幾田りらの2ndアルバム「Laugh」が1月14日にCDリリースされた。
前作「Sketch」から約3年ぶりのリリースとなる「Laugh」。本作にはテレビアニメ「SPY×FAMILY」シーズン3エンディング主題歌「Actor」、テレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2期オープニングテーマ「百花繚乱」、ABEMA「今日、好きになりました。」の主題歌「恋風」といったタイアップ曲の数々はもちろん、「Cafe Latte」や「タイムマシン」といった新曲、テレビドラマ「パリピ孔明」でEIKO(上白石萌歌)が歌った「DREAMER」のセルフカバーなど、全13曲が収録されている。
YOASOBIのボーカリスト・ikuraとして、2024年に初のドーム公演を成功に収め、2025年にはイギリス・OVO Arena Wembleyにて単独公演を2日間にわたって開催するなど、大躍進を遂げた幾田。ユニットとしての活動と並行し制作してきた「Laugh」には、彼女のボーカリストとして、そしてシンガーソングライターとしての成長が詰まっている。2025年末に行われた今回のインタビューでは幾田りら、そしてYOASOBIのボーカリスト・ikuraという二足のわらじを履いて大切に歩んできた、この3年間の軌跡を詰め込んだ本作の制作について話を聞いた。
また特集後半には、アルバムのDISC 2に収録されるコラボ曲に参加した面々から到着した愛にあふれたコメントも掲載。幾田が今作でカバーしたいきものがかり、加藤ミリヤからのコメントも紹介する。彼女の人柄が伝わるコメントの数々をインタビューと併せて楽しんでほしい。
取材・文 / 岸野恵加
幾田りらとikuraの2足のわらじで走りきった2025年
──幾田さんは2025年の初めに「YOASOBIで吸収したことを糧に、ソロでしっかり勝負する年にしたい」と話していましたが、その言葉を十分すぎるほどに証明した1年になりましたね(取材は2025年12月に実施)。
ありがとうございます。2025年に世に出ていくものがだいたい見えていたので、あえて言葉にするようにしていたのですが、リリースした曲がどう広がっていくかまでは、正直未知数で。アルバムリリースを見据えて1つひとつの楽曲に思いを込めて発表していたので、勢いが付けられたらいいなと思いながら過ごしていました。2025年一発目のリリースだった「百花繚乱」が、初のアニメ主題歌ということもあって、想像以上に多くの方のもとに届いてくれて。さらに4月にリリースした「恋風」もSNSで大きく広がり、びっくりしましたね。曲に引っ張ってもらった1年間でしたし、自信につながりました。
──YOASOBIのikuraとして40公演ものホールツアー(「YOASOBI HALL TOUR 2025 WANDARA」)を回りながら精力的に楽曲を発表していたわけですから、本当にすごいと思います。1年間を振り返って、多忙な中で「できればもっとこうしたかった」という心残りはありますか?
うーん……ないですね。2025年はいろんなことを全うしました! 体はYOASOBIのツアーに置きつつも、その合間に曲を作って過ごして、幾田りらとikuraの2足のわらじを5割と5割ではなく、9割と9割で履くくらいの勢いで走りきりました(笑)。YOASOBIを始めた当初から幾田りらとYOASOBIを同じくらい世間に認知していただいて、楽曲を聴いていただきたいという目標があったので、そこに向けての第一歩を踏み出せた1年にできたと思います。
──「Laugh」は前作「Sketch」から約3年ぶりのアルバムとなります。ちょうど幾田さんが大学を卒業してからの3年間が詰め込まれた作品と言えますが、ご自身としては、どんな作品になったと感じますか。
新曲3曲以外はシングルとしてリリースしてきた楽曲なので、私の3年間の軌跡でもありますし、その時その時で大事にしてきた思想や伝えたいメッセージが各曲に詰まっていて、自分の心の成長もすごく感じるアルバムになったと思います。
──「Sketch」と聴き比べると、ご自身で変化を感じますか?
そうですね。メロディワークや歌詞の紡ぎ方などにシンガーソングライターとしての成長を感じますし、改めて収録曲を見渡すと、「Sketch」を経て自分がやってみたかった音楽的な挑戦を、ジャンル的にも歌声のアプローチ的にもたくさんしてこられたなと感じます。前作以上に、シンガーソングライターとしての貪欲さを感じる作品になっていたらなと思います。
ライブをテーマに書いた初のコライト曲
──特に音楽的な挑戦をした曲を挙げるとすると?
「Actor」はジャズテイストでありながら、幾田りらなりのポップスとして突き抜けた曲にしたいと思ってメロディを作ったのですが、アレンジャーさんがさまざまなパターンでジャジーなムードを表現してくださいました。そして「百花繚乱」も、自分の中にあるJ-POPの型に当てはめすぎないようにいろんなメロディのアプローチをしてみた曲ですね。ほとんどのブロックで転調しているんですけど……。
──かなり高い歌唱スキルが要求される楽曲ですよね。
気が付けば、すごく難しくなってしまいました(笑)。タイアップしたアニメ「薬屋のひとりごと」は先の展開が読めない面白さがあるミステリー作品だったので、そんな気持ちのままライドして聴けるような曲にしたかったんです。それと、普段の私は部屋で1人で作曲するんですが、ダンスミュージックを作ってみたくて、新曲「Latata」では初めてコライトに挑戦しました。
──ゼロからアイデアを出し合ったんですか?
