ナタリー PowerPush - 加藤ミリヤ
彼女の孤独と本当の姿
「Ring」は売れる曲やポップなことをやろうと思って作った
──ところで、世間的に加藤ミリヤのイメージとして「ギャル」「失恋ソングが多い」などを挙げる人も多いと思います。ファン層の重なっている他のアーティストとひと括りに考えている人もいると思います。
そうですよね。
──音楽ファンの中に、そういった系統の音楽に根強く嫌悪感を持ってる方とか、聴かずにハナから否定している人がいることって、ミリヤさん自身は認識されてますか？
すごくしてます。なんか食わず嫌いだねって感じです。まあ、でもわかるんですよ。これは自分が撒いた種っていうか。
──自分が撒いた種？
「Ring」っていう20歳のときに出したアルバムがあって。（清水）翔太とコラボレーションした「Love Forever」だったり、「Aitai」っていう曲が入ってるんですけど、あれは完全にリスナー目線だけを意識して作ったアルバムなんです。とにかくまずは私を知らない人たちに届けるために、売れる曲やポップなことをやろうと思って作ったし、曲も難しいことを考えなくても読めばわかるようなものをいっぱい書いたんです。
──へえ、そんな作り方を。
結果自分のキャリアの中でも売れた作品になったし、それまで出なかったテレビにもたくさん出た。そしたら世の中にも「会いたい会いたい」って言ってる曲がどんどん増えていって、いわゆる“スイーツ系”の曲の走りみたいな形になってしまったんです。自分の中で「私は違う」って思っても、結局世間に「この曲もこの曲もミリヤの曲もそういうのの1つ」、そんなふうに受け取られたってことはそういうことだし。アルバムが自分の狙い通りになったことはうれしかったんですけど、あとから「私はそれだけじゃない」と巻き返すのってけっこう難しいな、と今感じてます。あまりにも代償が大きかったとは思う。ずっとそのイメージがすごくついて回る。だから、その分売れたっていうことだと思うんですけど。
──今、ミリヤさんが苦悩しつつもパブリックイメージに対する挑戦を続けていることが、このインタビューで少しでも伝わってほしいですね。
でもこうやって加藤ミリヤの本質を知ろうとしてくれて、そうじゃないんじゃないかって思ってくれる人がたまにいるだけで私はすごい救われる気持ちになるし、まだ諦めないようにしたいなとは思いますけどね。どうしたらいいかなって感じ（笑）。もっとカッコいい女性の象徴になるための努力を今してるつもりです。甘いだけじゃなくて。甘いのはもういいなって感じですし。
「あなたは私からしたらスイーツ」って思う人たちはいっぱいいる
──先ほどご自身で「スイーツ系」と例えましたけれども、「泣きうた」とか「セツナ系」とかいろんな形容のされ方がありますよね。
そうそう。「着うた系」も。
──言われてるほうはまったくいい気分しないですよね。
そうですね。だけど、私からしたら「あなたたちはそうだよね」って思う人たちはいっぱいいるんですよ。「あなたとあなたとあなたたちとあなたたちは私からしたらスイーツ」って思う人たちはいっぱいいる。
──ははは（笑）。
音楽に対する考え方も、取り組み方も、向き合い方も、人それぞれだし、価値観がそもそも違うって思うから。でもそことすべてにおいて似てるってひと括りで言われちゃうのはやっぱり悔しいなあと思います。
──じゃあ今、自分は世の中に正しく理解されているとは思わない？
ぜんっぜん思わないです。全然思わないなあ。周りが「これくらい理解してくれたらいいな」っていうレベルになったことを自分の中で実感するまでは諦めたくないから、それまでは辞めない。そうやって知ってもらう、わかってもらうために、どういう音楽を作ったらいいのかっていうのを考えたいな。
──一度世間に付いたイメージを払拭していくというのは、想像以上に難しいことなんでしょうね。
難しい……。自分の目標は、女性アーティストとして時代を象徴するアイコンになることなんです。例えば安室奈美恵さん、浜崎あゆみさんみたいな、女の子がみんな好きなファッションアイコンに将来的にはなりたいっていう気持ちがあるんですよ。でも、ただ同じ道をたどるんじゃなくて、加藤ミリヤっていうオリジナルの表現を理解されながらそこに到達することはできないのかなってずっと考えていて。カッコよくて、音楽性もちゃんと高くて、そういうのが嫌いな人たちからも「ミリヤはいいよね」って言ってもらえるような存在。自分がそれに少しずつなれたらいいなと思いながら続けていきたいと思ってます。
- ニューシングル「Lonely Hearts」 / 2013年10月2日発売 / Sony Music Records
- 「Lonely Hearts」初回限定盤 [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8359～60
- 「Lonely Hearts」通常盤 [CD] 1300円 / SRCL-8361
CD収録曲
- Lonely Hearts
- Only U
- Aitai (Loneliness Remix)
- Lonely Hearts (Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- Lonely Hearts -Music Video-
加藤ミリヤ（かとうみりや）
1988年生まれ、愛知県出身のシンガーソングライター。2004年9月にシングル「Never let go / 夜空」でメジャーデビューする。その後「ECDのロンリーガール」のアンサーソングである「ディア ロンリーガール」、UA「情熱」をサンプリングした楽曲「ジョウネツ」など話題作を数多く発表。10代女性からの共感を呼ぶリアルな歌詞が魅力で、同年代女性のカリスマとして支持されている。2009年5月には同い年の清水翔太とコラボシングル「Love Forever」を発表し、人気アーティスト同士の共演は大きな話題を集めた。また同年11月には初の日本武道館ワンマンライブを開催。2011年に初のベスト盤「M BEST」でオリコン週間ランキング初登場1位を記録する。2013年10月には、ティーンの悩みに寄り添ったメッセージソング「Lonely Hearts」をリリースした。
