アルバムの完全生産限定盤に付属するフォトブックより、ナタリー掲載用に田島自らが選んだ5枚の写真をコメントと共に掲載。彼の表現者としての新たな一面に触れてほしい。
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夕暮れ時、
シャボン玉を飛ばしているおじさんが、
通りがかりの子供をあやしていた。
古い演劇のような映画のような詩的な構図だったので、
首から下げていたNIKON F3でピントも確かめずに立て続けに7枚くらい撮った。
そのうちの3枚にシャボン玉が写っていてラッキーだと思った。
レンズはAi Macro-Nikkor 55mmの旧タイプF3.5のやつ。
フィルムはエクタ-100。
ほんの10秒くらいの出来事。
あのシャッターチャンスの10秒後以降二度とあのような構図は構成されなかった。
写真を始めてもうそろそろ2年くらいだが、
そのうちの10秒くらいの出来事。
ブレッソンが残した完璧すぎる構図の写真は、
どれもきっと物凄い長い時間の経過の中のほんの一瞬のことだったのではないか。
そう思うとあらためて気が遠くなった。
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バルナックライカIIIfを買ったばかりの頃の写真。
レンズはエルマー5cm。
ライカはバルナック時代からライカだったのだと思い知った写真。
あんなおもちゃのような小さなレンズで、
いかにもライカらしい情緒的な写り方をするのだからすごいなと。
エルマーはグレイト!
僕はエレキギターは1950年代のものが好きだが、
カメラやレンズも1950年代のものが好きみたいだ。
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これもバルナックライカで撮ったのだが、
レンズは1万数千円のロシア製の古いレンズ、
ジュピターの35mm。
お店の主人に安くて良いレンズはどれかと訊いて、
これを勧められた。
特徴的な5角形の絞り。
とても個性的な写り方をする大好きなレンズだ。
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これは「ライカスタイルマガジン」の表紙に使われた写真の別バージョン。
これもバルナックライカで撮った。
レンズは2万円で買ったエルマー9cm。
防波堤に止まっていたトンビとしばらく睨めっこして、
遂に飛び立つ時の写真。
バルナックライカを使っていると、
ライカというカメラがなぜ世界的に有名になったかが分かる。
写真が心象風景的に撮れる。
いい意味でイレギュラーが起こる。
時々、撮った時の自分の印象以上の画像までも、
カメラとフィルムが作ってくれるのだ。
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これはNIKON Fを買ったばかりで、
試し撮りした時の写真。
渋谷の交差点、
夜の9時くらいだったか。
レンズはNikkor Auto 55mm F1.2。 自家現像してこの画が見えた時は盛り上がった。
重たいレンズだけど大好きで、
しょっちゅうこれをつけて街へ出ている。
今のレンズにはない、
不思議な空気感が撮れる。
最近買ったZenzabronicaS2のレンズも60年代のNIKONレンズ。
これも素晴らしいレンズで、
最近はこのカメラばかり使っている。
NIKONの60年代のレンズにはなにかソウルのようなものを感じる。
ものつくりに賭けて燃えていた技術者達の熱いソウルをどこか感じるんだよな。