LEGO BIG MORL「kolu_kokolu」特集|15年のキャリアを糧にした再メジャーデビューを語る

LEGO BIG MORLがニューアルバム「kolu_kokolu」をリリースした。

メジャー復帰第1弾作品となる「kolu_kokolu」は、バンドの結成15周年を記念したアルバム。昨年配信された「潔癖症」「愛を食べた」のリマスタリングバージョンや新曲など全10曲が収録されている。

この特集ではLEGO BIG MORLが歩んできた15年の歩みとともに、再びメジャーの世界に戻る決意を固めた経緯や、メジャー復帰作となる「kolu_kokolu」に込めた思いについて話を聞いた。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 斎藤大嗣

「あ、15年ですか」

タナカヒロキ(G) (アルバムパッケージを手に取りながら)これ、僕らも今日初めて見ます。

カナタタケヒロ(Vo, G) やったー、いよいよだ! うれしいねー。

タナカ 全国流通はひさしぶりなんですよ。

──2017年リリースの5thアルバム「心臓の居場所」以来ですからね。

カナタ ホンマや。どんどん実感してきたぞ……!

LEGO BIG MORL

LEGO BIG MORL

──前回のインタビューは2016年、結成10周年を記念したベストアルバム「Lovers, Birthday, Music」をリリースしたときでしたが(参照:LEGO BIG MORL「Lovers, Birthday, Music」特集)、LEGO BIG MORLは2021年3月に結成15周年を迎えたんですよね。

タナカ はい。僕らとしては「やっと15年や!」というよりかは「あ、15年ですか」という感じです。10周年のときは区切り感がありましたけど、今はあの頃より大人になっているし、お祭り気分ではない。でも、ちゃんと歴史を背負ってはいるし、この先を冷静に考えています。

カナタ 僕ら2017年にインディーズに戻って、2019年には自分たちの事務所を作ったので、ここ数年はDIYな感じで活動していたんです。メジャーでの過去10年間は恵まれた環境にいたので、スタッフに甘えてしまっていた部分もあったんですよ。メンバーが抜けたり、いろいろなことがありましたけど、自分たちの足で一歩ずつ、足跡を残しながら歩けているなあとここ5年でようやく実感できるようになったところです。

タナカ 15周年を“苦労”とか“栄光”というふうに捉えるのは簡単やけど、僕らとしては自分たちでちゃんと考えて、自分たちで判断して……という本来は普通なのかもしれない動きを、不器用な僕らなりにできるようになるためにそれだけの時間が必要やったんです。

ヤマモトシンタロウ(B) そんな中で再メジャーデビューの話をいただいて。すごく満足のいくアルバムができましたし、15年分の気持ちを持って、今の自分たちのよさをしっかり考えたうえでもう一度メジャーに挑戦しようという気持ちです。

──今振り返れば、15周年の1年間はインディーズ最後の1年間でもあったんですよね。配信シングル「潔癖症」「愛を食べた」のリリース、全国ツアー「十五輪」の開催、カナタさんの初のソロツアーの開催など、さまざまなアニバーサリー企画を行っていましたが、この1年間はいかがでしたか?

タナカ 僕らと社長だけで考えた企画を行う、最後のDIYのような1年間だったので楽しかったですね。コロナがあったのでいろいろと模索しながらではありましたけど、僕自身、不自由がある中でできることを探したり考えたりするのも楽しめるタイプなので。キンタ(カナタ)のソロツアーもそのうちの1つ。今はお客さんは叫んだりできへんけど、その分、キンタの歌をちゃんと届けるツアーをやってみようかという感じでした。

カナタ 僕は1人でツアーを回ることが不安でしょうがなかったんですけど、弾かれへんかったピアノを練習したりして。ソロツアーは自分がレベルアップするためにクリアすべき1つのトピックでしたね。

──全体的に、何かしらのお題や越えるべきハードルのようなものがあったほうが燃える性質のバンドなのでしょうか?

タナカ そうだと思います。燃えるというか、そうしないと何もせえへん(笑)。

ヤマモト あとは「リスナーの気持ちに応えたい」という感覚が強いんでしょうね。

──再メジャーデビューについても聞かせてください。なぜもう一度メジャーレーベルに移ろうと思ったんですか?

ヤマモト 今の体制には「思いついたことをすぐ行動に移せる」というメリットがあるんですけど、その半面、自分たちでできる範囲のことしかやれないというもどかしさもあったんです。具体的に言うと、「音楽を広げる」ということに対してどうしても難しさを感じる。例えばコンビニにいるときにたまたま流れてきた音楽に対して「あっ、いいな」と思うことってあるじゃないですか。そういうきっかけ作りをもっとしていきたいし、そのためにはメジャーレーベルの力を借りたいなと思いました。

──関わる人の数が増えてチームが大きくなってきているところかと思いますが、その前に、自分たちで手を動かすような環境で活動して、バンドの指針を確かめられたのは皆さんにとって大きかったのでは?

