ナタリー PowerPush - ムック

バンドの多様性を凝縮した2年ぶり新作「シャングリラ」

マニアックさの中にもキャッチーさが欲しかった

──今作は1曲1曲にフックがあるし、何よりキャッチーな仕上がりで。

ミヤ 印象に残らないと意味がないですからね。マニアックな曲でも、マニアックさの中にもキャッチーさが欲しいな、と最近考えるようになりました。それは言葉だったり、メロディだったり、いろんな要素があるけど、曲の中にアイコンを設けるというか。昔はそこをあまり考えてなかった。

──メンバー個々のプレイも際立っているし、バンド全体の風通しの良さも伝わってきます。

ミヤ ムックを15年やってきた中で、自分のキャラクターってあるじゃないですか。自分の作曲スタイルも、ある意味今回のアルバムで落ち着いた感じがするんですよ。ムックっぽさを突き詰めた感じがするので、次はもうちょっと新しいところへ行きたいとは思うんですけど。逆に逹瑯は、新しいアプローチをどんどん持ってくるから。

逹瑯 メンバーそれぞれ作り込んで、いろんな楽曲を持ち込んでくるので。1人3曲ずつ持ってくると、全部で12曲ありますからね。その中で印象に残るためには……その段階の競争って、もはや世の中との競争でもありますからね。引っかかりがある音やフレーズは考えますね。

ライブが想像付くような作風にしよう

──前作「カルマ」を発売して今作まで2年間空きましたけど、この期間は振り返ってどうですか?

アーティスト写真

ミヤ 「カルマ」をリリースした後に長い間ツアーをやっていたので、気持ちの変化はかなりでかいですね。「カルマ」はバンドの感情を押さえながら、ライブとのギャップを持たせた作品だったんですよ。ライブとは全く別で、作品は作品という位置付けで、バンドサウンドをスパイスにしてダンスミュージックをやるという。今回は何も押さえてないし、逆にライブが想像付くような作風にしようと。かつダンスミュージックみたいなこともやりたくて。そういう経験があったからこそ、今回の作品ができたと思う。今だからこそ作れた曲たちだし、今じゃないと作れなかったんじゃないかな。

──「カルマ」を消化した上でライブ感を表現できたと。そういう意味で音のバランスも最高にいい。

ミヤ 1年ぐらいで音源を出すと、少し早いというか、いろんなものを吸収し切れないんですよ。2年間ぐらいがちょうどいい。まあ、そうも言ってられないんですけど(笑)。

──バンドにとっては必要な2年間だったんですね。

ミヤ うん、ほんといろんなことを勉強できたし、それがないと楽曲は作れないですからね。だから、次もまた2年後かもしれない。

──ははははは(笑)。それは困りますが。

ミヤ 外に出る時間が長ければ長いほど、柔軟になれますからね。あと、人と人との付き合いも増えてくると、歌いたいことも増えてくるし、ネタに困らないというか。

自分らしさだけで曲を作ると限界がある

──「Marry You」はこれまでにない曲調で、純粋にいい曲だなと思いました。

逹瑯 この曲はストレートではないけど、少し皮肉を織り交ぜて、ちょっとヒネった目線で書いてみました。

──これは友達や知り合いに向けて?

逹瑯 いや、全然(笑)。ただ、頭の中に曲の空気感ができあがって、それをどうにか表現したいなと思って。ポッと思い浮かんだのが結婚式だったんですよ。あっ、ウエディングソングもいいかもって。で、普通のウエディングソングじゃ面白くないし、男目線、女目線、友達目線でもないな、なんか面白い目線ないかなと考えて。それで「ブーケ目線、面白いかも」って。

──ははははは(笑)。

逹瑯 友達が結婚して頼まれたとか、何もないですからね(笑)。1曲ぐらいウエディングソングがあってもいいかなと。お客さんで結婚した人もいるだろうし、こういう曲があってもいいかなって。最近は書きたいことを書いてる感じですね。

──それと7曲目「ピュアブラック」から8曲目「狂乱狂唱~21st Century Baby~」の流れも大好きで。これが同じバンドなのか!と思うほどの振れ幅ですね。

SATOち 4人がそれぞれ曲を作るので、やっぱり個性が出ますよね。そのときに作りたいものも絶対違うと思うし。「ピュアブラック」もそういう感じじゃないですかね。

アーティスト写真

──「ピュアブラック」はYUKKEさんの作曲ですが、これはどういうイメージで?

YUKKE 結構思い付いたことをそのまま形にしたんですよね。アルバムだったら、こういうものが1曲ぐらいあってもいいかなと。歌もので、哀愁があって、っていう今までの自分の曲とはちょっと違うところを攻めてみたくて。自分らしさだけで曲を作ると、限界がありますからね。持ってるものを全部出さないと、作品の中では残らないので。

CD収録曲
  1. Mr. Liar
  2. G.G.
  3. アルカディア featuring DAISHI DANCE
  4. ニルヴァーナ – Shangri-la edit -
  5. ハニー
  6. 終着の鐘
  7. ピュアブラック
  8. 狂乱狂唱~21st Century Baby~
  9. Marry You
  10. 夜空のクレパス
  11. YOU & I
  12. MOTHER
  13. シャングリラ
完全限定盤CD収録曲
-MUCC 15th Anniversary year Live(s)- 「97-12」2012.09.16 Zepp Nagoya
  1. 梟の揺り篭
  2. アンジャベル
  3. 絶望
  4. 幻燈讃歌
  5. 友達が死んだ日
  6. 4月のレンゲ草
  7. 25時の憂鬱
  8. 月の夜
  9. 雨のオーケストラ
  10. 狂った果実(笑)
初回限定盤CD収録曲
-MUCC 15th Anniversary year Live(s)- 「97-12」2012.09.13仙台Rensa
  1. 黒煙
  2. FUZZ –Thunder Groove Ver. –
  3. 月光
  4. 燈映
  5. 娼婦
  6. 心色
  7. 暁闇
  8. 家路
  9. 流星
  10. 優しい歌
ムック

1997年に茨城で結成された4人組ロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、従来のヴィジュアル系サウンドに欧米ヘヴィ / ラウドロックからの影響をミックスした独自の音楽性が高く評価されている。インディーズでの活動を経て、2003年5月にシングル「我、在ルベキ場所」でメジャーデビュー。2006年には初の日本武道館公演を敢行した。また2007年7月にはGUNS N' ROSESのジャパンツアーでオープニングアクトを務め、話題となる。2008年には海外のバンドと北米、ヨーロッパ、日本を回る大規模なツアー「Rockstar Taste Of Chaos 2008」に参加するなど、海外でのライブ活動も積極的に行っている。2011年11月、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ移籍第1弾シングル「アルカディア featuring DAISHI DANCE」を発売。2012年6月には幕張メッセで結成15周年ライブ「MUCC vs ムック vs MUCC」を開催した。同年11月、約2年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「シャングリラ」をリリースする。