初々しい恋心なんて、自分は持っちゃいけないと思っていた
──で、問題は次の曲です。ここまで4曲通してロックシンガーとしてのLiSAさんをこれでもかと見せつけておいて、5曲目「JUMP!!」はアイドルソング的なキラッキラしたポップチューンで、この落差がすごい。
ですよね(笑)。でも、やっぱりガチャガチャしてる感じと言うか、“BLACK(=ロック)”があって“PiNK(=ポップ)”があるのが今まで積み重ねてきたLiSAの魅力でもあるし、私は楽しいことを見つけるのも得意だと思っていて。だからこういう明るい曲、未来に希望しかない曲も入れたかったんです。
──「JUMP!!」は、好きな人ができて舞い上がっている女の子の歌ですよね。とりあえず今はポジティブなことしか考えられないっていう。
そうそうそう。始まったばっかりの恋に対してドキドキしてて、好きになった人に近付くために作戦を練ってるところ。そういうちょっと恥ずかしい気持ちも素直に歌えるようになりましたね。
──作詞は古屋真さんですが、それにしてもさっきまで「貴方に堕ちてしまった」と嘆いていた人が、「ひとり背伸びで まぶたを閉じて キミの高さは これくらい? 届くかな くちびるに 届くかな」って、どの口が言ってんですかっていう(笑)。
古屋さんに言わされてます(笑)。でも、こういう初々しい恋心っていうのも、私の中ではデビルな感情というか、絶対に自分は持っちゃいけないと思っていたんです。「だって、期待したっていいことないじゃん」みたいな。
──そんな自分も、認められるようになったと。
そういうことです。
今までの自分だったら絶対に書かないラブソング
──作曲家に注目すると、ロックな「LOSER」と「the end of my world」がカヨコさんで、ポップな「JUMP!!」と次の「狼とミサンガ」がagehaspringsの野間康介さんなんですよね。
そうそう。だから落差が激しいんですよ。たぶん一番遠い2人ですから。
──で、「狼とミサンガ」も、前2曲とは違うタイプのラブソングで、パートナーに対して小さな不満はあるものの全体として許容できている、余裕のある女性の歌。作詞はLiSAさんです。
絶対に、今までの私なら書かない詞ですね。私、昔から恋愛映画とかもダメなんですよ。観てて「ふわー、寒い!」って思っちゃって。でも、そういうのが大好きな友達がいて、その子に付き合って観ているうちに、私が恋愛映画が嫌いなのは、どこかでそれをうらやましく思ってしまう自分がいるからなんじゃないかって気付き始めて。
──それ、超わかります。「自分はこういう映画は嫌いなはず。だけど、うっかり感動しちゃったらどうしよう?」みたいな。
そうそうそう。ようやく、そういう感覚も受け入れらるようになりました。
──LiSAさんは、このアルバムを「アナログなアルバムにしたい」とおっしゃいましたが、「狼とミサンガ」はそれを体現するような、バイオリンをフィーチャーしたオーガニックなアレンジになっています。かつちょっとメルヘンチックで、「NHK みんなのうた」のために書き下ろした「リングアベル」(「Catch the Moment」カップリング曲)の延長にあるような曲ですね。
ホントにその通りで、今まではこういうタイプの曲って、歌ってる気がしなくて。なんか、(両手を広げて)「ハアーッ!」ってやるのが、私にとって歌だったんですよね。だから「リングアベル」にもちょっと苦手意識があったんですけど、それをみんなが好きになってくれたことで「こういう歌も歌っていいんだな」って、また1つ枷が外れた気がします。しかもこれ、ギターじゃなくてマンドリンを使ってるんですよ。ほかにもカホンとか、見たこともない楽器の音がたくさん入ってて。
──エスニックな匂いがしたのはそれなんですね。自給自足的なコミューンで演奏されているような。
そうそう。電気が通ってない感じで、みんなでキャンプファイヤーでも囲んでるイメージを、野間さんにはお伝えしました。
──歌詞について蒸し返しますけど、やはり「貴方に堕ちてしまった」と言っていた人が、ここでは「もしもこわい狼に食べられたら お腹の中 二人暮らそう」って……。
狼よりもむしろその発想のほうが怖いですよね(笑)。
──確かに(笑)。とは言え、そもそもLiSAさんのディスコグラフィにはラブソング自体が少なかったので、余計にこの書き分けに驚きました。
ラブソングはやっぱり、なんか痒くて(笑)。特に「狼とミサンガ」は、何回も書き直して、1回レコーディングしたあとに「あー、ダメだ。まだ痒いわ」みたいになって、サビの歌詞を差し替えて録り直させてもらいましたからね。
──でも、そこまでしてでも、このタイプのラブソングを歌うってことなんですね、今は。
そう。
LiSAっぽいサウンドの作り方
──7、8曲目は、いずれもシングル曲の「Rally Go Round」(2015年5月発売)と「Empty MERMAiD」(2015年9月発売)が続きます。ここでもひたすらアッパーな前者に対し、思い切りドロップチューニングしたどヘビーな後者と、好対照な2曲を並べていますね。
「Rally Go Round」はリリースした当時は“PiNK”な曲だったんですけど、ライブを重ねるうちに徐々に“BLACK”寄りになってきて。セットリストでも加速したいポイントに配置する曲に育っていったので、メタル寄りで超“BLACK”な「Empty MERMAiD」と並べても負けないなって。「狼とミサンガ」でふんわりしたあとに、「Rally」でみんなが知ってるいつものLiSAにギアチェンジする感じですね。
──その勢いのまま、9曲目のダンスチューン「Peace Beat Beast」になだれ込むと。作曲の南田健吾さんはagehasprings系列のonetrap所属の方ですが、ご一緒するのは初めて?
初めてです。やっぱり南田さんも「LiSAちゃんに合いそうだから」って曲をくださって。すごくいい曲だったので、アレンジの江口(亮)さんに「もうちょっとLiSA色を足してください」とお願いして、作詞の古屋さんに「もっともっとLiSAっぽくしてください。そしてライブでみんなが楽しくなる曲にしてください」と。
──そのアレンジにおける“LiSA色”って、言語化できます?
まず、サウンドを尖らせるというか、はみ出させる。南田さんからいただいたデモは完璧なダンスサウンドだったんですけど、LiSAが歌うには整いすぎてる気がしたんです。それを、江口さんがちょっといびつなリズムパターンだったりギターリフで崩すみたいな。逆に、「Rally」や「Empty」のアレンジをしてくださったakkinさんは、はみ出しすぎたギザギザをほどほどに整えてくれる人だと思ってて。曲に応じて粘土をこねるみたいにして、LiSAの音に寄せていく感じです。
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LiSAの役目をちゃんと背負わせてくれる人
- LiSA「LiTTLE DEViL PARADE」
- 2017年5月24日発売/ SACRA MUSIC
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Blu-ray付き初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc]
4104円 / VVCL-1040~1 -
DVD付き初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / VVCL-1042~3 -
通常盤 [CD]
3240円 / VVCL-1044 -
完全生産限定盤 [CD+Blu-ray+ラバーブレス]
5400円 / VVCL-1045~7
- CD収録曲
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- LiTTLE DEViL PARADE
[作詞:LiSA / 作曲・編曲:PABLO a.k.a. WTF!?] - Catch the Moment
[作詞:LiSA / 作曲:田淵智也 / 編曲:江口亮] - LOSER ~希望と未来に無縁のカタルシス~」
[作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:江口亮] - the end of my world
[作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:堀江晶太] - JUMP!!
[作詞:古屋真 / 作曲・編曲:野間康介(agehasprings)] - 狼とミサンガ
[作詞:LiSA / 作曲・編曲:野間康介(agehasprings)] - Rally Go Round
[作詞:LiSA、古屋真 / 作曲:じん / 編曲:akkin] - Empty MERMAiD
[作詞:LiSA / 作曲:YOOKEY(THE MUSMUS) / 編曲:akkin] - Peace Beat Beast
[作詞:古屋真 / 作曲:南田健吾 / 編曲:江口亮] - Blue Moon
[作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:akkin] - Brave Freak Out
[作詞:田淵智也 / 作曲・編曲:高橋浩一郎] - TODAY
[作詞:LiSA / 作曲:小南泰葉 / 編曲:akkin] - そしてパレードは続く
[作詞・作曲:田淵智也 / 演奏・編曲:東京スカパラダイスオーケストラ / ホーンアレンジ:北原雅彦]
- LiTTLE DEViL PARADE
- DVD / Blu-ray収録内容
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- LiTTLE DEViL PARADE -Music Clip-
- Catch the Moment -Music Clip-
- Brave Freak Out -Music Clip-
- Hi FiVE! -Music Clip-
- 完全生産限定盤 Blu-ray収録内容
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- LiTTLE DEViL PARADE -Music Clip-
- Catch the Moment -Music Clip-
- Brave Freak Out -Music Clip-
- Hi FiVE! -Music Clip-
- TODAY in L.A.the movie
- LiSA「LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~『そしてパレードは続く』」
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- 2017年9月24日(日)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2017年9月30日(土)長野県 ホクト文化ホール
- 2017年10月1日(日)石川県 本多の森ホール
- 2017年10月7日(土)岐阜県 長良川国際会議場
- 2017年10月9日(月・祝)静岡県 静岡市民文化会館
- 2017年10月15日(日)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
- 2017年10月21日(土)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
- 2017年10月28日(土)栃木県 栃木県総合文化センター
- 2017年11月3日(金・祝)香川県 サンポートホール高松
- 2017年11月9日(木)東京都 中野サンプラザホール
- 2017年11月18日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2017年11月19日(日)福岡県 福岡サンパレス
- 2017年11月24日(金)北海道 わくわくホリデーホール
- LiSA(リサ)
- 6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」1stシーズンのオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン《アインクラッド》編」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。また「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「Animelo Summer Live」「氣志團万博」などさまざまな大型音楽イベントに出演し個性を発揮している。2017年春にはオリジナルブランド「YAEVA MUSiC」を設立。5月に通算4枚目となるフルアルバム「LiTTLE DEViL PARADE」をリリースした。9~11月にはアルバムを携えてのライブツアー「LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~『そしてパレードは続く』」を行う。