“一夫多妻制”アイドルユニット・清 竜人25、演者と観客との境界線を取り払ったバンドプロジェクト・TOWNでの活動を経て、清竜人のソロ活動が再開した。その第一歩として届けられるニューシングル「平成の男」は、ミッキー吉野(ゴダイゴ)、井上鑑、原田真二といった昭和の時代から活躍する音楽家をアレンジャーに招いた、昭和歌謡の血筋を感じさせる作品となった。今回の特集では、表題曲「平成の男」のアレンジを担当したミッキー吉野との対談が実現。昭和、平成、そして次の時代へとつながる有意義な音楽談義となった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 宮下祐介
「おかしなやつだなあ」と
──ミッキーさんには今回どのようなオファーがあったのでしょうか。
ミッキー吉野 まず彼のマネージャーから連絡があったんです。「清竜人というアーティストがいて、こういうことをやってまして、今度こういうことがやりたいのでぜひお願いします」と細かく説明があって。それで、今までの作品をいろいろ聴かせてもらいました。
──予備知識ないところから竜人さんの過去のディスコグラフィをたどると……端的に言って変ですよね?
吉野 最初は「えっ」と思いました(笑)。YouTubeにあるビデオもいろいろ観たりして「おかしなやつだなあ」と。でも、それが面白かったんですよ。清 竜人25は昭和の言葉で言うと“ハレンチ”じゃん。思い切りいろんなことを冗談っぽくやってるけれど、意外と真面目なところもあったりして。今年の1月にゴダイゴで大阪に行ったとき、彼がマネージャーと一緒に来てくれて。そこで初めて会ったんです。
──竜人さんはこれまでもさまざまなスタイルで音楽を表現してきましたが、今回のソロ活動再開にあたり、なぜ「大御所をアレンジャーに迎える」という手法を選んだのでしょうか。
清竜人 僕が思う、オーセンティックな、本式なジャパニーズポップスというものが、今のヒットチャートを見渡すと少なくなってきたなと思っていて。今、平成が終わるタイミングでそこを見つめ直してみるのも面白いんじゃないかと考えたんです。その中でも自分の琴線に触れる、日本人ならではの血の通った歌謡曲を作っていらっしゃった方々とコラボレーションすることで、平成を経て次の時代に橋渡しするような楽曲が作れるんじゃないかと。それでまずミッキーさんにお声がけさせてもらいました。僕の父親と母親が強烈なゴダイゴファンでしたので(笑)。
吉野 そのあとデモテープをもらったんだけど、面白いのは、彼が昭和的だと考えて作ったであろう曲が、やっぱり昭和じゃないんだよ。1番2番があって、ときどき中サビがあって大サビがある、みたいなカッチリ決まったパターンが昭和的だなと思うんだけど、彼のデモはそれとは違って、(ムッシュ)かまやつさんの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」(かまやつひろし名義で1975年にリリースされたソロシングル「我が良き友よ」のカップリング曲)に近いものを感じたんだよね。それを聴いて、きっと彼が考える「昭和の歌謡曲」は僕が考えるそれとはちょっと違うんだろうなって。そして不思議なことに、ちょうど同じ頃、布施明さんからも仕事の依頼があったんです。「君は薔薇より美しい」(ミッキー吉野が作編曲を手がけた布施の1979年発表のシングル)が今ウケてるんで、70歳になった記念にセルフカバーを含むアルバムを作りたいと(参照:布施明、22年ぶりのオリジナルアルバム「WALK」本日発売)。布施さんには新しく2曲書いたんだけど、ちょうどこっちの作業と同時進行だったんですよ。
──そうだったんですね。
吉野 偶然なんだけど、時代の移り変わりを感じたんですよ。「平成の男」というタイトルからして考えさせられるものがいっぱいあって、楽しい仕事でしたね。
自分で作曲したものはうまくアレンジできない
──清 竜人25や2012年のソロアルバム「MUSIC」(参照:清竜人「MUSIC」堀江由衣との対談&単独インタビュー)で外部のアレンジャーに編曲を依頼する際は、ある程度作り込んだデモを渡していたとお話されていましたが、今回は?
竜人 基本的にはピアノの弾き語りのようなデモで、余計な要素は一切排して、シンプルに歌詞とメロディと、あとはざっくりとしたコード感だけ伝わるようなものにしました。
吉野 僕のアプローチは昔から変わらないんですよ。歌の頭がよく聞こえるようにアレンジする。基本はそれだけで。デモを何度も繰り返し聴いて、どこをどうすると歌がパーンと入ってくるか。だから人の曲のほうが案外うまくいくんですよ。自分で作曲したものはうまくアレンジできない(笑)。
竜人 へえー。
吉野 だからゴダイゴの場合はタケカワ(ユキヒデ)が得をしていると思うんだよね。彼の曲のほうがアレンジがよくなっちゃうから(笑)。これはずっとジレンマなんだけど、自分の曲は作った時点で固定観念があるから、なかなかそこから抜け出せないんだよ。
竜人 そうですね。
吉野 どこか不自然になっちゃうんだけど、人の曲の場合は「いかにこれをよく聴かせられるか」と客観的に考えられる。
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昭和の音楽は“愛着”
2018年7月31日更新