加藤ミリヤ×(空手日本代表選手)喜友名諒×(空手日本代表選手)清水希容|すべては空手のために 「宿命」を背負った者たちへ

東京オリンピックで初の正式種目となり注目を集める、日本(沖縄)発祥の武道スポーツである空手。公益財団法人全日本空手道連盟とのコラボレーションで、加藤ミリヤが書き下ろした全日本空手道連盟公式応援ソング「宿命」が3月24日に配信リリースされた。今作は“闇から光へ”をテーマにミリヤが書き下ろした楽曲で、アレンジおよびプロデュースは常田大希(King Gnu、millennium parade)の実兄・常田俊太郎が担当。また「東京2020オリンピック競技大会」の空手日本代表選手である喜友名諒選手、清水希容選手、植草歩選手の競技する音がサンプリングとして取り入れられている。

加藤ミリヤと空手という接点がないようにも見える今回のコラボはどのように成立したのか。この記事ではミリヤ、喜友名選手、清水選手によるオンライン鼎談の模様をお届けする。

取材 / 松尾衣里子 文 / 丸澤嘉明

空手道 豆知識

14世紀に沖縄で発祥し、1900年代初頭に本土に普及。1957年に第1回全日本大学空手道選手権大会が開催され、これが史上初の空手道の全国競技大会となる。1970年に第1回世界空手道選手権大会が開催され、時を経て2016年8月にブラジル・リオデジャネイロで開かれた第129次IOC総会にて、空手が「東京2020オリンピック競技大会」の追加競技として正式採用されることが決定した。オリンピックで行われるのは演武の正しさを競う「形」と、2人の競技者が互いに空手の技を繰り出すことで勝敗を競う「組手」。2021年8月5〜7日に東京・日本武道館で「男子形」「男子組手-67kg級」「男子組手-75kg級」「男子組手+75kg級」「女子形」「女子組手-55kg級」「女子組手-61kg級」「女子組手+61kg級」の8種目が実施される予定となっている。

加藤ミリヤ×喜友名諒選手×清水希容選手 鼎談

喜友名選手の形に圧倒

──空手は「東京2020オリンピック競技大会」で初めて正式種目となります。今回は公益財団法人全日本空手道連盟と加藤ミリヤさんがコラボされたということで、本日は加藤ミリヤさん、個人形の金メダル最有力候補と言われる喜友名諒選手、そして同じく個人形の女子エース清水希容選手にお集まりいただきました。

一同 よろしくお願いします。

加藤ミリヤ、喜友名諒選手、清水希容選手の鼎談の様子。

──ミリヤさんと空手ってあまり結びつかない印象があるんですが、これまでに何かご縁があったんでしょうか?

加藤ミリヤ いえ、空手の経験なんてもちろん私はないですし、まさかこういう機会をいただけるとは夢にも思っていなかったです。お声がけいただいたときに「え、私?」って思ったくらい(笑)。空手という競技が、今回オリンピックの正式種目に決まって日の目を見るということで、暗闇から光に向かっていくというテーマの応援歌を作りたいとオファーをいただいたんです。私自身も楽曲を作って何かを突破したいという思いがあったので、引き受けさせていただきました。

──お二人は加藤さんが歌うと聞いていかがでしたか?

「宿命」が使用された全日本空手道連盟公式応援動画のワンシーン。
「宿命」が使用された全日本空手道連盟公式応援動画のワンシーン。

清水希容 私は高校生の部活のときに加藤ミリヤさんの「Aitai」を聴きながら練習することもあったので、すごくうれしく思いました。

喜友名諒 私たちからしたら加藤ミリヤさんは大スターなので、この話を最初に聞いたときはビックリしたんですけど、空手を知らない人たちにも興味を持ってもらえると思うので、本当に感謝しているところです。加藤ミリヤさんもこれを機に空手を始めていただけたらうれしいなと思います(笑)。

加藤 いや、喜友名選手の形を見させていただきましたけど、あれを見たらやるなんて言えない(笑)。すごすぎて、感動しました。今回空手の競技音をサンプリングして楽曲に入れたいと思ったんです。それでその録音に立ち会わせていただいたんですけど、レコーディング部屋に喜友名選手と私と録音スタッフ1名だけという環境の中で形を披露していただいて。密室の中で私のためだけに見せてくださっている感じで、本当に圧倒されました。経験したことのない迫力があって、チャンピオンの風格そのものでした。

──競技の音をサンプリングして入れたいというのは、やはり空手とのリンクという意図で?

