音楽ナタリー Power Push - LACCO TOWER
「ドラゴンボール」を彩る新曲ができるまで
こういう曲は絶対アニメのエンディングには使われないだろうな
──ではカップリングのお話も。シングルの2曲目には、先ほどからお話が出ている「奇々怪々」が収録されています。
松川 この曲はもともと、かなり「ドラゴンボール」の世界観に寄せた内容になってたんですよ。ベジータの技・パワーボールをイメージして“弾けて混ざれ”っていうフレーズを入れていたりとか、カリン様が出てきたりとか。ただ、アニメのエンディングに「薄紅」が使われることが決まったので、そこからちょっと歌詞を書き直したんですよね。微調整くらいな感じですけど。
──「薄紅」がLACCO TOWERのポップサイドだとすると、この曲はヘヴィでディープな側面が全面に打ち出されたサウンドですね。
真一 けっこう激しい曲ですからね。僕の勝手な先入観なんですけど、こういう曲は絶対アニメのエンディングには使われないだろうなと思いつつ先方に提出したんですよ。ダメもとで。そしたら、「この曲もいいね」って言ってもらえたので、「え、マジで!」と思って(笑)。それがバンドとしての自信になったので、レコーディングもかなり早かったです。
重田 得意なんですよ、こういうサウンドは。
細川 アレンジを構築するのに時間はかけたけどね。構成が4回くらい変わったんですよ。ギターソロがあるバージョンもあったし。あと最初はCメロがなかったんだけど、増やしたよね。
松川 この曲もすごくいいアレンジだと思います。ただね、歌がめちゃくちゃ難しいんですよ。真一ジェットは僕のことを機械かなんかだと思ってるらしく、息継ぎするところが全然ないし(笑)。これ、カラオケでは誰も歌えないんじゃないかな。
──真一さんは自分で歌いながらメロディを作るんですよね?
真一 鼻歌は歌いますけど、どちらかと言うと指が歌うというか(笑)。もちろんメロディができたら自分でも歌ってみますよ。ケイスケとはキーが違いますけど、一応歌います。そうするとね……全然歌えないっす。「これどうやって歌うんだよ、ケイスケ」って言いながら渡す感じですね(笑)。
松川 まあでもそれでボーカルは鍛えられてるんだと思います。
真一 修行ですから。それによってスーパー松川ケイスケになってもらえれば(笑)。
重量感のある「灯源」に
──3曲目には「灯源」という曲が収録されています。これは2009年にリリースされたミニアルバム「短編傷説」に収録されていた曲をリレコーディングしたものですね。
塩﨑 LACCO TOWERにとって大事な曲を、改めてライブさながらの雰囲気で録り直しました。「せーの」で録ったわけではないんですけど、わりとみんなテイク1発、2発くらいでレコーディングを終えて。歌も2パターン録ったけど、使ったのは最初の1発目だしね。
松川 そうだね。たぶん技術的には直したほうがいいところもあるとは思うんですけど、僕は1発目に歌ったテイクでいきたかったんですよね。そこはわがままを言わせてもらって。
──けっこう荒ぶった歌声になっているところもありますもんね。すごくライブ感のあるボーカルで、感情が乗りまくっている印象でした。
松川 ライブで何度も歌っている曲なので、感情の入り方は新曲とは全然違いますよね。何度も歌うことで喉があったまっていくことはあるんですけど、僕としてはその1発目ですべてを出し切れた感があったというか。歌をほぼ1発で録ったのは初めてだと思います。
重田 演奏に関しても以前の音源よりもパワーアップしてるんじゃないですかね。肉厚で重量感のある「灯源」になったような。(細川)大介も入ったしね。
──そっか。以前の音源は大介さんのギターではなかったんですね。
細川 そうなんですよ。ただ、前任ギタリストへの尊敬の意味も込めて、わざと似せて弾いたところはありました。大事なフレーズは残したし、バッキングも踏襲したし。その上で自分の匂いもちゃんと出すっていう、そのバランスは難しかったですけどね。
──“暗闇の中に差し込むわずかな光に希望を見出す”という内容の歌詞が胸を打ちますよね。
松川 これは僕らが一番不遇な時代に作った曲なんです。だから、まさにその状況が歌詞に反映されているというか。
塩﨑 もともと、バンドとしての状況を切り拓いていくために参加したオムニバスアルバムのためにこの曲は作ったんですよ。そのアルバムが「Melodizm」(メロディズム)っていうタイトルだったから、歌詞の中に「メロディ澄む」っていうフレーズが入っていたりもしていて。そういう部分も含め、すごく思い入れが強いんですよね。その当時から聴いてくれてるファンの方にも同じように特別な思いがこの曲にはあるみたいで。
松川 ライブでは前奏が始まった瞬間に泣いちゃう人もいますから。
塩﨑 そんな大切な曲だからこそ、大きなタイアップをもらえた勝負の1枚の中に入れることに意味があったというか。
重田 今回のシングルは3曲ともいいですから。大事な1枚になりましたね。
“結果を出す”1年に
──充実のシングルリリースからスタートした2016年はどんな活動をしていきたいですか?
