No title|17歳が等身大で届ける、旅立ちの歌

今しか書けない詞を

──自分に向けられた歌詞を見て、2人共どう感じましたか?

あんべ 初めて歌詞を見たときに、なんとなく旅立ちの歌みたいな雰囲気は感じたんですけど……それが自分たちに向けられているというのはわからなかったので、知ったときは驚きました。

あんべ(G)

ほのか ははは(笑)。

あんべ でも、これまでのほのかの詞とは違って堅い感じではなくて、柔らかさと言うか、人間らしさを歌詞から感じましたね。

ポチ 僕も自分たちに向けて書かれていると知って、びっくりしました。今あんべも言ったとおり、ほのかの詞って今までは堅くて文学的な感じだったんですけど、今回は人間味を感じて。こういう歌詞も書くんだなって、ちょっと意外でした。

──デビュー時に「No titleらしさってなんだと思いますか?」とお伺いしたときに、あんべさんはまだ決まっていないとおっしゃっていましたが、もがきながら先に向かっていくこの感じは1つNo titleらしさなのかなと。前作「超えて」も「ねがいごと」もすごくハッピーな歌でなければ、苦しい、寂しいという歌とも違う。高校2年生の皆さんの今がそのまま反映されているような、等身大の歌ですよね。

ほのか 「苦しいけど、前に進みたい」というのは、高校2年生の今だからこそ強く感じることなんだろうなと思います。この前、テレビでRADWIMPSさんの特番「RADWIMPS 18祭(フェス)」を観たときに「うんうん」って18歳の方々にすごく共感したんです(参照:RADWIMPSが“18歳世代”1000人と作った「18祭」来月オンエア)。この時期は悩んだり迷ったりして当然。そうやって悩みながら、ちゃんと大人になっていくみたいな……そういう思いをちゃんと形に残さないと、今しか書けない詞を、という気持ちはあります。だから、いつも等身大のありのままで詞を書くようにしていますね。

ギターとピアノのつながり

──ギターとピアノのアレンジ作業はどのタイミングで?

ポチ(Key)

ポチ ほのかが歌詞を書いているのと、同時並行でやっています。

──ほのかさんからポップだけど、切ない感じの曲が作りたいというイメージは共有されていたんですか?

あんべ うーん……聞いて……ない。

ほのか 制作中はひと言も言ってない(笑)。

──この曲のエモーショナルさは、ほのかさんのセンチメンタルな歌と、疾走感のあるギターとピアノがカチっとハマっているからこそだと思いますが、同時並行で別々に進めていて、ここまでお互いの歌や音を引き立て合っているのはすごいですね。

ほのか ああ、よかったです。

あんべ 最初の歌詞は見ていたので、そこから変更はありましたが、なんとなくの雰囲気はつかめていたような気がします。

──間奏のギターソロはこの曲の肝になっていますね。

あんべ 前作「超えて」やデビュー曲「rain stops, good-bye」はギターソロらしいソロがなかったので、せっかくだから今回はちょっと目立つ感じにしてみました。ただ、僕のソロのあとにポチのピアノソロが入るので、そことのつながりとか、細かいところを意識しましたね。

ポチ 僕もソロはギターとピアノのつながりを大事にしましたね。先にあんべがレコーディングをしたので、それを聴いたあとに、「じゃあこっちのアレンジのほうがいいかな?」と考えていきました。

“泣き笑い”みたいな感じ

──レコーディングは皆さん一緒に?

ほのか いや、今回はレコーディングの日程がそれぞれ別でした。あんべ、ポチ、私の順に録りましたね。

──スムーズに録れましたか?

ほのか そうですね。レコーディングにも慣れてきたと言うか、手順を覚えてきました。ただ、高音の一番キツいところを何十回も録り直しましたね。「もっとエモく! もっとエモく!」ってディレクターさんが(笑)。

──そんなに(笑)。

ほのか 印象的だったのは……録音ブースの隣にグランドピアノのブースと、ギターを弾ける小部屋が連結してるんですよ。一番心を込めなきゃいけないラストのサビを録るときに、ディレクターさんが小部屋の扉を開けて、照明を薄暗くして、あんべのギターを置いて、「見て! ここにはかつてポチとあんべがいたんだよ! もう旅立って行ってしまったよ!」って(笑)。

あんべポチ ははは(笑)。

ほのか 「これを見ながら想像して歌って」と言われて、すごく面白かったです(笑)。

──ポツンと置かれたギターとピアノを見ながら……。

ほのか かなり心を凝縮させて歌いましたね。情景描写をしながら。

──どういった情景を思い浮かべましたか?

ほのか 例えば「風は冬の匂い乗せて」のところは、グレーっぽい空の色や、季節が巡っていく様子を想像しました。あとは、もしこの曲に人の顔を書くとしたら、多分“泣き笑い”みたいな感じなのかなって。寂しいけど送り出したいっていう……人の心情というより、風景や表情みたいなものを想像して歌っていた記憶があります。

──「ふいに溢れた涙 寂しくなんかないはず 贈ろう 君に 歌を」というフレーズは、まさに“泣き笑い”ですね。

ほのか 強がってますね(笑)。ホントは寂しいのに。

あんべ 聴いてくれた方にも、自分のことのように捉えていただけるとうれしいです。別れは悲しいけどがんばってほしい、みたいな。

ポチ そうですね。自分の立場に置き換えていただいて、何か感じてもらえたら。

ほのか 人との別れは誰しもが経験することだと思うので、自分が見送った人たちのことを思い出して懐かしんだり、見送られたことがある人は自分がそういうふうに思われていたことを思い出してもらえたらいいなと思っています。最後の「いつの日にか強く、大人に変わっていく」「君の描いた未来が 幸せであるように、ただ、願ってる」というフレーズが一番気に入っているので、そこで少しでも聴いている人の心が動いたらうれしいです。

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「どういうこと?」