加藤 そうですね。デビューからサンプリング楽曲を作ってきたこともありますし、この曲は空手を愛する人たちのために作った曲なので、競技音はぜひ入れたいと思いました。だからこの曲には選手の皆さんのパワーがギュッと詰まっていると思います。

見どころが詰まったPV

──ではさっそく、プロモーションビデオを皆さんで観てみたいと思います(※取材タイミングでは未完成だったため一部を視聴)。

「宿命」が使用された全日本空手道連盟公式応援動画のワンシーン。

加藤 PVの中に幼い頃の皆さんの試合の映像があったので、それもちゃんと細かく観たいです。見どころがたくさんある映像なので完成が楽しみです。

清水 実際に撮影したときはどんな感じの映像になるのか全然想像がつかなかったんですけど、自分の想像を超える内容で、しかも“闇から光”というのも描かれている感じがしました。

──喜友名選手は最後のほうに演武されている様子もありましたがご覧になっていかがですか?

喜友名 カッコいい映像に仕上げていただいてありがとうございます(笑)。曲と映像がマッチしていて、自分も完成したものを早く観たいという気持ちが強くなりました。

宿命を背負って生きていく

──タイトルの「宿命」はどういう意味合いで付けたんでしょうか?

加藤ミリヤ

加藤 競技音をサンプリングさせてもらうために喜友名選手とお会いして形を間近で見させていただいた経験が自分の中では大きくて。清水選手とはそのときは会えなかったんですけど、形を見て「宿命」という言葉がすぐに浮かんできました。やっぱり選ばれた人たちだけが感じることだと思うんですよ、宿命を背負って生きていくというのは。私も音楽をやっていることで得たものはたくさんあるし、でも失ったものもたくさんあるかもしれなくて、それでも自分の宿命だと腹をくくって生きている部分があるんです。でも代表選手の方々は国という、私とは比べ物にならないほど大きなものを背負っているので、皆さんがどういう思いで競技しているのかを想像しながら作っていきました。

──曲作りにはいろんなやり方があると思うのですが、今回はまずタイトルを思い付いたということでしょうか?

加藤 タイトルを最初に決めることって私はあまりないんですけど、今回はそうでしたね。

──選手のお二人はやはり空手をやることに宿命みたいなものを感じることはありますか?

喜友名 そうですね。空手を通していろいろ勉強をさせてもらって、今まで人生を歩んできましたが、振り返って考えてみたらそれが自分の宿命だったのかなという感じはします。

清水 楽しいことばかりではないんですけど、その先にある喜びを感じたりとか、そういう経験もたくさんしてきたので、そのために努力することが自分の宿命なのかなと思います。

──タイトルが決まったあとは作詞と作曲、どちらを進めていきましたか?

「宿命」が使用された全日本空手道連盟公式応援動画のワンシーン。

加藤 先に曲のイメージを固めていきました。“闇から光へ”というテーマがあったので最初はちょっとダークな感じで始まって、サビで感情が爆発して選手の方たちが光を浴びる光景を意識して。国を背負う勝負の舞台は長く鍛錬してきた日々の成果をぶつけあうある種お祭りのような舞台だと思ったので、最後はストリングスとかも入れて派手に生を楽しんでいる感じにしたいと思ってサウンドを作っていき、そのあとで歌詞を考えました。

──普段からそこまで曲の構成を考えてから作るんですか?

加藤 ここまでやるのはけっこう特別ですね。あまり制作期間もなかったんですけど、それが逆によかったというか、限られた時間の中で集中して作業できました。選手の皆さんの顔がずっと頭の中にあって、この人たちのために書くというのが明確だったので、何もないところから曲を作るよりもやりやすかったです。