もう少し人間味のあるプレイを
──武道館のライブは、演奏自体のクオリティもすごく高かったと思います。
大喜多 よかったですね。ここ1、2年、まずはリズム感をよくして、ライブ全体を大きく見せることを意識していて。「楽曲をカッコよく聴かせるためには、どういうリズムが必要か?」ということなんですが、最近はそれがしっかり形になってきて、高校の頃から憧れてた……例えばRed Hot Chili Peppersのチャド・スミスとか……そのドラムに近付いてる手応えがあったんですよ。武道館でもそれがちゃんと見せられたと思うし、完璧だったんじゃないかなって。メンバーはもちろん、観ているお客さんにもわかってもらえたと思いますね。
日向 演奏に関しては、どこでやっても、いつやっても大丈夫なので。Nothing'sの看板はライブパフォーマンスだし、そこは絶対ブレないんですね。キャパシティも関係なくて、100人でも1000人でも1万人規模でも、演奏のクオリティは常に最高という状態でやらせていただいてます(笑)。
村松 すごいな(笑)。
日向 「音源かけてるの?」ってくらい、緻密なアレンジだし、演奏の精度も高いんですよ、ホントに。今後の目標としては、もう少し人間味のあるプレイをしたいなと。
生形 はははは(笑)。でも、10年バンドをやってきて、独自のグルーヴがしっかりできているなと感じますね。制作にしても、曲ができるスピードがすごく速くなってるんですよ。適当という意味ではなくて、ムダな時間が一切ないというのかな。「こういう曲を作ろう」と目標にした形にたどり着くまでにかかる時間が、以前よりもかなり短くなっていて。
日向 ラクチンです(笑)。外のスタジオは時間の制約もあるし、ダラダラしないで、集中してやれるので。
村松 それはあるね。
生形 今までとは違うスタジオというだけで、新鮮だしね。「リビングがあるから、ここでくつろいでから録音するか」とか(笑)。そういうちょっとしたことでも、気持ちに変化が生まれるので。
日向 ウブ(生形)がコーラスを録ってるのを見ると、ドキドキするんですよ。
生形 なんでだよ(笑)。
日向 以前のスタジオの録音ブースは、上半身しか見えなかったんです。この前使ったスタジオは全身が見えるから、「ウブが歌ってる姿、カワイイな」と思って。
生形 (笑)。例えばギターのアレンジを1時間くらい1人でやって、終わってロビーに行くと、なぜかみんながスーファミで遊んでたり。
大喜多 ロビーにスーファミがあったんですよ(笑)。
村松 確かに新鮮さはありますね。次のシングルになる曲を作ってたとき、歌詞もすごく短期間で書けたんです。制作中に目にしたもの、感じたことをメンバーと共有しながら歌詞にしたいという気持ちもあったし。それも新しい環境に影響を受けたんだと思いますね。
「POSコードってなんですか?」「駐車場が見つからない」
──メンバーが主体となってレーベルを運営することについてはどうですか? それぞれの役割もあるとは思いますが。
生形 そこは少しずつやっていこうと思いますけど、「忙しくなりそうだな」というのはありますね。またここから始まるというか、ゼロから自分たちで新しくやっていくので。
──あ、“ゼロから作っていく”という認識なんですね。
生形 もちろん。武道館の映像作品にしても、どうやってリリースしたらいいかわからなかったから。エンジニアの人に「アイテムの流通に必要なPOSコード取ってきて」と言われて、「POSコードってなんですか?」って聞くくらい(笑)。流通に携わってる知り合いに連絡したら、「僕がやりますよ」と言ってくれて、送られてきたPOSコードを転送して。
日向 そんな話、全然わからないですから。今はスタッフを含めて6人で運営しているんですけど、グループLINEでかなり頻繁に連絡を取っていて。「細かいことまで話し合って決めよう」というノリなので、以前よりもコミュニケーションは密になってますね。そうしないと回らないというか、さっきも言ってましたけど、本当にゼロからのスタートなので。機材車に物販を乗せて自分たちで運転したり、「機材が載り切らないけど、どうする?」とか。
村松 リアルだよね(笑)。
大喜多 「駐車場が見つからない」とかね。
日向 全然空いてないんですよ。オリンピックの影響もあるんだろうけど。
生形 確かにそういう話をすることも増えたよね。独立したバンドの仲間に話を聞いたり、逆に「独立って、どうやるの?」って質問されたり。そういうことも少しずつ落ち着いてやっと制作に入れる状態になったというか。
ようやく始まったNothing's
──今後の活動についても聞かせてください。2月27日には豊洲PITでワンマンライブ「BEGINING」が行われます(取材は2月上旬に実施)。
日向 新曲もやりますよ。さっき言ってた、次のシングルの曲。
大喜多 間に合えばね(笑)。
生形 ここまで来たらやるでしょ。もうレコーディングも終わってる予定だし。2月27日は、2009年の最初のライブとまったく同じ日なんですよ。場所も最初のライブをやった代官山のUNITにしようかって言ってたんだけど、さすがにキャパの問題があって、豊洲PITにしました。
日向 2009年の代官山UNITにはトラウマがあるからね。最初のライブ、めちゃくちゃだったから。
生形 そのときの映像もあるんだけど、観てられないですね。
日向 できるなら消し去りたい(笑)。
──今回のライブの「BEGINING」というタイトルには、“ここから始める”という意味が込められているんですよね?
