ばぐらいから、いろんなミュージシャンと付き合うようになったんだけど、みんなとんでもない求道者ばかりだし。

──ラーメンとかカレーに、どっぷりハマってる人もいますよね。

ラーメン作るために寸胴鍋とか業務用のガスコンロを買ったりね(笑)。日曜大工が趣味で旋盤みたいな工具をいっぱい持ってる人もいる。あそこまでやる人っておかしいでしょ。でも、そこまで追求するから彼らの音楽は人並み外れて素晴らしいんです。カレーは僕も作りますけど、カレー変態みたいな人っていっぱいいるじゃないですか。

──カレー変態(笑)。

カレー翁みたいなさ(笑)。音楽を作る人って、何かにのめり込むことが仕事に結びついちゃってるんでしょうね。1枚のアルバムを作る作業って、1つのワンダーランドを作るようなものなので。結局、ミュージシャンって物語を作ってる人たちですから、のめりこむのが仕事なのかなって。僕がいいなと思う人は、だいたい全員がそうですね。

田島貴男

──何かを求道的に追い求めて、自分の哲学みたいなところに落とし込む作業というか。

僕は物事を頭で理解するんじゃなくて、まず自分でやってみて、「あ、こういう感覚なんだ」と自分の体と心で感じたところで、ようやくそれを作品に反映できると思っているんです。いろんな人の心に響くようなものを作るには、自分の感覚を通さないと嘘になっちゃうから。

──それが田島さんにとっては、ジャズギターをイチから学ぶことだったりするわけですね。

そうですね。マニュアルに従ってモノを作るだけじゃ、人を感動させるものにはならないと思うから。「あ、なるほどね」ってことにはなるけど、たぶんそこに感動は生まれないですよね。それは周りのミュージシャンから学ぶところも大いにあります。「ああ、こういうふうな感じ方をしてるから、あんなに面白い曲を作ることができるんだ」とか。いろんなことを感じて、そこで得た感覚をもとに作品を作ることを仕事にしてるから、アーティストはみんな求道的になるんでしょうね。だから危うい部分もすごくあって。バランスを見失って、とんでもない失敗もするんだけど、ミュージシャンの面白さって、たぶんそういうところにあるんでしょうね。それがここ最近ようやくわかってきたんです。

ライブ情報

ORIGINAL LOVE "bless You!" Tour
  • 2019年6月8日(土) 神奈川県 横浜関内ホール 大ホール
  • 2019年6月16日(日) 新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2019年6月22日(土) 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2019年6月29日(土) 岩手県 Club Change WAVE
  • 2019年7月6日(土) 北海道 Zepp Sapporo
  • 2019年7月13日(土) 愛知県 DIAMOND HALL
  • 2019年7月14日(日) 大阪府 Zepp Namba
  • 2019年7月20日(土) 東京都 中野サンプラザホール

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