清竜人|令和元年に何を思う

清竜人が5月1日にニューアルバム「REIWA」をリリースする。

4月1日の新元号発表と同時にアルバムタイトルを発表し、それから1時間足らずで「REIWA」の文字が入ったジャケット写真までも公開して世間を驚かせた清竜人。個人名義では2013年秋以来となるオリジナルアルバム「REIWA」には、昨年7月にリリースされたシングル曲「平成の男」や吉澤嘉代子とのデュエット曲「目が醒めるまで」、アルバムリード曲でミュージックビデオも制作されたバラード「青春は美しい」、未発表の新曲「25時のBirthday」「あいつは死んであの子は産まれた」など全12曲が収録される。

音楽ナタリーでは清竜人にインタビュー。新元号を冠した本作の制作意図や今後の展開について聞いた。

取材 / 臼杵成晃 文 / 三浦良純 撮影 / 塚原孝顕

すべて想定通り

──「新元号がアルバムタイトルになる」と事前に聞いていたので、「令和」という新元号が発表されたとき、世間の騒ぎとは別のところで「いいアルバムタイトルになってよかった」と思いました(笑)。タイトルとして語呂が悪い元号の可能性もあったと思うので。

そうですね(笑)。熟語として凛として美しいし、言葉の響きもキレイ。アルファベット表記もバランスがいい。元号がなんになろうがそのタイトルでリリースしようというところではあったんですけど、「令和」でよかったです。

清竜人

──昨年7月のシングル「平成の男」リリース時には、新元号の施行日にアルバム発表というここまでの流れは計算していたんですよね(参照:清竜人 × ミッキー吉野「平成の男」対談)。

そうです。2019年5月1日から新元号になるということを知って、5月1日の曜日を調べたら水曜日だった。音楽業界の慣習的にリリース曜日なのでこれはよいなと。ちょうど5月頃に次のアルバムをリリースしようと企んでいたところだったんです。アルバムのコンセプトや楽曲の構想のテーマにもすごく合致したし、点が線になった感覚はありました。

──想定外のことは何もなかったですか?

作品作りにおいてはすべて想定内で、リリースのタイミングもそうですし、作品性も当初頭の中に描いていた通りに具現化できたと思っています。昭和の時代から活躍されているようなJ-POPの根幹を作ってきたクリエイターの方たちと、平成元年に生まれて平成の時代の音楽を聴きながらアーティストをやっている僕がコラボレーションして、次の時代への橋渡しになるようなアルバムにしたいなと。今だけ評価されるものではなく、10年、20年後に振り返って、再評価されるような時代がきたらいいなと思って作りました。

──収録曲の多くはすでにライブで披露されていますが、手応えはどうですか?

長い目で見てセットリストに組み込みやすい楽曲が増えたかなと思っています。これまでの作品群はその都度コンセプトがまったく違っていて、そのタイミングじゃないと歌えない曲が多かった。今回のアルバムにバンドサウンドで収録されている曲も、ピアノ1本だったり、アコースティックセットにも合う曲になったと思っていて。昨年、東京キネマ倶楽部でピアノ1本でやったときの感触もよかったし、オーディエンスの反応もすごくよかったんです。メロディと歌詞をこだわって作っていた楽曲が想定通りに作れているのがわかりましたね。

オマージュやパロディではまったくない

──このプロジェクトが始まった当初はもっとコスチュームプレイというか、大御所歌手のような佇まいで、作り上げたフィクションを演じているように見えたんです。でも、ライブを何度か観ていくうちに「フィクションではないのかも」と思えてきて。

清竜人

そういう受け取り方をしてくれるのが一番うれしいです。オマージュやパロディのような見え方になってしまうのは致し方ないとは思っていたのですが、目指していることはまったく別で。過去のJ-POPや歌謡曲の歴史を、今の時代の僕がいい塩梅で踏襲して新しいものを作り上げていくのが目的だったんです。それがオーディエンスの人たちに少しずつ伝わっていったという図式はすごくうれしいし、伝わっている人が少しでも多いとうれしいなと思っています。

──お客さんの反応も含めて面白いなと思っています。

清竜人を切り取ったときに、2012年と13年、15年と16年では全然違うし、ファンによって好きな時期が普通のアーティストより分かれる人間だとは思うので、こちらから「こう観てほしい」という説明はせず、好きなように楽しんでもらえればいいかなと思います。

現代にチューニングすること

──アルバム収録曲のバランスも当初から考えていたのですか?

5人くらいのアレンジャーに2曲ずつ依頼して10曲、加えて2曲を自分がアレンジする12曲が理想の形だと思っていたので、当初の設計図通りではありますね。

──シングルリリースする曲として「平成の男」と「目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)」を選んだ理由はあるんですか?

清竜人

単純にメロディと歌詞がシングルっぽいし、「平成」というキーワードを使った楽曲を次の元号になるまでに出したかったということもあって、シングル1発目は「平成の男」になりました。その次のシングルはデュエットソングにしたかった。制作の時期はほとんど同じです。

──新元号の「令和」が発表された瞬間に「平成の男」という楽曲がひと時代前のものに切り替わったような錯覚があって、そこまで計算していたらすごいなと思いました。

ははは(笑)。確かに。

──井上鑑さん、瀬尾一三さん、原田真二さん、星勝さん、ミッキー吉野さんといった錚々たるアレンジャーの方々と仕事をしてみて、編曲も手がける清さんとしては同じアレンジャー目線で何か発見はありましたか?

やっぱり現代にチューニングできているというか、昭和の香りがするようなフレーズやアレンジを作りつつも、現代の音楽制作の手法を身につけていらっしゃって。若い人と同等かそれ以上にアンテナを研ぎ澄ませている姿勢に共感したし、単純に素晴らしいなと思いました。レコーディングやアレンジの手法に関して、僕ならこうすると思う場面もありましたが、皆さんプロフェッショナルなので、アーティストというより技術者として参考になる部分はありましたね。