大喜多 それもどこかにあると思うし、個人的には「ここからスピードアップしていきたい」という気持ちもあって。シングルを出して、アルバムの制作に入っていくんだけど、豊洲PITのライブをきっかけにして、その速度を上げたいので。「ようやく始まった」という感じもあるんですよね。「Mirror Ocean」のリズム録りは一昨年の夏に終わってたから、1年半ぶりの制作なんですよ。
──次のアルバムの方向性はどうなりそうですか?
生形 まだなんとも言えないけど、メンバー各々が新しい音楽を聴き続けているし、その中で感じたことを持ち寄って、話し合う中で、自然と新しいものになっていくと思いますけどね。
──Nothing'sは世界のロックシーンも見据えてるし、めちゃくちゃ現代的なバンドですからね。
日向 そう言ってもらえるのはうれしいですね。この先、もっと面白くなる気がしているんですよ。最近の若い世代からも、いろんなバンドが出てきてるし……。
生形 新感覚だよね。この前、対バンしたSHE'Sとか。
日向 King Gnuとかね。
村松 Bird Bear Hare and Fishもいいよ。
生形 Newspeakというバンドもそうなんだけど、完全に洋楽的なサウンドなんですよね。
村松 そう。俺らは日本の土壌を見据えながら音楽をやってるけど、新しい世代は洋楽から感じ取ったものをそのままやってる印象があって。リスナーの側にも、そういう音を受け入れる状況が育ってきてるんだなと思うし。
日向 そのちょっと上の世代、自分たちの少し下の世代って、ちょっとコミカルだったり、みんなで一緒に振り付けしたり、そういうバンドが多かったじゃないですか。そこはかなり違いますよね。
生形 本当にそう。今の新世代のバンドは、俺らの世代に似てる気がするんですよ。自分たちは洋楽の影響を受けてバンドを始めたんだけど、少し下の世代は邦楽に影響されたバンドが多くて。でも、今出始めているさらに新しい世代は洋楽っぽいバンドが増えてるっていう。
──流れとしてNothing'sにとってはいい時代なのでは?
日向 そうですね。すごい時代が来るかもしれないですよ。
生形 そういう変化は面白いと思うし、若い世代のバンドともいろいろやれたらいいなと。4月に「Hand In Hand Tour」という対バンツアーをやるんですけど、Survive Said The Prophet、Ivy to Fraudulent Game、Dizzy Sunfistを呼ぶ予定なんです。
──めちゃくちゃ楽しみです。ここから新しいキャリアがスタートするわけですが、5年先、10年先のビジョンも持ってたりするんですか?
生形 そこまでは考えてないけど、俺らはもう、音楽しかやれないですからね。ほかの仕事なんてムリだし、続けていく覚悟はできているので。
日向 目指せ、ストーンズ(The Rolling Stones)ですよ(笑)。
ライブ情報
- Nothing's Carved In Stone「Hand In Hand Tour 2019」
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2019年4月9日(火)愛知県 DIAMOND HALL
<出演者> Nothing's Carved In Stone / Survive Said The Prophet -
2019年4月12日(金)大阪府 なんばHatch
<出演者> Nothing's Carved In Stone / Ivy to Fraudulent Game -
2019年4月17日(水)東京都 Zepp Tokyo
<出演者> Nothing's Carved In Stone / Dizzy Sunfist
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2019年4月9日(火)愛知県 DIAMOND HALL