リクエストに応えるために

──その場でもらったリクエストに柔軟に答えられるのがすごいですよね。

いやいや！ いや私ね、すごい歌いたがりなんですよ（笑）。例えば友達が家に泊まりに来ると、部屋に置いてあるギターを見て「弾いて」って言ってくれるんですけど……そう言われると、私うれしくて弾いちゃうんですよー！（笑） そういうときにも「あの曲歌って」って、流行りの曲をよくリクエストされるので……。

──でも曲をたくさん知っていないと、リクエストにすぐに反応できないじゃないですか。

普段から音楽はすごく聴くのでそれを覚えていたり、あとはリクエストを頂いたときのために「この曲は聴いておこうかな」って意識的に聴くことも多いですね。

──人気のある曲のCDは「みんなこの曲は好きかな」って手に取ってみたり？

そうですね。それはあります。

──そうやって知識が増えていくんですね。ツイキャスでリクエスト曲のカバーをしている中で、特にうれしかった反応ってどんなものですか？

そうですね……カバーって、賛成派と反対派がいると思うんです。「やっぱり原曲のほうがいい」って思う人もいると思うんですけど、「苑子ちゃんバージョンもめっちゃいいね」って言ってもらえると自信になりますね。

──なるほど。そのようなファンの方とのやりとりって、自分の音楽を作っていくときに影響を与えるものですか？

めっちゃ影響あります！ 自分の曲のリクエストをもらうことも多いんですが、よくリクエストをもらう曲については「ああ、この曲はみんなにとって『いい曲』なんやな」って思うし……。

──みんなが好きな曲の傾向をそこで知れると。

そうですね。「みんなこういう曲が好きなんだ、なるほどな。それだったらこれからもこういう感じで作っていこう」って思いますね。

等身大の歌詞を書く秘訣

──先日リリースされたメジャー1stシングルのタイトル曲「だいすき。」はポップなラブソングですが、この曲もそういった普段からの調査結果を参考に作られたんですか？

もちろんそうですね！ 私の曲をよく聴いてくれるのは同じ世代の女子高生のみんななんですけど、女子高生に「いいな」と思ってもらえる曲って、情景が思い浮かびやすい歌詞だったり、恋愛をテーマにしたものなんですよ。私自身もそういう曲が好きだし。だから自分も共感できるような曲にしようと、恋愛ソングをテーマに作っていきました。

──具体的にはどうやって曲作りを進めるんですか？

まずキャラクターを置くんです。「私」っていうキャラクターがいて、相手役は私がすごく好きなマンガの男の子。いっつもその子を主人公にしちゃうんですよね……（笑）。その男の子はさわやか系の、サッカーができそうな子っていう設定なんですけど、今回は寝坊とかしちゃうような、ちょっと抜けてる要素も入れてみました。そんな感じで2人のストーリーを作っていって、曲を書いて……という流れですね。

──いつも理想の男の子がいるんですね。

そうなんですよ。もう大好きなんです！ その子のことを考えるとキュンキュンしちゃって！

──そのマンガのキャラクター、教えてもらっても？

「ストロボエッジ」の蓮くんです！ 私、咲坂伊緒先生の画がすごく好きで……新作に出てくる男の子もまたすごくいいんですよー。この間、その新作の男の子のパネルと一緒に写真撮ってきたんですけど、もうガチテレしちゃって……！（笑）

──そうなんですね（笑）。そしてカップリング曲の「メリーゴーランド」は、「だいすき。」よりも女の子と男の子の距離が遠くて、ちょっともどかしい感じの恋愛模様が描かれていますね。

そうなんです。この曲では「私」の設定を変えて歌詞を書きました。すごく内気で、好きな男の子と目も合わせられないし、しゃべることもできない女の子っていう設定ですね。

──井上さんの曲には同世代の女の子が共感できるような等身大の歌詞がいっぱい並んでいるから、井上さんは恋愛のことで友達から頼りにされるんじゃないかな？ と思ったんですが、実際どうですか？

ああ、めっちゃ相談受けますね。そしてそれをめちゃくちゃ作品のネタにしてる！ だからありがたいんですよ（笑）。それに私、恋愛相談を受けるのが大好きで！ さっきもLINEでずっと友達の話を聞いてて……。そう、今、友達カップルの両方から相談受けてるんですよ。そーれがもう、楽しくて楽しくて！（笑）

──そのカップルがどうなるかは井上さん次第じゃないですか（笑）。

そう。そこをね、私、うまーいことコントロールするんですよ（笑）。「大丈夫やから」って言って。楽しいですね。そういう友達の悩みも、歌詞に反映させられるのでありがたいです。

井上苑子を近くに感じてほしい

──7月にアルバム「#17」でメジャーデビューしてから4カ月が経ちました。メジャーデビュー後の活動を振り返って、いかがですか？

6月まではメジャーデビューというのが何かわからなかったというか。うれしかったしウキウキはしてたけど、実際どうなるかっていうのはホンマにわかってなかったんです。でもこうして4カ月経って、最近は渋谷とかでファンの方に声をかけていただけるようになって。「知ってくださる方が増えたなあ」って実感して、ありがたいなと思っています。

──ファンの方とのコミュニケーションで、変化した部分ってありますか？

昔はライブにもお客さんが全然いなかったので、物販のときにファンの方と死ぬ程しゃべれたんですよ。「こっちもさすがに話尽きたなあ」って思うくらい（笑）。だけど、今では「ありがとうございます、ああ、ありがとうー！」って感じで、お話もひと言くらいで終わってしまって、直接話すことがなかなかできなくなっちゃって。でも、たとえ短時間でも井上苑子のことを近くに感じてほしいっていう気持ちが強いので、コミュニケーションを取れるときはできるだけ近くに感じてもらえるように、フレンドリーにいこうって思っています。

──そうしたら、「Listen with」のようなイベントは本当に大切な時間になりますね。

いやあ、本当に！ ありがたいです。みんな参加してほしいなあ。