音楽ナタリー Power Push - 清春

「本当に音楽が好きな人に届けたい」 新たな布陣で臨んだ3年ぶりソロ作

勉強のために原田真二さんのライブを観に

──それと関係してるのかわかりませんが、今回ガツンとくるロックな曲が1曲も入ってないんですよね。

そうですね! 確かにないですね。

──意図的なものなのか、結果的にそうなったのか。

1月23日の広島CLUB QUATTRO公演の様子。

速い曲は初めから作ろうと思ってなかったですね。唯一「海岸線」という曲だけはバンドでやってもおかしくないと言えばおかしくないけど、かなり音を抜いてますからね。残りはみんなミディアムテンポの曲ですね。なのでロック然としたものじゃない曲、というのは最初から意識してました。その中でも「瑠璃色」って曲は、森さんにやってもらいたくて。ピアノが鳴っているのをイメージした曲なんで。

──ちょっとシャンソンぽいというか昭和歌謡っぽい曲ですね。

そうですね。うん。まあ、原田真二というか。

──あ、原田真二! なるほど。「キャンディ」とか、あんな感じですね。

かなりイメージしてましたね。ああいうピアノポップスというか。

──ちょうど清春さんが少年だった頃に人気があったシンガーソングライターの方ですね。

うん。僕、勉強のために原田さんのライブを観に行ったんです。去年かな。で、お会いして、緊張して帰ってきました(笑)。

──その曲を森さんにお願いした。

そうですね。鍵盤のイメージなので、わかってくれるかなと。

──この曲と、ちょっとジャズっぽい「EDEN」が、このアルバムの中では異色ですね。どちらもピアノにアクセントがあって。

「EDEN」は三代さん(の編曲)なんですけど、最初はもっとロック風だったんですよ。シャッフルのリズムで。でもロックすぎるし、黒夢でもsadsでも似たような曲があるなと思っちゃって。で、ちょっと柔らかい雰囲気にしたくて、鍵盤を入れてギターもジャジーにしてもらって。

ソロは実家のようなもの

──今回アレンジャーの方とあらかじめ話し合ったことは何かあるんですか。

森さんにしろ是永さんにしろ、曲を仕上げていくときに「今の清春くん」という言葉を分かち合いながらやってくれましたね。

──「今の清春さん」。それはなんですか?

世間で思われてる清春じゃなくて、今のリアルな清春、ということですね。

──ふむ。黒夢やsadsみたいなバンドをやってきて、それとは違うソロとしての清春、ということでしょうか。

うーん、なんというかね、どっちかといえばsadsや黒夢のほうが、感覚的には「家出」をしてる感覚なんですよね。

──あ、もうそうなっちゃってますか。

うん。こっち(ソロ)でデビューしてからのほうが(バンドをやってる期間より)長いですからね、もう。特に黒夢は「出稼ぎ」というか。

──出稼ぎ!(笑)

もちろん真剣にやるんですよ、自分のことなんで。でも今自分がどこに住んでるかはデカくて。もともと黒夢の清春、ってとこに住んでれば、ソロは1人で旅に出るみたいな感じなんですけど……うちのお客さんからすると、もうソロがメインなんです。一緒に育ってきたというか、一緒に年齢を重ねてきたから。だから今どこに住んでるか、というのは明確ですね。

──それが「今の清春」ということですね。昨年の12月に黒夢でインタビューしたとき(参照:黒夢 デビュー20周年記念ツアー 特集)清春さんは、自分が一番素直に出せるのはソロだと言っています。「ずーっと聴けるもの、ずっと歌ってられるもの、というのがいいですね。自分の音楽を聴き続けてもイヤにならない、ずっと聴いていられる、っていうのが目標ですね。(中略)本当に信じられるもの、包まれるような感覚があるもの。子宮の中に入ってるような感覚。安心できる感じがある。僕もそういうものを目指したい」とおっしゃってたんですね。それが「今の清春」のやりたいことであり、今作はまさにそういうアルバムに仕上がっているのではないかと思いました。

そのインタビューのときにはもう、(今作のようなものを作りたいと)思ってたんでしょうね。黒夢のツアー中にやったインタビューでしたよね。結局50本やったんですけど、終わったときは終わった感動や達成感というよりは、やっと終わったという安堵感が強くて。やっている最中は肉体的にも精神的にもつらかった。なのでインタビューのときは早く戻りたかったんでしょうね、ソロという「実家」に。

──なるほど。そこでも「バンドっぽくないもの」という意識が働いたということですね。結果的にミディアムテンポのじっくり構えた曲が多くなって、歌および歌詞を聴かせることが今作については大事だったのかな、と。

うーん、そうなっちゃいましたね。僕自身は今回そんなに新しいことを歌ってなくて、今の年齢とか聴いてる人たちのこととか自分の家族とか死生観とか、そういう大きなテーマはあまり変わってない。もちろん歌詞もがんばって書いてるんですけど、どっちかというと曲なのかなと。

──前に取材させていただいたとき、ご自分の中の意識としては、1番に作曲家、2番に作詞家、3番目にボーカリスト、という順番だとおっしゃってましたね。

そう。一番自信があって聴いてほしいところは曲ですね。もちろん歌ももっと思い通りに歌いたいですけど。歌詞は……もちろん自信がないわけじゃなく、もともと歌詞を書くのはそんなに苦手じゃないので。なのでやはり曲……ですね。その部分は評価されたいところです。

ニューアルバム「SOLOIST」/ 2016年3月30日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / WPZL-31150~1
通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12327
CD収録曲
  1. ナザリー
  2. 夢心地メロディー
  3. EDEN
  4. DIARY
  5. ロラ
  6. 瑠璃色
  7. FUGITIVE
  8. MELLOW
  9. MOMENT
  10. QUIET LIFE
  11. 海岸線
  12. メゾピアノ
  13. 麗しき日々よ
初回限定盤DVD収録内容
SOLOIST special film
  1. 海岸線 Music Video Spot
  2. ロラ Music Video -Full Version-
  3. EDEN Music Video Spot
  4. ナザリー Music Video -Full Version-
  5. DIARY Music Video Spot
  6. MOMENT Music Video -Full Version-
  7. 夢心地メロディー Music Video -Full Version-
  8. 瑠璃色 Music VIdeo -Full Version-
  9. メゾピアノ Music VIdeo Spot
New Album「SOLOIST」発売記念イベント

2016年4月2日(土)
東京都 東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ
START 14:00~
内容:トーク&握手会

2016年4月3日(日)
大阪府 もりのみやキューズモールBASE 1F BASEパーク
START 14:00~
内容:FM OSAKA「BUZZ ROCK」公開録音&握手会

※いずれも観覧フリー

清春(キヨハル)
清春

1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・sadsを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とsadsを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリースする。