MUCC「1997」全曲解説インタビュー|自らの通過点を見据え、生み出した珠玉の16曲

まさかの3度目のメジャーデビューから1年。結成28年目のMUCCがニューアルバム「1997」を4月2日にリリースした。

先行して公開されているアーティスト写真とタイトルからもわかる通り、アルバムのコンセプトは「1990年代」。メンバーが思春期を過ごした時代に聴いてきたという音楽のエッセンスが、現代にアップデートした形で各曲に詰め込まれている。アルバムの聴きどころを紹介すべく、音楽ナタリーではメンバーによる全曲解説を企画。1曲1曲を聴きながら、アルバムの副読本としてこのインタビューを楽しんでほしい。

取材・文 / 森朋之

“通過点”の90年代をテーマに

──アルバムタイトルの「1997」は、MUCCが結成された年ですね。この数字をタイトルにしたのはどうしてですか?

ミヤ(G) 「90年代」をアルバムのテーマにしたというのが一番の理由です。

──昨年リリースされたシングル「愛の唄」から始まったコンセプトですね。

ミヤ 「愛の唄」を制作したときはここまで具体的にイメージしてなかったんですが、いざアルバムを作る段階になって「テーマは『90年代』がいいんじゃないか」と思いました。MUCCは97年結成のバンドですから。自分たちのルーツとはまたちょっと違うんだけど、90年代前半の音楽をバンドの曲に落とし込んだことはあまりなかったし、それをやるのも面白いんじゃないかなと。やりたいことが明確にあるとラクというか、「こうしよう」と思わなくても勝手にアルバムができていく感覚がありましたね。制作が始まってから終わるまで、めっちゃ集中してました。

ミヤ(G)

ミヤ(G)

──それくらい当時の音楽が体に沁み込んでいたと。

ミヤ そうですね。これまで音楽を始めたきっかけや、自分の原点にあるものについてはけっこう考えたり、楽曲に反映してきたりしたんだけど、90年代は“通過点”なんですよ。アルバムを作っている中でも改めて「あまり触れる機会がなかったな」と思ったし、インタビューなどでもその影響についてほとんど言ってこなかった気がします。

YUKKE(B) 制作していて面白かったですね。早い段階から「90年代」というキーワードがあったのも進めやすかったし、制作中に出てくるアイデアも「それ、いいね」とメンバー間で共感することが多くて。自分として一番音楽性がイメージしやすい年代なのかもしれないなと思いました。

逹瑯(Vo) このアルバムは若い人には新しく聞こえるだろうし、上の世代は懐かしく感じると思う。新しさと懐かしさの両方をいい感じに混ぜ合わせられるのは、ウチらならではじゃないかな。歌詞のバランス感はちょっと悩みましたけどね。楽曲によってオマージュしているアーティストがいたりするんだけど、歌詞もそっちに寄せるか、もしくはまったく寄せないかを考えて。

──懐かしさだけではなくて、むしろ新しいサウンドという印象がありました。

ミヤ 90年代をオマージュするだけのアルバムとは違いますからね。当時流行っていたものに対して「現代だとどういう曲になるか?」と置き換えて考えたし、懐かしさより、新しさを感じてもらえる要素を多くしたので。あとは1曲の中で同じ90年代でも時代感をちょっと変えてみたり、いろんな遊び方ができたと思います。

「1997」全曲解説

01. Daydream
[作曲:ミヤ]

──では、ここからは収録曲について1曲ずつ話を聞かせてください。アルバムのオープニングはインスト曲「Daydream」です。

ミヤ 最近はあまりやってなかったんですけど、俺、インストで始まるアルバムが好きなんですよ。これはアルバムのマスタリングが始まる10分前まで作ってました。

──ギリギリまで制作していたんですね!

ミヤ まあ、ラップトップで作ってるからそういうこともできたという。1曲目に入れるインストだったので、アルバムが全部できてからじゃないと手をつけられなくて。アルバムのトータルイメージを汲んで、序曲みたいな感じで作りました。作り方の流れはこれまで通りなんですけど、今回は逹瑯や俺の声が入ってるので、そこに注目して聴いてもらうのも面白いかもしれないです。

02. 桜
[作詞・作曲:ミヤ]

──続く「桜」は90年代のミクスチャーロックをイメージした楽曲でしょうか。

ミヤ 初期衝動というか、バンドが始まった頃の景色や、当時の自分が思い描いていた未来と現在を見比べてるような曲ですね。こういったスカの曲はこれまでもMUCCで何度もやってきましたが、好きなんですよ。この曲のオマージュの元になった、メンバー全員が好きで聴いていたバンドもいて。歌詞にもそのバンドへのオマージュを入れてます。

