清 竜人25特集|異端の“一夫多妻制アイドル”まさかの復活!狂騒の3年間をテキストで振り返る

清竜人による“一夫多妻制アイドルグループ”、清 竜人25が復活を果たす。

2014年9月から2017年6月まで、わずか3年弱の活動でアイドルシーンのみならず日本の音楽シーン全体に大きな爪痕を残した清 竜人25。清のデビュー5周年を機に結成された異例づくしのグループが、彼のデビュー15周年のタイミングで再び動き出すことになった。オリジナルメンバーではなく新たな“夫人”4人を迎えることが発表されているものの、その顔ぶれはベールに包まれたまま。まずはその第1弾楽曲として、10年前のデビュー曲をリメイクした「Will you marry me ?」がリリースされた。

新しい夫人たちは誰なのか? 今後どんな活動が予定されているのか? 7月11日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催されるライブ「KIYOSHI RYUJIN25~REUNION PARTY~」まではさまざまなことが謎のままだが、この記事でグループ誕生から解散までの狂騒の日々を改めておさらいしつつ、次のアクションに備えておこう。

文 / 臼杵成晃

清 竜人25誕生への布石

メールを開いて「マジかよ」と声に出したのはひさしぶりです。「実は、今年15周年を記念して“清 竜人25”をメンバーを新たに再始動いたします」EPIC担当者から届いたメールの書き出しに前のめりになりつつ、込み上げる喜び。あの狂騒の日々が戻ってくる──。

さかのぼることちょうど10年前、2014年の6月。始まりはやはり突然のメールだった。「清竜人がアイドルユニットを結成する。アイドル志望の女性メンバーを公募で集め、自分もメンバーとして活動する」。胸焦がれる切ないバラード「痛いよ」で知られるシンガーソングライターの清竜人が、アイドルを? というかアイドルに? 驚きの一方で、「なるほどそうきたか」という納得の思いもあった。

2009年春、19歳の若さでデビューした清竜人は、そこからコンスタントにシングル、アルバムを発表。デビュー曲「Morning Sun」や上記の「痛いよ」を筆頭に、みずみずしいアコースティックサウンドを主体にした楽曲で高い評価を集めながらも、アルバム作品では底知れぬポテンシャルの片鱗をじわじわと見せていた。そして2012年5月、4thアルバムとなる問題作「MUSIC」が世に放たれる。「Fall♡In♡Loveに恋してるっ♪」「りゅうじんのエッチ♡~ぼくのばちあたりな妄想劇~」「バカ♡バカ♡バカ♡」などタイトルからすでに様子のおかしい楽曲群。各曲ごとに異なるアレンジャーを招いた過剰なポップサウンドは、当時勢いを増していたアイドル / アニメソングシーンに接近した肌触りだった。清が初めて外部アーティストに楽曲提供したのもこの頃。声優アーティスト・ほっちゃんこと堀江由衣が2011年2月に発表したシングル「インモラリスト」が清の初提供曲となり、2人のコラボは翌2012年2月発売のアルバム「秘密」へとつながっていく(参照:堀江由衣「秘密」特集|8thアルバムは「秘密」です ほっちゃん×清竜人 初対談)。この「秘密」に収録された清の提供曲「CHILDISH♡LOVE♡WORLD」は曲中に「フレー!フレー!ほっちゃん! がんばれ!がんばれ!ほっちゃん!」というフレーズが登場するカオティックな楽曲で、これは今になって思えば、その後リリースされた「MUSIC」、さらには清 竜人25へと発展する“布石”であった。

ステージでイチャつく異例のアイドルグループ爆誕

2014年6月13日、アイドルユニット「清 竜人25」の始動が発表され、同時にメンバー募集がスタート。3カ月後の9月17日、6人の“夫人”を引き連れたキービジュアルとともに、メンバー全員が“清”姓を持つ「一夫多妻制アイドルグループ」であることが明かされた。

アイドルと恋愛、結婚──。アイドルシーンにおいて基本的に恋愛は“御法度”であり、スキャンダルが脱退・引退の引き金となることは今でも多い。AKB48の峯岸みなみがスクープを受けて丸刈りになって謝罪したのがこの前年、2013年の出来事だ。そんな女性アイドルシーンで、男性が(しかもセンターで)紛れているグループが果たして受け入れられるのか? そんな懸念を抱えたまま、清 竜人25は2014年9月20日、京都・平安神宮のイベント「平安神宮奉納LIVE2014 古今一堂!NIPPON NIGHT」でステージデビューを果たし、その6日後には自主企画「清 竜人ハーレム♡フェスタ2014」を開催した。清咲乃、清桃花、清亜美、清美咲、清菜月、清可恩。6人の夫人たちが竜人くん(以下、敬意を込めて“くん”付けで呼ぶ)を囲み、歌い、踊り、イチャつく。そんなハーレム状態のパフォーマンスが……受け入れられた。しかも強烈な熱狂を伴って。

