音楽ナタリー Power Push - 清春
「本当に音楽が好きな人に届けたい」 新たな布陣で臨んだ3年ぶりソロ作
森さんのアレンジは勉強になった
──メロディはどうやって作るんですか。
メロディはギターを弾きながら鼻歌的に考えるときもありますけど、ほぼほぼブースに入ってヘッドフォンで簡易なオケを聴きながら、何種類も歌うんです。1曲につき4~5種類メロディを考えて録って、それを編集していくんです。Aメロはこっちがいい、Bメロはこっちがいい、サビはこの部分がいい、という具合に編集する。あらかじめメロディがある場合もありますけど、だいたいブースでのほうがいいメロディができる。そうやってどんどんその精度を上げていって、完成したものをアレンジャーに渡して、アレンジしてもらう。そこでメロディが変わることはないです。
──なるほど。
森さんのような鍵盤のアレンジャーと今回みたいな歌モノでがっつりやったことって初めてだったんですよ。なのですごく勉強になりました。僕自身、キーボードの入ったバンドでやったことがなかったんで、ピアノに慣れてない。ギターの人とやってるだけでは聞いたことのない専門用語も出てくるし。特に森さんは音楽が大好きで、ミュージシャンであることにプライドを持ってる方なんで。僕はアレンジャーというよりはプレイヤーなんだよ、みたいなことも言っていて。場を盛り上げながら勉強もさせてくれる。
──他人の意見など聞かず自分の思い通りにやるのではなく、自分よりも詳しいプロフェッショナルと組んで、その人から積極的に吸収しようと。
最初は吸収しようという気はなかったんですけど、自分の曲に対する彼の分析とか、ミュージシャンの人への要求とか見てたら、これはすごい人だなとわかって納得しちゃったんです。三代さんや是永さんはギタリストなんで、また違うんですよね。なので森さんにはいろいろ教えてくださいとお願いしたんですよ。僕はわからないことがいっぱいあるから。でも逆に森さんはギターを弾けない。アレンジしてもらった曲にはギターが入ってこない。ほとんどピアノとベース。なので原曲から一番変わったのは森さんの曲ですね。
──自分が作ったデモから、アレンジャーの手によって曲の雰囲気が変わっていくのに抵抗はありませんでしたか。
森さんの場合は自分が思っているよりも、より理想に近い形にしてくれる。変わっても、カッコよければうれしいですよね。あとは面倒くさいことをやってくれたり、自分が思っていてもうまくできなかったことをやってくれたり。あまりに変わったもんで、最初は「ん?」と思ったときもありましたけど、作業を進めていくうちに「あ、僕がバカでした」みたいな感じになる(笑)。
広がりを求めて、幅広くいろんな人とやる
──森さんは清春さんの作る曲に関して何か言ってましたか?
森さんの場合は僕に対するイメージってなかったと思うんですよ。大昔のイメージしかなくて、今の僕は知らない。で、デモで曲を聴いてもらったら「なんですかこの転調の嵐は」って言われて。でも「面白い」って言ってくださったんです。「意外とちゃんとできるんだね、音楽」って(笑)。
──「意外と」は余計ですね(笑)。
でもそう思われても仕方ないだろうなと思うんです。清春といえば世間一般にはいつまでたっても「忘却の空」だったり「少年」だったり、昔のイメージで捉えられてると思うんです。僕は今のほうがちゃんとやっている自信があるんですけど。でもなかなか業界内でも、同じミュージシャンの方には届いてないなと。真面目にやってても、ともすれば一番不真面目に見えるジャンルじゃないですか。
──そんなことないと思うけど(笑)。
10人いたら3人ぐらいは真面目にやってると思うんですよ。100人いたら20~30人ぐらいはちゃんと音楽について考えてると思うんだけど、そうじゃない人が多いばかりに、30人の人も何も考えてないように見えるジャンルだと思うんですよ。仕方ないことだとは思うんです。
──その真面目にやってない人のことは置いておくとしても、清春さんの真価がなかなか伝わらなかったのだとしたら、何が原因だったんでしょうか。
興味を持たれてなかったんでしょうね。なのでもっと早くお願いしていればよかったな、と。今まで決まったミュージシャンやアレンジャーとずっと一緒にやってきたのは、チームということでよかったんですけど、もうちょっといろんな人たちとやってみてもいいじゃないかという気持ちが、50歳を前にして出てきたんですよ。バンドだとどうしてもメンバーだけになる。それはそれで楽しいんですけど、普通ソロのミュージシャンって毎回いろんな人とやるじゃないですか。作詞家を変えてみたりアレンジャーを変えてみたりエンジニアを変えてみたり。でも僕らはどうしても固定したチームっぽくやってきたので、それはそれでよかったんですけど、もうちょっと広がりを求めて、幅広くいろんな人とやるのもいいのかな、と。
次のページ » ファンの人にとって自慢のアーティストでいたい
- ニューアルバム「SOLOIST」/ 2016年3月30日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / WPZL-31150~1
- 通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12327
CD収録曲
- ナザリー
- 夢心地メロディー
- EDEN
- DIARY
- ロラ
- 瑠璃色
- FUGITIVE
- MELLOW
- MOMENT
- QUIET LIFE
- 海岸線
- メゾピアノ
- 麗しき日々よ
初回限定盤DVD収録内容
SOLOIST special film
- 海岸線 Music Video Spot
- ロラ Music Video -Full Version-
- EDEN Music Video Spot
- ナザリー Music Video -Full Version-
- DIARY Music Video Spot
- MOMENT Music Video -Full Version-
- 夢心地メロディー Music Video -Full Version-
- 瑠璃色 Music VIdeo -Full Version-
- メゾピアノ Music VIdeo Spot
New Album「SOLOIST」発売記念イベント
2016年4月2日(土)
東京都 東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ
START 14:00~
内容:トーク&握手会
2016年4月3日(日)
大阪府 もりのみやキューズモールBASE 1F BASEパーク
START 14:00~
内容:FM OSAKA「BUZZ ROCK」公開録音&握手会
※いずれも観覧フリー
清春(キヨハル)
1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・sadsを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とsadsを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリースする。