「どうやら俺らのやり方は間違ってるかもしれない」

──確かにデビュー直後のライブって、今と全然雰囲気が違ってましたよね。ずっと下を向いて演奏しているイメージだったというか。

カナタ　混沌としてましたよね（笑）。

ヤマモト　「俺たちカッコいいやろ！ 聴け！」みたいな感じだったかも。

タナカ　確かに。煽ることもしてなかったし、むしろダサいと思ってたんですよね。煽ったり、一体感を求めないところに美学を感じてしまっていたというか……。ただ、ある時期から「そこが自分たちのライブのゴールではないな」ということがわかって。

──そういう意識の変化は、何かきっかけがあったんですか？

タナカ　やっぱり「Wait?」以降じゃないですか。

カナタ　うん。お客さんに歌ってもらうということを全然やってなかったんですけど、やり始めると「こういう一体感の作り方があったんだ！」っていう（笑）。

ヤマモト　思うような結果が出ない中で、「どうやったら伝わるんだろう？」って本気で考え始めたんですよね。詞、曲、パフォーマンスを含めて、「どういう意志を持って伝えていくか？」という課題を見つけて……。やっぱり、（タナカの）ケガ以降はよく考えるようになったし、4人で話すようになりました。

タナカ　逆に自分たちが思うような結果が出ていたら、変える必要はなかったかもしれないし。

──ちょっと聞きづらいですが、LEGO BIG MORLは曲のクオリティも高いし、演奏もうまいし、ルックスもいいのに、どうして売れないんだと思いますか？

タナカ　……今日、3本目の取材なんですけど、それを言われるのは3回目です（笑）。

ヤマモト　よく言われますね、ホントに。

タナカ　その原因は誰もわかってないと思います（笑）。ただ、途中で「どうやら俺らのやり方は間違ってるかもしれない」というのはわかったんですけどね。そこから試行錯誤が始まって、その後、僕がケガして。考える時間がたくさんある中で「Wait?」や「RAINBOW」という曲ができて、少しずつ心がオープンになっていって、今のいい雰囲気につながっているのかもしれないですね。あとはもう、結果だけです！

ヤマモト　うん（笑）。10年続けてきたからこそ、そういうふうに思えるようになってきたんだと思うんですよね。結果が伴わなかったというのは事実だけど、そこで培ってきた経験、葛藤が9年目、10年目でようやく生かせるようになったと思うので。

──サウンドやステージングの変化に伴い、歌詞もよりシンプルになってきた印象があります。

タナカ　誰にでもわかるように簡単にするのではなくて、まず「こういうライブをやりたい」「ここにゴールしたい」という目標があって、そこに向かって言葉を選ぶようになったんだと思います。僕らがやっているキャパのライブハウスだったり、もうちょっと広い会場を想像しながら、「キンタがこの言葉を発したとき、どう響くだろう？」ということをイメージして。シンプルにしたいけど、安易にはしたくないっていうことですね。

──カナタさんはどうですか？ 歌に対する意識もかなり変わってきたと思うのですが。

カナタ　そうですね。以前は「ボーカルも楽器の1つ」という意識だったんですが、今はなんて言うか、“ザ・ボーカル”という感じなんですよ。わかります？

アサカワ　言いたいことはなんとなくわかる（笑）。

カナタ　ヒロキが書く歌詞のメッセージ性もどんどん強くなってるし、ライブやレコーディングを通して、しっかり気持ちを込めたいと思うようになりましたね。

今が一番いい状態

──「Blue Birds Story」「傷」という新曲が収録されているのも、このベスト盤のポイントだと思います。2曲ともLEGO BIG MORLのこの先の展望が感じられる曲ですよね。

タナカ　はい。そのためにこの2曲を入れたといっても過言ではないので。ただの区切りというか「10周年おめでとう」というだけのベストにはしたくなかったんです。「こんなにカッコいい新曲があるんだったら、またライブに行きたい」とか「新しいアルバムが楽しみ」というふうにつないでいきたいですからね。僕自身はこの2曲が入っているというだけでも、ベスト盤を買う価値があると思ってます。「Blue Birds Story」はすでにライブでやってるんですけど、「やっぱり間違いないな」と思えるいい景色が生まれつつあるんですよ。

──「こういう景色を作りたい」というイメージを持って新曲を制作し、それが実現するのはバンドにとって一番の手応えを感じられる瞬間ですよね。

ヤマモト　うん、それが一番ですね。

カナタ　いつもイメージしながら曲を作ってますからね。

タナカ　想像している光景をいい意味で超えていきたいとも思うし。

──この先の活動のビジョンも見えてる？

カナタ　まず、今が一番いい状態だと思うんですよ。内側のテンションも外側の状況も。この状態を継続しながら、高めにハードルを設定して、それを4人で超えながら大きくなっていきたいと思いますね。

タナカ　自分たちの状態もそうだし、バンドシーン全体の流れも俺らにとっていい感じになってると思うんですよね。お祭り騒ぎの時代が変わってきて、歌がしっかり立っているバンドも増えているし、シティポップ感のあるバンドも目立ってるじゃないですか。僕らもどちらかというとクールなイメージのバンドだと思うので。出身は田舎なんですけど（笑）、いい流れなんじゃないかなって。自分たちの10周年とシーンの変化を追い風にして、どんどん進んでいきたいですね。

──期待してます。個人的には今の100倍売れても不思議じゃないと思ってるので。

タナカ　それしっかり書いておいてください（笑）。

カナタ　100倍っていったら、日本で5本の指に入りますよ。

ヤマモト　ライブの動員が1000人だとしたら、10万人だからね。

──そうなったら東京ドーム2DAYSですね。

カナタ　うわーやりたいっすね！ ……もうイメージできました！

タナカ　早いな（笑）。皆さんにいい景色をお見せできるように、これからもがんばりますよ。