Mrs. GREEN APPLE「5」特集|デビュー5周年、ベストアルバムで迎える“ミセス フェーズ1完結”

7月8日にデビュー5周年を迎えるMrs. GREEN APPLEが、同日に初のベストアルバム「5」をリリースする。

“ミセス フェーズ1完結”を意味するベストアルバムには、これまでの作品からセレクトされた16曲に新曲を加えた計19曲を時系列順に収録。バンド初期に発表したライブ会場限定盤「Introduction」に収録されていた「スターダム」の再録バージョンから全9枚のシングルの表題曲、さらには「アボイドノート」「PRESENT(Japanese ver.)」「Theater」といった新曲まで、結成からこれまで勢いよく走り続けてきたミセスの歴史を感じ取ることができる。音楽ナタリーではベストアルバムの発売を記念して特集を展開。年表を軸にバンドの歴史を振り返ってみたい。

文 / 中川麻梨花

2015

鮮烈なメジャーデビュー

2

初の全国流通盤「Progressive」をリリース。

7

ミニアルバム「Variety」でEMI Recordsよりメジャーデビュー。

8月~9

赤色のグリッターとの対バンツアー「赤と緑のホショクツアー」を開催。

9

初のワンマンライブ「Mrs. ONEMAN LIVE ~武装と創と造~」を東京・WWWで開催。

12

1stシングル「Speaking」リリース。表題曲はテレビアニメ「遊☆戯☆王ARC-V」エンディングテーマソングに使用された。

東名阪ワンマンツアー「Mrs. ONEMAN TOUR ~東と名と阪~」を開催。東京・LIQUIDROOMでファイナルを迎えた。

大森元貴(Vo, G)がメンバーを集め、2013年春に結成されたMrs. GREEN APPLE。それから約7年間、ミセスはセルフプロデュースで自らバンドの舵を取り、常に音楽を届けるべき相手や世の中の状況を意識し、時に大胆にバンドの見せ方を変えながら、すさまじいスピードで音楽シーンを突き進んできた。ギターロックからEDMまでジャンルを越えた多様なサウンドアプローチを取り、ライブにおいてはホール会場で壮大なエンタテインメントショーを展開したかと思えば、その直後のライブハウスツアーでは照明を暗く落として、シンプルな演出で音楽を届ける。振れ幅の大きな活動でその都度リスナーを驚かせながらも、彼らの歌の本質には常に一本の強い芯が通っているように思える。

「Progressive」ジャケット
「Progressive」

メジャーデビュー前の2015年2月にリリースされた初の全国流通盤「Progressive」は、そんなミセスの本質が詰まった1枚と言えるだろう。この作品からは全編を通して、人の心の機微や醜さを敏感に感じ取ってしまう、当時18歳にして、どこか達観したかのような大森の感性やそれゆえの葛藤がうかがえる。しかし人との出会いの尊さを歌う「我逢人(がほうじん)」や、現実から目を背けることなく葛藤すらも大切に胸に抱いていく意思を表現した「CONFLICT」など、本作からはそれでも人を愛していきたい、信じていきたいという大森のすべての人々への愛情や世の中へのあきらめられない希望を感じ取れる。そして、その感情は今日に至るまでMrs. GREEN APPLEの作品に一貫して強く根付いているだろう。

「Progressive」発表から5カ月後、バンドはメジャーデビューミニアルバム「Variety」をリリースした。このミニアルバムは前作同様にギターロックを基調としながらも、よりポップさを意識した作品に仕上げられている。「独りじゃないと否定出来るように 明日も唄うんだ」とバンドとしての新たな始まりをキャッチーなメロディに乗せて歌い上げたリードトラック「StaRt」や、周囲に対して感じている違和感を強い言葉で放つ「VIP」、「こんな世界でずっと、生きてゆこうと思うんだ」と真っすぐに世界と対峙する「道徳と皿」などを収めた本作は、ポップなサウンドにくるんで思いやメッセージを届けるミセスのスタイルを提示するような1枚だと言えるだろう。このミニアルバムの評判は早耳のリスナーの間でたちまち広まっていき、18歳の大森が作詞作曲からアレンジまで、デモの段階でほぼすべてを完成させていることも含め、邦楽ロックシーンに鮮烈なインパクトを与えた。

「Variety」ジャケット
「Variety」
「Speaking」ジャケット
「Speaking」

メジャーデビューから2カ月後、9月に東京・WWWで行われた初のワンマンライブ「Mrs. ONEMAN LIVE ~武装と創と造~」のチケットは即完売。自身の持ち場を離れてステージを駆け回り、前のめりで観客を煽る藤澤涼架(Key)を筆頭に、この頃すでに“人を楽しませること”を基調としたライブ作りが行われており、昨今の彼らのステージにつながるエンタテインメント精神が見受けられた。公演の最後に大森が残した「このワンマンが終わったら僕らはパワーアップするので。みんなのMrs. GREEN APPLE像が変わっていくんじゃないかな」という言葉の通り、アンコールで披露された1stシングル曲「Speaking」は、これから羽ばたいていくミセスの新しい可能性を感じさせる楽曲となった。華やかなシンセサイザーの音色を取り入れ、親しみやすい言葉でリスナーに寄り添うこの曲は、彼らと同世代の多くの若者に力を与えたことだろう。

「Mrs. ONEMAN LIVE ~武装と創と造~」の様子。

1stシングルリリース後、12月には初のライブツアー「Mrs. ONEMAN TOUR ~東と名と阪~」が行われた。ファイナルの東京・LIQUIDROOM公演では、EDMに振り切った楽曲「うブ」が初披露され、会場に足を運んだファンは彼らのバンドとしての表現の幅広さを思い知らされることとなる。ボーカルにAuto-Tuneをかけ、ハンドマイクを持ち激しく体を揺らしながら歌う大森や、シンセベースを操る髙野の姿は、オーディエンスを大きく驚かせた。公演の最後、大森は「僕らは有名になりたくて(バンドを)やっています。だから、ずっと見ていてください。大きいところに連れていくので、ずっと応援していてください」と真っすぐな眼差しで述べた。満員のフロアに向かって頭を下げる5人に、観客が大きな拍手で応えたその場面は、その後すさまじいスピードでシーンを駆け上がっていくミセスの物語の序章だった。

「Mrs. ONEMAN TOUR ~東と名と阪~」東京・LIQUIDROOM公演の様子。

2020年7月8日更新