Nothing's Carved In Stoneが、2月27日にライブDVD / Blu-ray「Nothing's Carved In Stone 10th Anniversary Live at BUDOKAN」を発表した。
メンバーが新たに立ち上げた自主レーベルSilver Sun Recordsからの第1弾作品となる本作は、2018年10月7日に行われた東京・日本武道館公演の模様を全曲収録した作品。また、本作と同時にベストアルバム「Nothing's Carved In Stone 2008-2018」もリリースされる。
音楽ナタリーではメンバーの村松拓(Vo, G)、生形真一(G)、日向秀和(B)、大喜多崇規(Dr)にインタビューを実施。新レーベル設立の経緯、10周年を記念して行われた日本武道館公演の手応え、この先の活動などについて聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤倫人
自分たちの責任で活動したほうが後悔しない
──まずは自主レーベルSilver Sun Recordsの設立についてお聞きしたいのですが、10周年を終えたタイミングで活動の基盤を一新したということでしょうか?
生形真一(G) 結果的にはそうなりましたけど、メンバー各々かなり前から考えていたんですよ。Nothing's Carved In Stoneというバンドもそうだし、それぞれのミュージシャンとしてのキャリアを考えても、自分たちでやったほうがいいというか。全部自分たちの責任で活動したほうが後悔しないんじゃないかなと。時代の流れとしても、事務所に所属しているよりも、自分たちでバンドを動かしたほうがいいような気がして。
村松拓(Vo, G) それぞれに考えていることがあって。でも、バンドは4人でやってるわけで。みんな大人だし、本当の意味で自立してやっていくことに目を向けていたと思うんですよね、この3、4年の間に。
大喜多崇規(Dr) どういう形になるにしても、中途半端な状態ではやれないし、しっかりとファンに見せられるようにするためには、じっくり考えたほうがいいと思っていたんです。たまたま10周年と武道館という大きな舞台が重なりましたけど、今ってライブをすることが大事な時代じゃないですか。それをできるだけコンパクトな形で続けていくためには、メンバー4人で話す必要があったというか。今までNothing'sに関わってくれたスタッフへの恩返しも含めて、いろいろと考えながらこの結論に至ったということかなと。
生形 メンバー4人だけでやっているわけではないですけどね。音楽のことだけを考えられるのが一番だし、それをサポートしてくれるスタッフも集まってくれると思うので。まず、ライブのチームはこれまでとまったく変わってなくて、そこはスムーズにやっているんです。逆に音源の制作に関しては、かなり変化があると思います。これまでは事務所のスタジオでレコーディングしてたんですけど、今は別のスタジオを使っているので。
──制作の環境が変われば、当然バンドの音にも大きな影響がありそうですね。
生形 そうですね。ずっと同じスタジオでレコーディングするメリットもあると思うけど、実は以前から「外のスタジオでもやってみたい」という気持ちもあったんです。ただ、現実的にはなかなか難しくて。独立をきっかけにして、ようやくやれるようになったという感じです。まずはしっかり活動できるように環境を整えないといけないし……まあ、曲を聴いてくれる人、ライブを観てくれる人は知る必要のない話ですけどね、こういうことは。
村松 ははははは(笑)。
生形 今回の独立についても、最初は説明するつもりもなかったんですよ。でも「知りたい」という人もいたし、だったら話をしようかと。
武道館でも“普通のライブ”を
──Silver Sun Recordsからの第1弾作品は、2018年10月の日本武道館公演の模様を収めたライブDVD / Blu-rayですが、今振り返ってみるとどんなライブでした?(参照:Nothing's Carved In Stone、10年の軌跡を奏でた初武道館ワンマン)
村松 お祝いしてもらえてる感じがすごくありましたね。結成した頃から聴いてくれてる人、最近知ってくれた人を含めて、みんなが同じ熱量で「10周年を迎えられてよかった」という思いを分かち合えたというか。