清 竜人25

7人は夫婦なのだから愛し合っていて当然。ステージでも堂々とイチャつき、夫は観客に向けて「悩んでないでさ 俺のところへおいで 後悔はさせないぜ Lady」と呼びかける。やがてファンのTwitter(現X)アカウントの多くは清姓を名乗り、一夫多妻の“多妻”はどんどん拡大した。竜人くんに熱狂したのは“夫人”だけではない。竜人くんの艶かしい仕草や言葉には野太い歓声も上がった。清 竜人25の中で一番のアイドルは竜人くんである。我々はそんな竜人くんが楽しそうにイチャイチャしている姿をただうっとりと眺め、歓声を上げていればよい──異色のグループを鑑賞するための“取説”はアイドルファンに案外あっさり理解され、愛された。

清 竜人25

2014年11月発売のデビュー曲「Will♡You♡Marry♡Me ?」を皮切りに、清 竜人25はコンスタントに作品をリリースしていく。中でも2015年5月発売の3rdシングル「Mr.PLAY BOY…♡」は大きなインパクトをもたらした。「YO YO スケベ スケベ 電光石火のスケベ スケベ」と声をそろえてアジる夫人たち。その真ん中で華麗なターンを決める竜人くん。

「アイドルソング」として考えれば、ちょっとどうかしている。しかし、スウィングジャズ / ジャイヴ調のサウンドに乗せてゴキゲンにツイストできる楽曲自体の強さが先に立ち、ケレン味が楽曲の持ち味をブーストさせる。そう、清 竜人25はそもそも稀代のソングライター・清竜人が楽曲を手がけるグループなのだ。ソロシンガー清竜人としては表現できない女性ボーカルの帯域を獲得したことでソングライティングの幅が広がったのか、ソングライター清竜人は覚醒したかのようにアイデアとユーモアに満ちた男女混声の楽曲を次々と投下していく。音楽的な魅力が根底にあったからこそ、清 竜人25のアバンギャルドな快進撃は広く支持されたのだろう。

清 竜人25

「夢でも現実でもない日々」の終わり

2015年5月には第5夫人の清菜月が「ご懐妊」で「専業主婦になる」という、これまたアイドル界異例の理由によりグループを退き、第7夫人の清優華が加入する。2015年9月に1stアルバム「PROPOSE」を発表。喪服姿の夫人たちが囲む棺の中で眠る白装束の竜人くん。意味深なジャケットアートワークにはっとした。このグループは永遠ではない。アルバムを出すごとに作風もビジュアルもほぼ別人と言えるほど変化させる竜人くんにとって、そもそも清 竜人25は「気の迷い」程度のものなのではないか。竜人くんならアルバム1枚作って「飽きたからやめる」と言い出してもおかしくない。

清 竜人25

が、清 竜人25はそこで終わらなかった。実際、当初のプランでは同年末にリリースされたクリスマスシングル「Christmas♡Symphony」までの活動になる予定だったことを竜人くんはその後のインタビューで明かしている。活動を続ける中で清 竜人25の表現に可能性を見出したのだろう。何よりきっと、竜人くん自身が「楽しくなっちゃった」のだろうなと思う。東京・中野サンプラザホールでの「清 竜人25コンサート 2016春」、計3回の自主企画「清 竜人ハーレム♡フェスタ」、さらに「清 竜人25“アバンチュール♡ツアー”」「清 竜人25 ライブツアー 2016 秋」と2016年の清 竜人25はますます活発に動き、「TOKYO IDOL FESTIVAL」や「夏の魔物」など外部イベントにも積極的に出演した。

清 竜人25

この頃、第2夫人・清桃花が腰痛悪化により活動を終了し“専業主婦”になったため、秋ツアーからは清竜人、咲乃、亜美、美咲、可恩、優華の6人体制に。そして竜人くんは秋ツアーの最終公演、初披露の新曲「25♡」を歌いながら、唐突にこうつぶやく。

「清 竜人25♡ 解散します♡ ごめんね♡」

紙吹雪舞う中での異質な解散発表。そして2017年6月17日に行われる解散コンサートの知らせ。「夢でも現実でもない 貴方との日々は きっと神様がさ 見たいと願ってたラブストーリーね」と歌われる「25♡」はグループの終わりを表明する楽曲だった。当日の映像を観返してみると、若干緊張した様子の竜人くん、発表前からすでに涙を浮かべている夫人たち、発表の瞬間を呆然と受け止める観客、あまりに華やかで呆気にとられてしまう紙吹雪、解散コンサートのチケット先行発売という現実味のすごい告知にドッと笑いが起きるフロアなど、いろいろなことが起きすぎたカオティックなムードが味わい深い。

2017年4月12日、2ndアルバム「WIFE」をリリース。前日よりライブツアー「清 竜人25“メーク♡ラブ♡ツアー”」で全国11会場を回った。“物語”の終わりに向かって進む清 竜人25に悲壮感はなく、変わらずピースフルなムードを保っていたが、ツアーファイナルの福岡公演ではラストの「LOVE&WIFE&PEACE♡」で夫人たちがたまらず号泣。「清 竜人25って最高やな!!」という竜人くんの叫びで最後のツアーは締めくくられた。そして6月17日、清 竜人25は最後の日を迎える。