カナタ そうなんですよ。「この人たちは絶対に手放してはいけないな」という人たちの顔が見えたので、自分たちの音楽を届けるうえでの焦点がより定まったというか。この5年間はすごく大切やったなあと思います。

カナタタケヒロ(Vo, G)

カナタタケヒロ(Vo, G)

タナカ 再メジャーデビューを喜んでくれるお客さんがいるのも、昔からLEGOを知ってくれている人が「おめでとうございます」と言ってくれるのもうれしいし、LEGOの活動について一緒に考えてくれるスタッフが増えたのもうれしい。もっと言うと、インディーズでの5年間や、結成からの15年間を肯定してもらったような気持ちでいます。あと、メジャーに所属したら好きなことができなくなるイメージってあるじゃないですか。でも今のところ、僕らはまだ怒られていないので(笑)。

カナタ レフェリーが笛を吹くか吹かへんかを確認してる感じはあるよな(笑)。というのは冗談ですけど、この15年を糧にしたうえでの再メジャーデビューなので、「安心してみんなで飛び込んでいこうよ」という気持ちがあるし、今回のアルバムでもそういう表現ができていたらと思いますね。

どこに出しても恥ずかしくない「心」

──そのアルバム「kolu_kokolu」を聴かせてもらいましたが、15年の歴史、そしてその先が感じられるアルバムだなと思いました。

カナタ おお、うれしい!

タナカ どの曲が好きでした?

──難しい質問ですね。「心」がテーマのアルバムかと思いますが、目に見えない愛情や温もり、その発現としての身体的接触、さらに発展して自分たちの鳴らす音楽の価値など、1つのテーマがさまざまな要素を含蓄している点にバンドの厚みが表れているように感じたんです。そのため、「この曲が」というよりも「このアルバムが」と言いたくなります。答えになっていなくてすみません。

タナカ いや、そう言ってもらえてうれしいです。今回のアルバムは「心とは~kolu_kokolu~」を軸にしようというところから始まったんですけど、この曲、詞先なんですよ。冒頭3、4行の「心とはどこにあるの? あなたはどこにあると思う?」というようなフレーズが最初にできて、それをキンタに投げたんです。そう考えると「俺、ずーっとこんなこと言ってるな」という話になるし、それでもまだ見つけられていない、答えは出ていないということになる。だけどそこにキンタがメロディを付けて、シンタロウがアレンジを付けて、全員の感性みたいなものがちゃんと混ざり合って……その過程で3人で話し合うこともあれば、話し合わずとも重なることももちろんあるんですが、そんなアルバムのテーマが「心」というのは15周年感があるというか。僕ら自身どこに出しても恥ずかしくないテーマ性とクオリティやと思っているし、こういう音楽をバンドとして発表できることをうれしく思っています。

──アルバムタイトルの「kolu_kokolu」、聞き慣れない言葉だったので調べたのですが、「心」の語源なんですね。

タナカ そうなんですって。例えば3年前に出した「KEITH」というアルバムは、さらっと羽織れるカーディガンみたいなアルバムにしたくてプロデューサーの飼っている猫の名前をタイトルにしたんですけど、今回は15周年かつ再メジャーデビューというタイミングなので、LEGOの15年がナメられないような門構えにしたかったんです。さっきも言ったように、僕らは心とか気持ちとか心臓とか、そういうことをずっと歌ってきているんですよ。デビューアルバム(2009年リリースの1stアルバム「Quartette Parade」)は心臓の音から始まったし、10周年のときに出したアルバムは「心臓の居場所」というタイトルやったし。

──だから「心」から連想できる言葉をタイトルにしたと。

タナカ はい。3つくらい候補があったんですけど、「心臓の居場所」より余裕を感じる言葉だから成長している感も出せるし、これがいいんじゃないかと。で、「心とは~kolu_kokolu~」が大事な曲やということはやっぱりわかっていたから、この曲に背負ってもらいたいと思って、あとからサブタイトルに付けたんですよね。

タナカヒロキ(G)

タナカヒロキ(G)

──なるほど。サウンドの作り方としては、1つ前のアルバム「気配」(2020年9月リリース)同様、各曲のデモを3人で作ったあと、外部のアレンジャーにブラッシュアップしてもらう方法を採っているんですよね。

ヤマモト そうですね。サポートミュージシャンを迎えてセッションするような感覚で「一緒にやれたら楽しそうやな」と思った人に声をかけています。自分たち3人の中で「もうこれ以上思いつかへん」という状態になったものがそこからどう発展していくのか、単純に興味があるし、ほかの人に入ってもらうことで楽曲がより素晴らしいものになるんじゃないかという期待もあるんですよ。それに、アレンジャーの皆さんとのやりとりはすごく刺激になるので、例えば「気配」の制作でインプットしたスキルが今回のアルバムのアウトプットに反映されているし、今回の制作でインプットしたスキルはきっと次のアウトプットに反映されるんじゃないかと思います。

ヤマモトシンタロウ(B)

ヤマモトシンタロウ(B)

──アレンジャーの人選に関してはいかがでしょう? 「気配」にも参加した辻村有記さん、トオミヨウさん、安原兵衛さんに加え、R8boyさん、永澤和真さん、津波幸平さん、前田逸平さんが新しく参加していますよね。

ヤマモト まず、「心とは~kolu_kokolu~」のアレンジをトオミヨウさんにお願いしたいというのが出発点としてありました。キンタが持ってきたデモがピアノの弾き語りだったので、それを生かした方向性で作っていったら必然的にストリングスが入ったアレンジになったんですけど、それをトオミさんに持っていったら、「よかったら生でストリングスを録らない?」という話が出たので「ぜひやりたいです」と。それ以降、僕がほかの曲のデモを作るときにもピアノやストリングスを自然と採り入れるようになったので、今回は、ストリングスやピアノ、打ち込みによるフック付けが上手な人を中心に声をかけさせてもらいました。

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曲作り合宿の成果