音楽ナタリー Power Push - LACCO TOWER
「ドラゴンボール」を彩る新曲ができるまで
歌詞を読んでアレンジ変更
──「薄紅」は歌詞の世界観と相まって、切なく美しい情景を想起させるアレンジになっていますよね。イントロをはじめ、全編にちりばめられたピアノがすごく印象的。
真一 これ実は、最初はピアノなんてまったく入ってなかったんですよ。もともとはちょっとピコピコしてる感じだったんですけど、ケイスケが書いた歌詞を読んで作り直したんです。
松川 数パターンを書いた中から、今の歌詞に決まった段階で、ホントにガラッとアレンジが変わったんですよ。それを聴いた瞬間、手前みそですけど「すっげえいいな!」って思えて。感動しちゃいましたね。
塩﨑 結果、ギリギリまで有力だった「奇々怪々」を押さえて、「薄紅」が逆転サヨナラしたという。歌詞の世界観を踏まえてここまでアレンジが変わったのは今までで初めてかもしれない。
──鍵盤以外のアレンジも手を加えたんですか?
細川 いや、鍵盤以外はもう録っちゃってたから変えられない状況で。
重田 うん。だからね、ベーシックトラックを変えなくても、鍵盤だけでここまで違う曲のように変えられるんだなって驚いた。すげえなと。
「大人の事情、大丈夫?」
──アレンジに大きく影響を与えた歌詞は、別れをテーマにした内容で。
松川 はい。この歌詞は「ドラゴンボール」のことをまったく意識せずに書いたんで、決まったときは「いいの、これで?」「大人の事情、大丈夫?」って正直思いましたけどね(笑)。「俺らはうれしいけどさ」みたいな。
──歌詞を数パターン書いたとおっしゃっていましたけど、中にはタイアップを意識したものもあったんですか?
松川 ありました。あとは僕らっぽさっていう部分を意識して、ちょっと小難しい文学的な歌詞を数時間かけて書いたりとか。でも、この「薄紅」の歌詞は5分10分くらいで書いたんですよ。真一の作った曲の雰囲気に恋愛の歌詞がハマりそうだったんで、超ナチュラルにサラッと書いたら、それが気に入ってもらえたっていう。
細川 サウンドに関してもそういうところはありましたね。「奇々怪々」はかなり考えて作り込んだサウンドになってるんですけど、「薄紅」は肩の力を抜いて自然体で演奏した感じがあって。フレーズも、頭にパッと浮かんだやつをすぐ録っちゃった感じだし。歌詞も含め、そういうナチュラルな雰囲気が僕ららしさをうまく出してくれて、楽曲の聴きやすさにもつながったんじゃないかなって思います。
真一の初夢
──アニメのエンディング映像を観ましたが、見事なハマりっぷりですよね。映像と合わさることで、意識せずに書いたという歌詞の世界観が「ドラゴンボール」という作品にちゃんと融合しているという。
松川 あの歌詞でどんな映像を作ってくれるのかなって楽しみにしてたんですけど、ものすごく上手に仕上げていただいて。
細川 歌詞のテロップの出し方がすごいよね。曲の内容をしっかり理解してくれた上で作ってくれてるんだなあって感動しました。
重田 絵とのマッチングがハンパないしね。俺らは「ドラゴンボール」世代なんで、エンディングを初めて観たときはうれしすぎて、逆にもう何も感じないというか。「なんなんだこの状況は?」っていう感じでしたけど(笑)。
松川 夢みたいな感じはあるよね。真一はまさに今年の初夢が「ドラゴンボール」絡みだったんでしょ?
真一 そうなんですよ。「ドラゴンボール超」のエンディング初オンエア日だからとテレビにかじりついて観てたら、「薄紅」のイントロの後、悟空が全然違うメロディで「パンチ! キック!」とか歌い出して。「ああ、俺らの曲使われなかったんだなあ」っていう初夢だったんですよ。だから現実の初オンエア日も、また悟空が歌い出したらどうしようと思って観たんですけど、ちゃんと松川ケイスケが歌ってたんで、「やったー!」と思って(笑)。
──あははは(笑)。松川さんがシングル発売発表時にコメントしていたように(参照:LACCO TOWER、メジャー1stシングルに「ドラゴンボール超」ED曲)、「薄紅」は「紛れもない最高傑作」だと思うし、アニメとも最高の形でコラボが実現しましたね。
松川 はい。毎回そのつもりではやってるんですけど、今回は特に今までの楽曲を超える、僕ららしい曲になったと思います。大好きな「ドラゴンボール」というアニメとの縁で、このタイミングでこの曲が出せたことが本当にうれしいですね。
塩﨑 「薄紅」に関しては、「今までとはだいぶ印象が違いますね」っていう感想をもらうことも多いんですけど、俺らとしては「いやいや昔からこういう一面はあるよ」っていう感じなんですよ。ライブのラストでは絶対こういうテイストの曲をやってたりもするし。そういう意味では、タイアップということでいろんなことを考えはしたけど、結果的に今までの自分たちが持ってる服を着て勝負できたことが本当によかったなって思いますね。
次のページ » こういう曲は絶対アニメのエンディングには使われないだろうな
収録曲
- 薄紅
- 奇々怪々
- 灯源 (Re-Recording)
- 薄紅 -Instrumental-
- 奇々怪々 -Instrumental-
- 灯源 (Re-Recording) -Instrumental-
- LACCO TOWER「独奏演奏会」
- 2016年2月11日(木・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2016年2月27日(土)大阪府 Music Club JANUS
- I ROCKS 2016 stand by LACCO TOWER
超故郷編
2016年4月30日(土)群馬県 群馬音楽センター
<出演者>
LACCO TOWER / Ivy to Fraudulent Game / only he knows / KAKASHI / 小須田純一(ing) / SECRET SERVICE / DJ岩瀬ガッツ with スベリー・マーキュリー / Drunken' Frenzy / 秀吉 / FOMARE / Mississippi Duck Festival / Moshu / モーモールルギャバン / LILY盟友編
2016年5月1日(日)群馬県 群馬音楽センター
<出演者>
LACCO TOWER / ircle / アルカラ / 片平里菜 / GOOD ON THE REEL / グッドモーニングアメリカ / SUPER BEAVER / NUBO / Halo at 四畳半 / BRADIO / My Hair is Bad / ラックライフ / Rhythmic Toy World / Lyu:Lyu
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年の結成以来、都内、群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014、2015年に地元・群馬音楽センターにて開催した。インディーズにてアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。2016年2月にフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「薄紅」を収めた同名のシングルをリリースする。