清 竜人25

パラレルワールドの収束、そして新たなパラレルワールドへ

「清 竜人25 “ラスト♡コンサート”」はオリジナルナンバー31曲をすべて披露するという内容で、パフォーマンスはおよそ4時間におよんだ。教会を思わせるステージで、最後の最後に“結婚披露宴”を行う清 竜人25。全31曲を歌い終えると、夫人たちは純白のドレス、清竜人くんは白いタキシードでステージへ。1人ずつ最後の言葉を述べると、竜人くんは「最後にもう1曲だけ歌って、そのパフォーマンスの中で、このグループの、この物語のラストページを飾れたらなと思います。最後の曲は僕から妻たちへ向けて、言葉にできない大きな愛の気持ちと、僕たち全員から皆さんに向けて、伝えても伝えきれない愛と感謝の気持ちをありったけ込めて歌いたいと思います」と宣言。「清 竜人25は夢ではありませんでした。現実でもありません。清 竜人25は清 竜人25でしかありえません。世界中どこを探してもここにしかない、この愛の形を、その胸に焼き付けていっていください」と挨拶し、グランドピアノを弾きながら歌い始める。彼がソロ名義で2011年に発表したシングル「ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング」だ。最後にソロ楽曲が歌われることで、約3年にわたって繰り広げられたパラレルワールドがゆっくり閉じていく、そんな印象を受けた。

清 竜人25

アルバム「WIFE」発売時に行った最後のインタビューで、「もう一度清 竜人25をやることはあるか」という質問に対し、竜人くんは「いや、ある。それは20年後ぐらいだと思いますけど。俺は45ぐらいになって、そのとき18歳、19歳ぐらいの子と……」と回答している。夫人たちは「みんなで再結成じゃないの?」と不満を漏らしていたが、ラストコンサートがあまりに見事な幕引きだったし、まあいつかお祭り的に復活したらいいよね……と思っていたら本当に来た! 清竜人35歳の誕生日である5月27日、「大切な発表」と題された動画には、10年前と同じ、アフロでヒゲ面の、紛れもない“竜人くん”の姿があった。清 竜人25が新たな4人の“夫人”とともに再結成。ホントにオリジナルメンバーでの復活じゃないんだ、という驚きもありつつ(笑)、想定よりも早く訪れた“竜人くん”との再会にワクワクが抑えられない。その第1弾楽曲は、オリジナル清 竜人25のデビュー曲であった「Will♡You♡Marry♡Me ?」のリメイクバージョンだ。

清 竜人25

清竜人の最新アルバム「FEMALE」を経由した新たな世界線の竜人くん、といった趣の、洗練と混沌がほどよくブレンドされ研ぎ澄まされたサウンド。SNSにおける“匂わせ”投稿で第101夫人から第104夫人までの新メンバー4人が発表され、「Will you marry me ?」で歌声も明らかになったが、その正体はいまだベールに包まれている。次はどんなパラレルワールドが待ち構えているのか。「今年は忙しくなりそうだぞ」と今後の予定も見えていないうちから腕まくりしております。おかえり竜人くん!

清 竜人25

公演情報

Kiyoshi Ryujin 15th Anniversary Band Tour 2024

  • 2024年6月26日(水)東京都 LIQUIDROOM
  • 2024年6月30日(日)大阪府 BIGCAT

KIYOSHI RYUJIN25~REUNION PARTY~

2024年7月11日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama

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プロフィール

清 竜人25(キヨシリュウジントゥウェンティファイブ)

ソロアーティストとして活動していた清 竜人が、2014年9月に立ち上げたアイドルユニット。プロデューサー兼メンバーの清竜人に、その妻である清咲乃、清桃花、清亜美、清美咲、清菜月、清可恩を加えた7人で結成された。2014年11月にデビューシングル「Will♡You♡Marry♡Me ?」、2015年2月に2ndシングル「A・B・Cじゃグッと来ない!!」をリリース。2015年5月には活動を休止した第5夫人・菜月に代わり、第7夫人の清優華が加入した。同年9月には初のフルアルバム「PROPOSE」を発表。2016年11月には第2夫人・桃花が腰痛のため活動を終了し“専業主婦”となり、同年秋の全国ツアー「清 竜人25“ライブツアー 2016 秋”」最終公演でグループの解散が発表された。2017年4月に2ndアルバム「WIFE」をリリース。このアルバムを携えたラストツアー「清 竜人25 “メーク♡ラブ♡ツアー”」で全国11都市を回り、6月の千葉・幕張メッセ イベントホール公演「清 竜人25 “ラスト♡コンサート”」をもっておよそ3年におよんだプロジェクトに終止符を打った。竜人がデビュー15周年を迎えた2024年、新たなメンバーで再始動を果たす。デビューシングル「Will♡You♡Marry♡Me ?」のリメイクバージョン「Will you marry me ?」を6月に配信リリース。7月11日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで新体制初ライブ「KIYOSHI RYUJIN25~REUNION PARTY~」を行う。