OKAMOTO'S|2027Soundの旗手として 盟友たちと創造した“攻めの劇伴”

9月20日に全国公開された、伊藤智彦監督によるオリジナル劇場アニメ「HELLO WORLD」。この作品の映画音楽のため、OKAMOTO'Sが主軸となりOfficial髭男dism、Nulbarich、OBKR、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAIといった豪華なアーティストが結集したプロジェクト・2027Soundが立ち上がり、全編を彩る劇伴が制作された。2027Soundの挑戦と創造が詰まった楽曲の数々は「『HELLO WORLD』オリジナル・サウンドトラック」として9月18日にリリースされている。 デビュー10周年を迎え、6月には初の武道館公演を成功させたOKAMOTO'Sはバンド初の劇伴制作にして高いプロデュース能力も発揮しなければならない本作をどのように完成させたのか? メンバー全員に話を聞いた。

取材・文 / 三宅正一 撮影 / 映美

OKAMOTO'Sが劇伴を作るという“攻め”

──映画「HELLO WORLD」は、いわゆる“セカイ系”と呼ばれる系譜に連なるアニメ映画だと思うし、正直、最初はこの映画とOKAMOTO'Sのバンド像とが結びつきにくいなと思ったんです。まず、そのあたりはどうですか?

オカモトショウ(Vo)

オカモトショウ(Vo) 僕個人としては2017年にドラマ(テレビ東京系「セトウツミ」)の劇伴を制作したことがあるんですけど、バンドにとって劇伴を作るのは今回初めての経験で。規模の大きなアニメ映画ということで、大丈夫かな?という不安もなかったわけじゃないですけど、バンドとして楽曲提供もやってきたし、オリジナルソングじゃない楽曲制作を劇伴という形でやれるのはすごくいいタイミングだなと思ったんです。あとは映画の制作サイドから「攻めた劇伴にしたいからOKAMOTO'Sにオファーしました」という話を最初に聞かせてもらったのも大きかったです。

──OKAMOTO'Sにオファーしていること自体が、映画にとって攻めの姿勢の提示にもなる。

ショウ そう。OKAMOTO'Sに声をかけることも攻めてるし、さらに俺たちにこの映画の劇伴のためのチームを作ってほしいという発想もまた、攻めてると思いました。

──OKAMOTO'Sを主軸にした2027Soundというチームで劇伴を制作してほしいというのも映画サイドからの要望だったんですね。

ショウ そうなんですよ。

──でも、なかなか難儀な要望でもありますよね。

ショウ そうですね。俺たちの部屋の中にいろんなアーティストを呼んでも、そんなに簡単に曲を作れるわけではないので(笑)。

オカモトレイジ(Dr)

──ただ、その一方でOKAMOTO'Sであればメンバーそれぞれが幅広いアーティストとの濃い横のつながりを持っているし、OKAMOTO'Sにお願いすれば多様なメンツでありサウンドプロダクションが見込めるという狙いも先方にはあったんでしょうね。

ハマ・オカモト(B) それはあったと思いますね。

オカモトレイジ(Dr) ただ、なんでOKAMOTO'Sにオファーしたのかわからなくなるタイミングもあったんですよ。先方から「こういう人にオファーしてほしい」と言われたこともあったんですけど、それだったら結局なんでOKAMOTO'Sにオファーしたのか意味がわからなくなるから、そのときは俺がハッキリ言いました。でも、そこからOKAMOTO'Sがやる意味を考えてくれるようになったので、それはうれしかったですね。

オカモトコウキ(G) OKAMOTO'Sをブランドとして捉えてくれてるんだったら、それをどう考えるかということだよね。

レイジ そうそう。

「OKAMOTO'Sがカッコいいと言うなら安心して乗っかれる」

──OKAMOTO'Sからのオファーでなければ応えなかったアーティストも多いでしょうし。

レイジ それはそうかもしれないですね。でも、これだけバジェットの大きな映画がOKAMOTO'Sを利用しようと思ってくれた時点でよかったなと。

──ただ単にキャッチーというのではないネームバリューというか。キュレーター的なセンスも買われているからこそのオファーだったと思いますし。

ショウ そういうことですよね。実際に「OKAMOTO'Sがカッコいいと言うなら安心して乗っかることができる」という言葉ももらったしね。

レイジ 言ってたね。

「HELLO WORLD」で声優を務める(左から)浜辺美波、北村匠海、松坂桃李。©︎2019「HELLO WORLD」製作委員会

ハマ OKAMOTO'Sというバンドをある側面でのスーパー集団のように思ってもらえてるからこそのオファーだと思うし、それは本当に光栄なことでした。それと同時に、当たり前ですけど映画サイドの方たちとの間に分野の違いによるハレーションが起こるのは事実としてあって。その齟齬を埋めるために何度も映画サイドと話し合いながら作っていったんです。言ったら、このアニメはジャンルとしてはSFじゃないですか。ショウを含めて僕らもSF映画が好きだし、そういう話を一緒にできる監督(伊藤智彦)だったのはよかったです。あと、2年前にたまたまショウが楽曲提供してOKAMOTO'Sとしても演奏に参加した(カンテレ・フジテレビ系ドラマ「僕たちがやりました」の同名主題歌を歌った)DISH//の北村匠海くんがこの映画に声優として主演しているという縁も偶然あったし。

ハマ・オカモト(B)

レイジ 俺らが劇伴のオファーをもらった段階ではまだ主演は決まってないと言ってたもんね。

ハマ そう、オーディション中ということだった。

コウキ それくらい時間をかけたプロジェクトで。お話をいただいてから完成するまで1年くらいかかったんです。絵コンテの段階から何回かやり取りがあって、最初に30、40曲書いて1回提出したものが全部ボツになったりもした。それは大変だったけど、結果的にやってよかったですね。楽器も弾きまくったし。

ショウ 2027Soundのメンツがそろったのも最後のほうです。曲がないとほかのアーティストにオファーしようがないから、最初はほぼほぼOKAMOTO'Sが曲を作って。

──打ち込みも含めてすごくいろんな音が鳴ってますよね。

オカモトコウキ(G)

コウキ そこは経験としてすごく大きかった。いかに映画の絵に合うか、研ぎ澄ませていけるかを考えられたので。その経験は劇伴ならではだと思うし。SFや青春、ラブストーリーと、おいしい要素をいろいろと詰め込んだ映画だからこそ、劇伴もおいしい要素の多い新しい音楽を映画サイドとしては期待していたんだと思うんです。打ち合わせでは「ハリウッド」というワードも出たんですけど、エンタメに振り切ったアニメ作品を作りたいとなったときに声をかけていただけたのは、何度も言いますけど、OKAMOTO'Sにとってもよかったなと思います。

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2027Soundの担い手たち