はい。いろいろな曲のアレンジでお世話になっているアレンジャーのKOHDさんと、「こんなコード進行はどう?」など、1つずつ意見を出し合って構築していきました。
──「Latata」はYOASOBIのツアー中に制作した楽曲だそうですが、歌詞にはツアー中に感じた気持ちも反映されているんでしょうか。
そうですね。2025年はライブをたくさんする日々だったので、ライブをテーマに曲を書いてみたいと思ったんです。音楽が鳴っているステージで、私自身はありのままの自分で歌って踊っているけど、みんなにとってもライブがそんな空間であってほしくて。お客さんと目を合わせているときの気持ちを、ファンの方へのラブレターのように表現してみたいと思いました。
──「ただ自分らしくいよう」「素直な自分を愛したいから」という歌詞が印象的でした。ライブのステージは華やかで特別な場所というイメージがあるけれど、幾田さんにとっては等身大の自分を出せる場所なんだな……と。
もちろんステージに立つにあたっては、責任感やいろんな気持ちも抱えているのですが、鳴っている音楽に対して自分が心から楽しいと感じ、それが身体表現になっていくことが前提だと思うんです。その過程は、ものすごく自由なんですよね。皆さんにもそういう私を感じてほしいし、全員が日々抱えているものから解放されて、ただ身を任せて歌ったり踊ったりする場にしたいという思いを曲に詰め込みました。
すべてが未来の大事な糧になる
──ほかの新曲についても聞かせてください。「Caffe Latte」は、韓国ドラマ「明日はきっと」挿入歌の日本語バージョンで、この曲だけ幾田さんの名前が作曲者のクレジットにないですね。
はい。ソ・ドンファンさんとAKMUのイ・チャンヒョクさんが制作されたメロディとトラックが届いて、それに合わせて私が日本語の歌詞を書きました。それを、いつも幾田りらやYOASOBIの英詞でお世話になっているKonnie Aokiさんが英訳してくださった詞で歌ったものを、ドラマの挿入歌として使用いただいています。アルバムには日本語バージョンを収録しました。
──そうした制作過程も、幾田さんにとっては珍しかったのでは?
確かに、なかなかないプロセスですごく楽しかったです。デモには言葉にならないくらいのニュアンスの仮歌が入っていたんですが、「この母音に合わせてほしいのかな?」「このメロディはどういう思いで作られたんだろう?」と想像を膨らませながら言葉を紡いでいきました。自分からは出てこないメロディに詞を当てはめることで世界が広がって、シンガーソングライターとして多くの刺激をいただきましたね。
──AKMUの楽曲のような卓越したメロディセンスが光っていて、聴き心地のいい1曲です。普段の幾田さんの歌詞とはまた違ったテンポ感が生まれている気がします。
さすがチャンヒョクさんですよね。メロディは跳ね感があって楽しい雰囲気だけど、温かさと柔らかさも感じて。そこからインスピレーションを受けて、甘さと苦味が同居するカフェラテに重ねた恋愛模様が浮かびました。12月にリリースされたZICOさんとのコラボ曲「DUET」でも、私のパートは自分で歌詞を書いたんです。ほかのアーティストさんのグルーヴに自分の声と言葉を乗せると、自分の引き出しにはないものが出てくるので、こういう体験は今後も大事にしていきたいですね。
──そしてアルバムの最後を飾る「タイムマシン」は一見ラブソングに感じますが、人生や夢への思いを歌ったようにも思えました。こちらはいつ頃、どんな思いで制作した楽曲なんでしょうか。
この曲は最後の最後、締め切りギリギリにレコーディングした曲です。誰しも「やり直せたらいいな」と考えることってあると思うんです。でも少し時間が経つと、いろんなことが整理できて、「経験したことすべてが、自分の人生にとって必要なことだったのかもしれない」と前を向けることもある。自分も「Sketch」からの3年間で、仕事でもプライベートでもいろんな経験をしてきたけど、もしタイムマシンがあったとしても、これまでの経験をなかったことにしたくないし、すべてが未来の大事な糧になる。そう思える人生でありたいという思いを表現しました。
──幾田さんの人生観が詰まった1曲なんですね。ファンの方の感想で「活動初期の楽曲のような質感を感じた」という声をけっこう見かけたのですが、ご自身としてはそこは無意識でしたか?
自分では全然意識していなかったので、そういう感想をいただいて興味深かったです。でも確かに、「タイムマシン」はひさびさに歌詞先行で、あとからメロディを付ける作り方をしたんですよね。最近は言葉を付けずに鼻歌でメロディを考えて、そこに歌詞をはめて曲を作っていくことがほとんどなのですが、歌詞先行のやり方は初期の頃に自分がしていた作り方と似ていて。心が先にある作り方というか。
──なるほど。だから言葉がストレートに胸に刺さる感覚があるのかもしれないですね。最初に浮かんだ歌詞はどの部分でしたか?
1番サビの「もし タイムマシンが本当に この世界にあったら 全部なかったことに できる魔法があったら」という部分です。1年くらい前から書き溜めている詞の中にあったフレーズをもとに、ピアノを弾きながらAメロ、Bメロと作っていきました。
次のページ »
タイトル「Laugh」に込めた思いとコラボ曲について




