音楽ナタリー Power Push - 清春
「本当に音楽が好きな人に届けたい」 新たな布陣で臨んだ3年ぶりソロ作
清春が通算9枚目のソロアルバム「SOLOIST」をWarner Music Japanよりリリースする。タイトル通り、黒夢でもsadsでもない、ソロアーティストとしての清春のすべてを注ぎ込んだ力作である。今回は三代堅、是永巧一という清春にとってなじみの深い2人に加え、井上陽水やスガシカオなどの作品を手がけた森俊之が新たにアレンジャーとして参加。歌詞、楽曲、演奏、アレンジ、サウンドプロダクションまで、完成度の高いエモーショナルな傑作に仕上がっている。彼のファンのみならず、多くの人たちにぜひ聴いてもらいたい作品だ。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 西槇太一 ライブ撮影 / 今井俊彦
レコーディングはすぐ終わると思ってた
──大変に素晴らしいアルバムでした。歌詞も曲もサウンドもすごくよく練られていて。傑作だと思います。
ほんとですか? よかったです。
──現在(取材は2月下旬)「TOUR 天使の詩」というツアーの真っ最中で、ツアーが終わってからアルバムが出るという、通常とは逆の形ですね。
そうなんです。去年の10月30日が誕生日だったんですけど、ほんとはそのときに出る予定だったんですが、遅れに遅れて。去年僕は渋谷のMt.RAINIER HALL(東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE)というところで1会場68公演の「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」というアコースティックライブをやったんです。最後のほうは(アルバムの)歌入れとかぶって、声が枯れちゃってレコーディングできなかったり、ミュージシャンのスケジュールの関係もあって。そのときはまだレコード会社も決まってなくて、それでいろいろ右往左往して、遅れることになってしまったんです。ツアーは飛ばせないし。なのでツアーが始まる前に、期間限定で配信したんですよ。
──ああ、ラフミックスバージョンの先行配信ですね。
はい。それを通じてファンの人は曲を聴いているので、アルバムプロモーションをしながらツアーをしようか、という形になりましたね。
──じゃあ今のツアーでこのアルバムの曲も……。
全曲やってます。(アルバムの)曲順通りに。やってない曲も日によってはあるんですが、体調によって。
──ということは、アルバムが出る時点ではファンの人にとってはおなじみの曲なんですね。
そうです。やっと手元に来た、という。
──レコーディングそのものはけっこう前から始まっていたんですか。
いつだっけなあ……去年の夏ぐらいですかね。今回は13曲中7曲が前からある曲で。「海岸線」は10年前の2ndアルバムに入ってる曲と同じ日に作ってます。「MONENT」「MELLOW」「QUIET LIFE」も5年以上前に作ってますね。「麗しき日々よ」は前のツアーのときに作ってるので、3年ぐらい前の曲です。未発表だったけどライブではやってたんですね。なので歌詞もできあがっていたから、歌詞を書く時間が省けるのでレコーディングはすぐ終わると思ってたんですけど……レーベルが決まらなかったのが大きかったかも。一時は自分のところで出そうかな、と思ったり。そうこうしているうちにずれていった、という感じです。
ロック界以外の人たちともやってみたかった
──前にレーベルを決めたときとは音楽業界の状況もだいぶ違いますよね。メジャーとやる意味が改めて問い直される場面もあったのでは。
うーん、なんて言うのかな……エイベックス(前所属レーベル)とやる前に、流通だけメジャーって形でリリースしたことがあるんですよね(2007年リリースの「FOREVER LOVE」)。それはよかった部分もあるんですけど、広まらないな、という気がしたんです。お店に(CDが)置いてないとか、そういうことがあって。なので大きくても小さくてもメジャーにしよう、と決めたんですね、今回は。決まらなかったら今作だけは自分のとこで出してもいいと思ってたんですけど、たまたま縁があって。
──前のアルバムは全曲三代堅さんのアレンジでしたが、今回は森俊之さん、是永巧一さんと3人が担当されてますね。三代さんも是永さんも清春さんとは付き合いが長いですが、森さんは初顔合わせで、「瑠璃色」「メゾピアノ」と2曲を担当されてます。
はい。簡単に言うと「流れを変えていきたい」ということですね。黒夢もsadsもだいたい三代さんなんで。それでもよかったんですけど、40代後半になってきて、自分より年上でタイプの違うロック界以外の人たちともやってみたいという気持ちが芽生えて。森さんは前からオススメされてて、でもなかなかスケジュールが合わなかったんですけど、今回お願いしたらやっていただけました。井上陽水さんのカバーアルバム「UNITED COVER 2」(2015年)に森さんがアレンジャーとして参加されていて。「シルエット・ロマンス」と「リフレインが叫んでる」を聴いたんですよ。それが超よくて、やっぱりお願いしようと。是永さんは黒夢の流れでギターを弾いてもらってるんで、今回は是永さんにもアレンジをお願いしようと思いました。
──演奏は全曲ギターが是永さん、ベースが沖山(優司)さんですね。ドラムは?
三代堅さんのアレンジ曲がcoldrainのKatsuma、是永さんのアレンジ曲が松永俊弥さん(パール兄弟)、森さんのアレンジ曲は沼澤尚さんですね。
──前回はすごくいろんなミュージシャンが参加されてましたが、今回は固定したということですね。
ドラマーも全曲Katsumaでいいかなとは思ってたんですが、ちょうど彼が海外に行く寸前で、6~7曲しか叩けなかったんです。アレンジャーから「このドラマーでいきたい」と指定もあったし。沼澤さんはもちろん前から知ってましたし、松永さんは今回初めてお会いしたんですが、とてもいい仕上がりだったので、結果的にはよかったかな、と。ただ、バンドっぽくなるのを避けたかったというのもありますね。
──バンドっぽくしたくなかった?
アルバムタイトルにもある通り「SOLOIST」というのが今回のテーマでしたから。バンドはほかにやってるので分けたい、というのもちょっとある。
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- ニューアルバム「SOLOIST」/ 2016年3月30日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / WPZL-31150~1
- 通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12327
CD収録曲
- ナザリー
- 夢心地メロディー
- EDEN
- DIARY
- ロラ
- 瑠璃色
- FUGITIVE
- MELLOW
- MOMENT
- QUIET LIFE
- 海岸線
- メゾピアノ
- 麗しき日々よ
初回限定盤DVD収録内容
SOLOIST special film
- 海岸線 Music Video Spot
- ロラ Music Video -Full Version-
- EDEN Music Video Spot
- ナザリー Music Video -Full Version-
- DIARY Music Video Spot
- MOMENT Music Video -Full Version-
- 夢心地メロディー Music Video -Full Version-
- 瑠璃色 Music VIdeo -Full Version-
- メゾピアノ Music VIdeo Spot
New Album「SOLOIST」発売記念イベント
2016年4月2日(土)
東京都 東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ
START 14:00~
内容:トーク&握手会
2016年4月3日(日)
大阪府 もりのみやキューズモールBASE 1F BASEパーク
START 14:00~
内容:FM OSAKA「BUZZ ROCK」公開録音&握手会
※いずれも観覧フリー
清春(キヨハル)
1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・sadsを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とsadsを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリースする。