Mrs. GREEN APPLE「5」特集|デビュー5周年、ベストアルバムで迎える“ミセス フェーズ1完結”

2018

“音楽”を突き詰めた「ENSEMBLE」

2

6thシングル「Love me, Love you」をリリース。のちに表題曲はAbemaTV「御曹司ボーイズ」主題歌に使用される。

4

3rdフルアルバム「ENSEMBLE」をリリース。のちに収録曲「Coffee」がドラマ「I”s」エンディングテーマに使用される。

3rdフルアルバム発売を記念して、東京・代々木公園野外ステージでフリーライブを開催。

5月~9

ホールツアー「ENSEMBLE TOUR」を開催。千葉・幕張メッセ国際展示場2DAYSでファイナルを迎えた。

8

7thシングル「青と夏」をリリース。映画「青夏 きみに恋した30日」の主題歌として書き下ろされた表題曲と、挿入歌「点描の唄(feat. 井上苑子)」などを収録。

9

ワンマンライブ「Mrs. ONEMAN LIVE ~青の海と夏~」を沖縄・ミュージックタウン音市場で開催。

11月~12

ライブハウスツアー「ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~」を開催。バンドの原点の地である東京・渋谷CLUB CRAWLでファイナルを迎える。

「Love me, Love you」ジャケット
「Love me, Love you」

6thシングル曲「Love me, Love you」はブラスを取り入れたビッグバンド編成のナンバー。愛にあふれたまぶしい世界が、まるでミュージカル作品の主題歌ように華やかに表現されている。そしてミュージカルというテーマは3rdフルアルバム「ENSEMBLE」にもつながっていく。結成から勢いよく走り続けてきた彼らが“ミュージシャンとして音楽的でありたい”という思いに今一度向き合い、バンドのアンサンブルを徹底的に突き詰めた本作。コントラバスを取り入れたジャジーなナンバー「Coffee」、ゴスペルバラード調の「They are」、大森が音楽活動を始めるきっかけとなったバンド・MONGOL800のキヨサクを迎えたメロディックパンク調の「はじまり」、流麗なピアノの旋律が印象的な「アウフヘーベン」、バロック音楽からギターロックまでさまざまなエッセンスを詰め込んだ「PARTY」といった幅広いジャンルの楽曲が収録されている。5人それぞれが音楽的知識を深め、ミュージシャンとしての力を養ったうえでこのアルバムを作り上げたことは、その後の作品やライブにも大きく影響していく。

ジャケットに描かれた劇場を舞台にしたコンセプチュアルなアルバムの世界観は、その後のホールツアー「ENSEMBLE TOUR」で壮大なエンタテインメントとして具現化された。ツアーファイナルの千葉・幕張メッセ国際展示場2DAYSには合計約2万人のオーディエンスが集結。メンバーは華やかな衣装を身にまとって劇場風に装飾されたステージに立ち、ダイナミックな演出を取り入れながらライブを繰り広げた。終盤の「PARTY」ではカラフルな衣装を着用したダンサーが舞い踊り、きらびやかなアンサンブルに乗せて醜くも美しくもある人生のありさまが歌われる。それは結成から5年間、音楽とエンタテインメントの融合、表現を追求してきたミセスが、音楽的技術や会場の大きさ、演出の規模など、すべてが伴ったうえでたどり着いた景色だった。

「ENSEMBLE」ジャケット
「ENSEMBLE」
「ENSEMBLE」ジャケット
「青と夏」

音楽的に成熟した「ENSEMBLE」を完成させ、ミセスが次に掲げたテーマは“原点回帰”だった。8月には映画「青夏 きみに恋した30日」の主題歌を表題曲とした7thシングル「青と夏」がリリースされる。ギターサウンドを前面に打ち出し、バンドとしてのグルーヴに重きを置いたこの曲は、メジャーデビュー当時の彼らのサウンドを彷彿とさせた。そして「青と夏」は2018年夏を代表するサマーソングとなり、リリース後もロングヒット。2020年7月現在までにミュージックビデオの再生回数は5000万回を突破し、バンドの代表曲の1つとなった。