生形 うん。武道館に関しては、いつものライブをやりたかったんですよ。普段通りのライブを武道館でやれたら一番いいなと思っていたし、実際にそれができたんじゃないかと。ライブハウスと同じようにバンドらしくやれたというのかな。そういうライブになったのは、観に来てくれた人たちがわかっていたからだと思うんです。Nothing'sが武道館でライブをやる意味だったり、俺らがやろうとしていたことだったり。ライブは自分たちだけでやるものでは絶対にないと思ってますからね、俺は。その場の空気をすごく敏感に感じながらやってるし、それは武道館でも同じでした。
──確かにいつも通りのNothing'sのライブでしたよね。まったく背伸びすることなく、武道館サイズのライブをやっていて。
生形 うん。1曲目は「Isolation」だったんですけど、それもすごく悩んだんですよ。
村松 「Mirror Ocean」で始める案もあったからね。
生形 そうそう。壮大な「Mirror Ocean」で始めるのもいいんじゃないかと。結局「Isolation」にしたんだけど、イントロのところで全員がドラムセットの前に集まって。それが自分たちのライブらしいと思うし、映像を観ても「これでよかった」って。
村松 うん。もちろん気合いは入ってたけど、ヘンな緊張はなかったし。
生形 照明や演出もシンプルでもいいと思ってたんだけど、スタッフが「せっかくだから」ってビジョンを用意してくれて。結果的にはよかったですけどね、もちろん。「炎を使いたい」というアイデアもくれたから、それも任せて。まさかあんなにデカい炎だとは思ってなかったけど(笑)。
大喜多 メンバーがタイミングを間違えて、前に出ていったときに炎が上がったら危なくないのかな?と心配してたんだけど、スタッフに確認したら、「オニイ、大丈夫。消防法で6m離れてるから」って。でも、ドラムからは1.5mくらいしか離れてなかったからめちゃくちゃ熱かったです(笑)。
生形 (笑)。照明チームに対してもこちらからは何も言わなかったんですけど、すごくカッコよくやってくれて。ライブ前は、「どうなるんだろうな?」と思ってたんですよ、実は。初めての武道館だし、ステージに出るまで、どういう雰囲気かわからなかったので。開演前にステージ袖から客席を見てるメンバーの映像もあって、それは収録してないんですけど、けっこうヤバいですよ。
大喜多 はははは(笑)。
武道館で証明した自分たちの歩み
──日向さんはどうでした?
日向秀和(B) アットホームなライブでしたね。
生形 一言でまとめた(笑)。
村松 でも、そういうことだよね。
日向 もっと緊張するかと思ってたけど、全然違っていて、まったくと言っていいほど緊張しなかったしね。武道館ってほかのホールやアリーナよりも温かみがあると思うんですよ。
生形 お客さんとの距離感も近いからね。
日向 そうそう。お客さんからの「おめでとう」という気持ちが漂っていたし、俺らも祝ってほしくて。「やったでしょ!?」っていう。Nothing'sの音楽性で、結成10周年で武道館をパンパンにできたっていうのは、すごい達成感だったんですよ。
──シーンの動向に流されず独自の音楽性を追求し、武道館を満員にしたわけですからね。
日向 めちゃくちゃ気持ちいいですよ、それは。Nothing'sはちょっとずつ目標を達成してきたバンドなんですよ。10年前の代官山UNITのライブから始まって、渋谷クアトロ、Zepp Tokyoというふうに少しずつ上がってきて。いきなりハネたわけではなくて、この音楽性をもって徐々に広げてきたというか。
生形 うん。武道館でそれを証明できたことは、確かに達成感がありました。ポッと出てきて人気になったバンドにはない強味を持っているというのかな。武道館のときも、ほぼノンプロモーションですから。
日向 ホントはもっとお金をかけてプロモーションしたかったんだけど、インスタで呼びかけるくらいだったよね。
村松 そうだね(笑)。
生形 そういうところもインディーズっぽくて好きですけどね。それであれだけの人たちを武道館に集められたことに意義があると思うし、すごくうれしかったです。
次のページ »
もう少し人間味のあるプレイを