塩﨑 去年は“挑む”ということをテーマにしてメジャーの世界に飛び込んだわけですけど、そこで大切な人たちとたくさん出会ったり、いろんな経験をさせてもらうことができたので、今年は“結果を出す”ことをテーマにしたいと思っていて。セールス的な数字だったり、ワンマンの規模であったり、すべてにおいて以前よりも大きくなったLACCO TOWERを見せていきたいんですよね。その上で、去年のメジャーデビュー日に公言した日本武道館ライブという目標に向けて走っていく1年にしたいなと。
──4月30日と5月1日には地元・群馬で主催フェス「I ROCKS」も開催します。順調に回を重ね、今年で3度目になりますね。
塩﨑 続けることが大事ではあるんですけど、同じことをやっていてもお客さんが減ってしまうかもしれないので、何かしらのストーリーを作らなきゃなとは思っていて。そこが難しいところではあるんですよね。ただ、回を重ねたことで「『I ROCKS』に出たい」と言ってくれるアーティストもかなり増えているんですよ。
──フェスとしてしっかり認知されているということですよね。
塩﨑 それは純粋にうれしいことですよね。地元である群馬で大きな花火を打ち上げたいという気持ちがあるし、ほかのフェスに絶対勝ちたいという思いもあるので、今年もいろいろ試行錯誤しながら最高のフェスにしたいです。
──楽しみにしてます。では、ほかの方々の2016年の目標も聞かせていただけますか?
重田 俺はメリハリのある生活をしたいですね。今は全然ダメなんで。もっとストイックに日々を過ごしたいです。
真一 俺は歯を白くしたいですね。メジャーになってから各方面の方々に「おめえは歯が汚ねえ」ってめちゃくちゃ言われたので。歯が出てるから目立つんでしょうね。
──ははは(笑)。細川さんはどうですか?
細川 僕らはアーティストでありつつ、自分たちでマネージメント会社もやってるんですよ。なので、今年は会社員としてもほかの事務所には負けない活動をしていきたいと思っていて。常に面白いことに対するアンテナを張って、生まれたアイデアをどう自分たちに生かせるかをしっかり考えていきたいと思ってます。
──では最後に松川さんお願いします。
松川 今年はいろんな意味でいろんな方にLACCO TOWERを知っていただく機会が多い年になると思うんですよ。そうなるとプラスだけではない、いろんな意見もきっと出てくるはずで。でも、そんな周りの声は気にせずに、自分たちらしく傍若無人にやっていければいいかなって思ってるんですよね。ここまでにはメンバーチェンジもありましたけど、今はもうこの5人でのLACCO TOWERが最終形態──フリーザで言うところのゴールデンフリーザだと思っているので、そんな僕らに付いてきてあそばせ、みたいな感じですね。この5人でしか実現できない世界をどんどん見せていくので。
収録曲
- 薄紅
- 奇々怪々
- 灯源 (Re-Recording)
- 薄紅 -Instrumental-
- 奇々怪々 -Instrumental-
- 灯源 (Re-Recording) -Instrumental-
- LACCO TOWER「独奏演奏会」
- 2016年2月11日(木・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2016年2月27日(土)大阪府 Music Club JANUS
- I ROCKS 2016 stand by LACCO TOWER
超故郷編
2016年4月30日(土)群馬県 群馬音楽センター
<出演者>
LACCO TOWER / Ivy to Fraudulent Game / only he knows / KAKASHI / 小須田純一(ing) / SECRET SERVICE / DJ岩瀬ガッツ with スベリー・マーキュリー / Drunken' Frenzy / 秀吉 / FOMARE / Mississippi Duck Festival / Moshu / モーモールルギャバン / LILY盟友編
2016年5月1日(日)群馬県 群馬音楽センター
<出演者>
LACCO TOWER / ircle / アルカラ / 片平里菜 / GOOD ON THE REEL / グッドモーニングアメリカ / SUPER BEAVER / NUBO / Halo at 四畳半 / BRADIO / My Hair is Bad / ラックライフ / Rhythmic Toy World / Lyu:Lyu
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年の結成以来、都内、群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014、2015年に地元・群馬音楽センターにて開催した。インディーズにてアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。2016年2月にフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「薄紅」を収めた同名のシングルをリリースする。