逹瑯 制作中はこの曲が実質の1曲目になるとは思ってなくて。最初はびっくりしたんですけど、今回のアルバムはけっこう複雑な曲が多いので、「桜」のようなストレートなサウンドで始まるのはめっちゃいいなと思いました。ライブでも盛り上がる曲でしょうね。“初聴き”でも体が動くんじゃないかな。歌詞に関して、リーダー(ミヤ)は普段からストレートなメッセージを比喩を使って書くことが多いんですが、その感じがわかりやすく出てると思います。わかりにくいからこそみんなが深読みしてくれると思うし、哀愁感が漂ってる感じもいいなと。

逹瑯(Vo)

逹瑯(Vo)

YUKKE この曲はMUCCが得意としている曲調ですね。俺も逹瑯と同じで、制作中はこの曲が1曲目にくるイメージがなかったんですけど、今までとは違う切り口でのアルバムの始まり方でいいなと思ってます。

03. 蜻蛉と時計
[作詞・作曲:ミヤ]

──「蜻蛉と時計」はヘビーな音像が強いインパクトを放つ楽曲です。

ミヤ 90年代のニューメタル、ミクスチャーの感じと、現代の音楽をミックスしたくて。アルバムの中でも、一番いろんな時代を行き来している曲ですね。

逹瑯 これは歌うのが大変でした。声のアプローチがすごく幅広くて。

──かなり言葉が詰まっているパートもありますが、歌詞がすべて聴き取れるのがすごいなと。

逹瑯 どこを濁して、どこをはっきり聴かせるかは、かなり密にメンバーとやりとりしながら録ったんですよ。聴き取りづらいところは、あえてそうしています。

YUKKE ライブで演奏したときのフロアの激しい感じが想像できる曲ですよね。ベースソロからキーボードソロに行く流れとか、間奏パートも気に入ってます。

ミヤ シンセベースをYUKKEが弾いてるんですよ。今回のアルバムはベースソロが多いんですよね。この曲もそうだし、「Round & Round」にもあるし。

YUKKE シンセベースの音色もいろいろ試しましたね。

04. invader(2025 Remaster)
[作詞:逹瑯 / 作曲:ミヤ]

──「invader」にも、いろいろな音楽的要素が混ざってますね。

ミヤ ラウドな感じやメロディはこれまでのMUCCがやってきたオーソドックスなアプローチではあるんです。王道を行きたかったけど、それだけでは絶対にイヤで、何か新しい要素が欲しかった。この曲を作ってたとき、たまたまスパニッシュ音楽をけっこう聴いていたので、そういうエッセンスのリフを入れたら面白いかなと。スペインのおっちゃんが歌ってる感じもあるし(笑)、この曲を聴かせたバンドマンたちには「アプローチが斬新すぎますね」みたいなことをよく言われます。

逹瑯 基本的にはMUCCが得意なラウド系の曲なんですけど、精神性が強い歌詞を乗せると今までと同じになってしまうので、ちょっとコミカルな歌詞を乗せてみようと。

ミヤ 「倒せインベーダー」とか、MUCCの歌詞に出てきたことないですからね。

逹瑯 ハハハ。フックのあるメロディだから、パチンと来るワードが欲しいなと思って。うまくハマったかなと。

YUKKE ベース的にもかなり攻めたアプローチをしてるんですよ。演奏していて忙しいけど、すごく楽しい曲になりましたね。すでに配信リリースされている曲ですが、アルバムの中に混ざると聴こえ方が変わるし、ツアーでどう変化するかも楽しみです。お客さんも好きだと思いますね、この曲調。

YUKKE(B)

YUKKE(B)

05. Boys be an Vicious
[作詞・作曲:逹瑯]

──「Boys be an Vicious」はまずタイトルが秀逸ですね。

逹瑯 最初は普通に「Boys be ambitious」だったんですけど、リーダーが「ちょっと遊びたい」と言ってきて「全然いいよ」って返したら、こうなりました。90年代をイメージして曲作りに入って、「どんなバンドのコピーをやってたかな?」と振り返ったときに、「マッド(THE MAD CAPSULE MARKETS)やったな!」って思い出して。マッド系のデジタルパンクのサウンドもアルバムに欲しいなと思って作った曲ですね。

ミヤ MUCCはコピーバンドから始まったんですけど、その頃にやってた曲はジャンルがグチャグチャで。同じライブでマッドをカバーしたり、MALICE MIZERをやったりしてたんですけど、その感じなんですよね、今回のアルバムは。1つのジャンルにこだわるわけではなく、いろんな音楽が好きで、それをただやってる。「Boys be an Vicious」はThe Prodigyとかのデジタルハードコアのテイストも入れたくて。マッドが影響を受けたところにもちょっと足を突っ込んでます。

YUKKE 確かにわかりやすくオマージュ感が出てますね。結成した頃、機材車の中で流していた曲のイメージというか。自分はMUCCに入った頃に好きだったパンクバンドの曲のフレーズを入れたり、個人的にもいろいろ遊べました。