壮大なホールツアーを終えたばかりではあったが、バンドは止まることなく11月にライブハウスツアー「ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~」を開始。きらびやかなホールツアーとは打って変わって会場の照明を落とし、ステージに設置されたスティックライトのみのシンプルな演出でライブを展開した。“回帰編”と銘打ったこのツアーでは、インディーズ時代の楽曲も多くパフォーマンス。懐かしさがありながらも、あくまでもそこには2019年最新型のミセスの姿があり、「ENSEMBLE」制作を経て洗練されたバンドアンサンブルが鳴り響いていた。ツアーファイナルはミセスにとって初めてライブを行った場所であり、バンドのホームとも言える東京・渋谷CLUB CRAWLで行われた。終盤にはメンバーが結成当時を振り返り、作詞作曲からアレンジまでを大森が一手に担うこのバンドで、自分が何をできているのかわからずに葛藤していたことを明かす。しかし、このツアーで「我逢人」「WaLL FloWeR」のリアレンジを手がけた藤澤が「今は自信を持って『こういうものをやりたい』『こういう音を鳴らしたい』っていう気持ちを間違いなく持って、ステージに立てていることがうれしくて。今回のツアーは間違いなく、Mrs. GREEN APPLEの5人で作り上げられたなと思います」と語る通り、バンドは一回りも二回りも大きくなった姿で原点の地に回帰したのであった。

2019年、2020

ミセスフェーズ1完結、そしてその先へ

2019

1

8thシングル「僕のこと」をリリース。表題曲は「第97回全国高校サッカー選手権大会」の応援歌として書き下ろされた。のちにカップリング曲「Folktale」はソフトバンクiPhoneのCMソングに使用される。

4

9thシングル「ロマンチシズム」をリリース。表題曲は資生堂商品「シーブリーズ」のテレビCMソングとして書き下ろされた。カップリングにエアアジアのCMソング「How-to」を収録。

6月~8

全国ツアー「The ROOM TOUR」を開催。大阪・フェスティバルホールでファイナルを迎える。

10

4thフルアルバム「Attitude」をリリース。テレビアニメ「炎炎ノ消防隊」のオープニング主題歌に「インフェルノ」やフジテレビ系「めざましどようび」のテーマソング「lovin’」など収録。のちに収録曲「CHEERS」は森永製菓「受験に inゼリー」CMソングに使用される。

11

初の海外ワンマンライブ「Mrs. ONEMAN LIVE ~in TAIWAN~」を台湾・THE WALLで2DAYS開催。

12

初のアリーナツアー「ARENA TOUR / エデンの園」を開催。神奈川・横浜アリーナ、愛知・ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)、大阪・大阪城ホール、東京・国立代々木競技場第一体育館で計7公演を行った。

2020

7

初のベストアルバム「5」をリリース。

2019年に入ると、8thシングル曲「僕のこと」がリリースされる。「第97回全国高校サッカー選手権大会」の応援歌として書き下ろされたこの曲は、すべての人々の人生を肯定するような壮大なロックバラードだ。努力が報われなくても、孤独に呑み込まれそうになっても、それでも日々を生きていく思いを素直につづった人生賛歌であり、綺麗事ではないミセス流の応援歌だった。メジャーデビュー以降、バンドをどういうふうに見せたいのか、誰に届けたいのかということを意識的に考えてプランニングしてきたミセスであったが、2019年は何を歌いたいのか、何を鳴らしたいのかというバンドの内側に意識を向けていく。

