ナタリー PowerPush - 喜多村英梨×小松未可子

キタエリ×みかこしの「神ない」サウンド解体新書

エンディングテーマは誰のもの?

──「終わらない~」って歌いやすかったですか?

歌いやすくはなかったです(笑)。

──それはなぜ?

今までの自分の歌い方を一旦捨て去って、新しいものを構築しようとしたので。ちょっと話しかけるように歌ってみたりとか、ビブラートを使わずにストレートにスーッと伸ばして歌ってみたりとか。完全にメロディや 歌詞の世界に引っ張られるんじゃなくて、ニュートラルに歌おうとしたんですけど、やっぱり染みついた自分のクセを捨てるのって本当に難しくて。

──なぜニュートラルに歌おうと?

「神ない」のエンディング曲だから、感情移入せずに世界を俯瞰したほうがいいんだろうなって思ったので。実際「神ない」を観ているときの私ってけっこう俯瞰的なんですよ。というのも、もしもヒロインのアイみたいな事態が自分の身に降りかかったらどうしよう、って考えてしまうんです。

──自分が何者なのかを知るための、そして温かいんだけど閉じた世界から飛び立つための通過儀礼として、父なる者と母なる者を殺される場面から始まるお話ですもんね(笑)。

なんですけど、いち視聴者として観ているとすごく楽しくて。残酷でドキッとする話なんだけど、逆にそれがちょっと快感というか(笑)。そうやって人の数だけ答えがある物語なのに、エンディング曲を歌う私がなんらかの感情を込めちゃうと、聴いている方を特定の答えに誘導することになっちゃうかな、と。あくまで世界に寄り添うだけ。朗読とまでは言わないものの、ニュートラルに物語の世界観だけを伝えて、あとは皆さんにいろいろ考えてもらえるように歌いたかったんです。

「迷子のまま歌う」という正解

──小松さんは「神ない」においてエンディング曲のボーカリストであると同時に、ウッラ・エウレウス・ヘクマティカ役の声優でもある。アニメ「K」のエンディングテーマ「冷たい部屋、一人」を歌ったときのように(参照:小松未可子「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」インタビュー)、アニメの中で自身が演じているキャラクターに寄り添ってみるというアプローチもできたのでは?

ウッラからは逆に離れるようにしました。彼女はちょっと独特なキャラクターというか、「神ない」の根っこの部分、死者が死なないっていう設定にすごく深く関係しているキャラなので。「生や死についてウッラはこう考えているんじゃないかな?」って気持ちで歌うと、やっぱり聴いている方を誘導することになると思うんです。それに「終わらないメロディーを歌いだしました。」の歌詞も「死者が死なない」ことに対して明確な答えは出してない気がしていて。

──「終わらないメロディー」のことを「とても大好き」で「少し切な」いものだとしつつも、サビでは「sweet love in love world」と、その「とても大好き」で「少し切な」いメロディや世界のことを愛してもいる。確かに特定の感情に寄り添っている歌詞ではないですね。

だから死んでるのに生きていることを「変だな?」って思うのも、「生きててよかったね」って思うのもきっと正解なんですよね、きっと。そういう誰もが正しくて、ちょっと間違ってる迷子のようなお話なので、やっぱりあくまでニュートラルに。私もちょっと迷子のまま歌ってみるくらいで、ちょうどいいのかなって思ってます(笑)。

──そういうボーカルのプランってどうやって組み立てるんですか?

レコーディングのときにいろいろディスカッションしながらですね。周りの方の意見を聞いて納得できればそれを踏まえつつ、自分の解釈を加えてみたりして。逆に腑に落ちなければ「こういうのはどうですか?」なんてお話をさせていただいて、またいろいろ考えてみたりとか。いろんな方の意見に耳を傾けて、ひたすら自分の中に落とし込むっていう作業を繰り返してました。

「納得してないから歌えてるんだ」

──ぶっちゃけた話、この曲って自信作ですよね。

「自分の今の100%、マックスを出し切って自信のあるものを作りました!」っていう気持ちはあります。ただ「自分はここまでやりたいんだ!」「でもどうしても届かないんだ!」っていう気持ちも常にあって。ありがたいことにナカムラさんからもホメていただいたんですけど、どこか自分の中で納得できてないというか。「まだまだがんばれなかったかな?」って思っちゃうんです(笑)。

──とはいえナカムラさんがウソをついているわけではないと思うんですよ。その周囲の評価と自己評価のギャップにはどうやって折り合いを付けるんですか?

「逆に納得してないから歌えてるんだ」って信じるようにはしています。常に足りないと思っているからマックスの力を出すようにしているんだろうな。だから自分の今の限界、頂点だと思えることができてるんだろうな、って。

小松未可子 ニューシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」/ 2013年7月24日発売 / スターチャイルド
通常盤[DVD] 1500円 / KICM-91464
通常盤[DVD] 1200円 / KICM-1465
初回限定盤収録曲
  1. 終わらないメロディーを歌いだしました。 [作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)]
  2. LISTEN!! [作詞・作曲・編曲:前山田健一]
  3. 終わらないメロディーを歌いだしました。(off vocal ver.)
  4. LISTEN!!(off vocal ver.)
通常盤収録曲
  1. 終わらないメロディーを歌いだしました。
  2. ABC (終わらないサンバを刻みはじめました。 ver.)
  3. 終わらないメロディーを歌いだしました。(off vocal ver.)
  4. ABC (終わらないサンバを刻みはじめました。 ver.)
喜多村英梨 ニューシングル「Birth」/ 2013年8月7日発売 / KING RECORDS
初回限定盤[CD+DVD] 1890円 / KICM-91460
通常盤[CD] 1200円 / KICM-1460
CD収録曲
  1. Birth
  2. Lifetime Trader
  3. Birth (Off Vocal Ver.)
  4. Lifetime Trader (Off Vocal Ver.)
初回限定盤DVD収録内容
  • Birth(Music Clip)
喜多村英梨(きたむらえり)
喜多村英梨

「キタエリ」の愛称で知られる声優・アーティスト。2003年に声優としての活動を開始し、出演作品は「フレッシュプリキュア!」「まよチキ!」「魔法少女まどか☆マギカ」「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!! 」など多数。歌手としては2004年4月にデビューを果たし、2011年にスターチャイルドに移籍。3枚のシングルがヒットを記録し、2012年7月に1stアルバム「RE;STORY」をリリース。オリコン週間アルバムランキングで最高5位をマークする。同11月には4thシングル「Destiny」を、2013年1月に5thシングル「Miracle Gliders」を発表し、8月には6thシングル「Birth」をリリースした。

小松未可子(こまつみかこ)
小松未可子

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動しながら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月24日、3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を発表した。