ナタリー PowerPush - LiSA

“LiSA語録”からその素顔に肉薄! 追跡「best day, best way」への道

世界を巻き込むオリーブの樹

──LiSAさんの考えるLiSA像と田淵さんの考えるLiSA像にはギャップはなかった?

ギャップはなかったんですけど「私だったら絶対に使えないな」って言葉が2つだけありました。1つは「世界中を巻き込んで」なんですけど、私にはさすがにそこまでのことは言えない(笑)。

──でも実際に去年インドネシアやロサンゼルスのアニメのフェスに出た際に「現地の人が日本語で自分の歌を大合唱してくれたことに感動した」とも言っている。十分巻き込んでますよ、世界(笑)。

LiSA

うーん……。歌うときの私は「LiSA」なんだけど、詞を書く私は「その中の人」なんですよ。LiSAは今とっても自信にあふれていて、すごい勢いで突き進んでいるんですけど、中の人はまだちょっと自分を信じられていない。LiSAになりたい人なんです。なのに、中の人のこともある程度は知っている田淵さんがこういう詞を書いてくださったのがすっごくうれしくて。「世界中を巻き込んでいいんだよ」って背中を押してもらえたのかな、って。

──もう1つの絶対に使えない言葉って?

「オリーブの樹」。私の本名に由来しているんですけど、こういうフレーズをポンと入れちゃう田淵さんってホントスゴいな、ってビックリしました。

──しかも「オリーブの樹」は「何も言わず隣り合って 未来へ渡す命をくれる」存在ですからね。

それもうれしくて。この曲を作り始めるとき田淵さんは「今度の曲はタイアップのない、LiSAちゃん自身の曲。だから今のLiSAちゃんにしか歌えないものを作ろう」って言ってくれて。その上で私を「未来へ渡す命をくれる」「オリーブの樹」に例えてくれたんです。

──その「LiSAさんの曲」だからか、サウンドも「oath sign」や「crossing field」とは違う。LiSAさんのルーツに近い、パンキッシュなものになってますよね。

タイアップ先はLiSAですから(笑)。でもルーツともちょっと違って。「自分のやりたいことをやっちゃえ!」っていう意味では「Letters to U」もそうですから。

──どちらも同じくメロコアの影響下にある音にはなってるんだけど、明らかに肌合いは異なりますね。

そうなんです。「Letters to U」を作ってから2年、「crossing field」や「oath sign」なんかも歌わせていただけるようになった今のLiSAのサウンドを出したかったので。

──ルーツではなくむしろ最新型。2013年春モードのLiSAだと。

そうですね。

"Rock star" LiSAが今できる精一杯のこと

──2曲目「I'm a Rock star」の詞はLiSAさんと古屋真さんの共作。なんですけどその内容は「世界中を巻き込んで」以上にタフですよね。

そうですか?

──威勢のいいギターロックをバックに「私はロックスターだ」って言っているわけですから。OASISは1stアルバムの1曲目「Rock 'n' Roll Star」の中で「Tonight, I'm a rock n roll star.」って歌って、本当にロックンロールスターになってみせた。「I'm a Rock star」で歌っていることって「Rock 'n' Roll Star」と同じことなのかな、って。

LiSA

そのお話を覆してしまうようでとっても申し訳ないんですけど(笑)、私自身は「ロックスターだぜ!」なんてとても言えないなって思っていて……。

──あれっ!? なのになぜ「I'm a Rock star!」って歌っちゃいました?(笑)

そうならなきゃとは思っているので。私の中でロックスターっていうのは、それこそOASISだったり、アヴリルだったり、GREEN DAYだったり、誰かに期待されて、憧れられて、元気をあげられる人のことなんです。

──まさに2013年のLiSAさんが目指すべき姿ですね。

だからもし私に期待してくれている人がいるなら、私はその誰かにとってのロックスターでありたいなっていう気持ちで「I'm a Rock star!」「無敵に変われた」「誰も邪魔はさせない」っていう強い言葉を詰め込んでみました。で、サウンドはアメリカのスクールロック的な感じ。「『ロックといえばこれでしょ!』って音にしてください」ってお願いしてみました。

──結果「best day, best way」よりもさらに陽性。ピアノやストリングスも入った派手なビートナンバーに仕上がった、と。

そういう音にしようと思ったのは、去年の夏、ロサンゼルスに行ったからで。ロスってGREEN DAYとかBLINK182みたいな私が大好きなバンドの地元、憧れの場所だったからホントにうれしくて。しかも実際に行ってみたら、これまでミュージックビデオとか雑誌の中でしか観たことなかったような光景が広がってたんです。砂漠がバーッと広がっていて、そのど真ん中に道がドーンと走ってたりして。ホントに「カリフォルニア!」って感じだったんですよ(笑)。

──ベタな西海岸の光景が広がっていた、と。

その道をクルマで走りながらノラ・ジョーンズを聴いてみたら、ホントに気持ちよくて(笑)。だからそのとき感じたストレートな気持ちよさを曲にしてみました。

──そして「best day, best way」と「I'm a Rock star」が「LiSA」さんの歌であるのに対して、3曲目の「シロイトイキ」は「LiSAの中の人」の歌ですよね。

そうですね。今の私って本当に幸せなんだと思うんですよ。私自身「今日もいい日だ」っていう自分の言葉を素直に信じられるようになって、その私のことを信じてくれる人たちがいてくれて。でもライブなんかが終わって1人の部屋に帰ってくると、やっぱりちょっと寂しくなっちゃって。それは私だけじゃなくて、きっとみんなもそうなんですよね。

──そうでしょうね。どんなに大騒ぎしていても、ふとした瞬間に心の中に妙な寂しさが差し込むことって誰にでもあるはずですから。

そういう寂しさを抱えている人に私ができることってきっと「いつしか誰かの手を温めてくれるような 歌」を歌うことなんだろうなって。

──「今日は最高だ」と歌い、誰かのロックスターでありたいと願うLiSAさんが具体的に何をするのかを示した、ある意味「best day, best way」「I'm a Rock star」の回答にもなっている?

そうかもしれませんね。この2年間でようやくできあがった、中の人がなりたかったLiSAに今できる精一杯のことを歌ってみたつもりですから。

LiSA
ニューシングル「best day, best way」 / 2013年4月3日発売 / アニプレックス / 完全数量生産限定盤 [CD+DVD+小冊子] / 2940円 / SVWC-7932~4
完全数量生産限定盤
初回限定盤 [CD+DVD] / 1680円 / SVWC-7930~1
初回限定盤
通常盤 [CD] / 1260円 / SVWC-7935
通常盤
CD収録曲
  1. best day, best way
  2. I'm a Rock star
  3. シロイトイキ
  4. best day, best way(Instrumental)
完全数量生産限定盤DVD収録内容
  • I’m a Rock star ミュージッククリップ
初回限定盤DVD収録内容
  • best day, best way ミュージッククリップ
LiSA(りさ)

6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春にはテレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。Girls Dead Monsterでの活動が好評を博し、2011年4月にはミニアルバム「Letters to U」でLiSA名義によるソロデビューを果たす。2013年4月3日に3rdシングル「best day,best way」をリリース。