「僕のこと」ジャケット
「僕のこと」
「ロマンチシズム」ジャケット
「ロマンチシズム」

4月には資生堂「シーブリーズ」のテレビCMソング「ロマンチシズム」をシングルリリース。カントリー調のリズムやオルガンの音色、キャッチーなギターリフからなるポップなサウンドに乗せて「愛裏返し 故意に恋する 奴らもそうさ人間さ」と哲学的な言葉で人類愛が描かれる。そして6月には観客に向けて厳重にネタバレ禁止がアナウンスされたライブツアー「The ROOM TOUR」がスタートした。オープニングから大森はヘッドセットを装着して舞台に登場。5人はまるで1つの演劇を展開するように、ステージ上に作られた“部屋”でコンセプチュアルなライブを繰り広げた。このライブはアンコールなしで、激しい雷雨の演出の中「How-to」で終了。バンドのキャリアにおいて、異色とも言えるツアーとなった。

「The ROOM TOUR」大阪・フェスティバルホール公演の様子。

バンドとしての思いを重視した「ENSEMBLE TOUR」以降の流れの中で、4thフルアルバム「Attitude」は完成した。“姿勢”という意味のタイトルを冠するアルバムにはバンドの代表曲の1つとなっているギターロックチューン「インフェルノ」、エキゾチックな雰囲気が漂う「Viking」、複雑なリズムで展開していく「ProPose」、ハウスミュージックのテイストを持つ「CHEERS」、大森の心情がストレートな言葉で反映された「クダリ」や「Attitude」といった楽曲を17曲というボリュームで収録。「サママ・フェスティバル!」発表後のエンタテインメント性を重視してきた流れとは明らかに違うモードで、いずれの曲でも大森の内側にある私情や葛藤、逃れられない孤独、人生観が赤裸々につづられている。10代の自分との“共作”であるという「クダリ」ではそっとつぶやくように心の内を見せ、「でも心のどっかで 助けてほしいんだろうな」と本音をこぼす。タイトルトラック「Attitude」ではミセスの音楽がどのようなものなのか、なぜ音楽を作っているのかを「キャッチーなメロディーに隠れるは そう、偶像」とメッセージ性の強い歌詞でダイレクトに表現する。ミセスの根幹の部分にフォーカスを当て、バンドの本質を提示するようなこの作品は、リスナーに改めて「Mrs. GREEN APPLEとは何か?」ということを深く考えさせることとなった。

「Attitude」ジャケット
「Attitude」

12月にスタートした初のアリーナツアー「ARENA TOUR / エデンの園」では、アルバム「Attitude」の収録曲をはじめ、インディーズ時代からこれまでの楽曲を織り交ぜたセットリストが展開された。ミセスのライブにおいて「ENSEMBLE TOUR」のようにエンタテインメント性を追求した公演と、「ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~」のようにバンドの内側に重きを置いた公演の二面性があるとするのなら、「ARENA TOUR / エデンの園」はそのどちらの側面も含むツアーだったように思える。時には火柱が燃え盛るステージで、時には嵐の中を進んでいく海賊船を舞台に、5人は1曲ごとにその楽曲の本質が最大限に伝わる形でパフォーマンスを繰り広げる。バンドがたどってきた道のり、培ってきたものが刻まれたようなツアーだったと言えるだろう。

「5」ジャケット
「5」

デビュー5周年記念日の7月8日、いよいよ初のベストアルバム「5」がリリースされる。このアルバムには常に多彩なサウンドアプローチを試み、挑戦することを恐れず、大胆に変遷してきたミセスの歴史が記録されている。そして常に世界と対峙し、孤独や苦しみと戦い、人とのつながりを求めてきたバンドの道のりが刻まれている。また、恋人にプレゼントを贈るラブソングでありながら、楽曲を贈るリスナーへの言葉とも捉えられるような「PRESENT(Japanese ver.)」、人々の鈍感さや消極的な姿勢に対して警告する「アボイドノート」、そして「Theater」という3曲の新曲が収録されているのも大きなトピックだ。“フェーズ1”完結となるこのベストアルバムの先に、ミセスはどのような未来を切り開いていくのだろうか。きっとこれからも、何度も彼らに驚かせられるのだと思う。


2020年7月8日更新