「氣志團万博2018」特集|平成最後の「万博」を終えて綾小路 翔が思うこと

必ずしも大トリっておいしくない

──これまでも1日だけトリをやったことはありましたが、今年は「氣志團万博」が始まって以来初めて氣志團が2日ともトリを務めました。これは、何が理由だったんでしょう?

そもそも出演者の皆様全員がご多忙なわけです。そんな中でご要望どおりの出順を組むのは至難の業。そのため、かなりの無理も聞いていただいていて。ならばせめて自分たちは、空いてしまったところが朝イチだろうが昼前だろうがなんだろうが、どこでも出るのが筋だろうと思い、これまでやってきて。そしたら今回はなぜか気がついたらどっちの日もトリが空いていたという(笑)。ただ、やることになってみて、フェスのトリというものについて、ちょっといろいろ考えることもあって。

──というと?

いや、トリって、一番いい時間帯と思われがちだけですけど、一番厳しい時間帯でもあって。どのフェスでも大体そうですけど、トリの前に帰るお客さんってけっこういるじゃないですか? 渋滞しちゃうし、疲れたしって。必ずしも大トリっておいしくないっていう。

──特に「氣志團万博」のようにジャンルがバラバラな出演者が集まっているフェスでは、必然的にそういうことも起こりやすいですよね。

そうなんですよ。時間が押していたら調整したりするのもトリの役割ですしね。だったら、主催している自分たちが責任を持って、腹を括ってトリを務めることも大事なのかなって。来年以降はどうなるかわからないですけど、今年はこういう形でやってみようと。

──でも、それだけじゃなく、ステージに挑む意気込みも今年はちょっと違ったように感じたんですけど。

氣志團(撮影:青木カズロー)

メンバーに言ったんですよ。「ほとんどのお客さんは、見てもアタマの3曲だぜ」って。

──でも、2日ともセットの前半では派手な仕掛けのある曲をやるんじゃなくて、いきなりインストから始まるというかなりコアな選曲で、バンドの演奏と歌のメッセージだけに焦点を当ててましたよね。

そうなんです。見てもアタマの3曲だからこそ、そこでちゃんと自分たちの音楽を聞かせたかった。何か大ネタをやるのは、そこで帰らなかった人へのオマケでいいんじゃないかって。

──でも、実際に途中で帰る人なんてほとんどいなかったですよ。

いや、本当にそれはありがたかったですね。フェスって、結局ヒット曲が強いじゃないですか。誰もが知っているヒット曲をいくつ持っているかで、勝負が決まってしまうようなところがある。でも、ちょうど今年の「氣志團万博」の前に、マリンスタジアムでやった「AIR JAM」に行ったんですよ。そこで出てきたThe Birthdayのライブが本当にすごくて。誰もが知ってる曲というわけじゃないのに、自分も含め、スタジアムにいるお客さん全員を音楽の力だけで完全に撃ち抜いているんですよ。その様子を観て、とても勇気付けられたんですよね。

和田アキ子(撮影:青木カズロー)

──フェスだから、盛り上げるところは盛り上げなきゃいけないでしょうけど、ステージで矜持を見せるということも大事だってことですよね。今年、和田アキ子さんがステージでアレサ・フランクリンの曲をやったのもそういうことなんでしょうね。正直、名曲の連打に歓声をあげていたお客さんも、あのときだけはちょっとキョトンとしてましたけど、ステージに立つ人間にとって、お客さんを盛り上げるだけではなく、自分にとってやらなくてはいけないことがある。

うんうん。本当にそうでしたね。

──最後に、来年以降の展望を聞かせてください。

フェスとしてのフォーマットというのは、7年目にしてようやく固まってきたと思うんですよ。あとは、みんなが幸せになるためにも、全日ちゃんとチケットを完売させることですね。さっき、これまでで一番楽しかった日だったと言いましたけど、その1日目を完売できなかったんですからね。

──ただ、1日目も会場にいた体感としてはお客さんは1日中たくさんいたし、現在のインフラでやれるフェスとしては、かなり理想型に近付いていると思います。

ありがとうございます。もちろんブッキングも重要ですし、これからもみんなにワクワクしてもらえるフェスを実現するためにブッキングもがんばっていきたいと思ってますけど、結局、一番大事なのは僕たちへの信頼感なんですよね。「『氣志團万博』だったら間違いないから行こう」「9月のこの週末は『氣志團万博』に行くって毎年決めてる」って、どれだけ多くの人に思ってもらえるか。僕もフェスを始めた頃は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」だとか「FUJI ROCK FESTIVAL」だとか、そういう大きなフェスへの強い対抗意識を持ってましたけど、そうした成功して続いているフェスがどれだけすごいものなのかっていうのは、毎年やればやるほど痛感するようになってきましたね。今年は、そういうこれまでずっとモヤモヤしていた感情がいろいろ整理のできた『氣志團万博』でした。氣志團としての活動も含めて、今すごく「ヌケた」という実感があるので、来年も楽しみにしていてください!

氣志團(撮影:上山陽介)
シミズオクト Presents 氣志團万博2018
~房総爆音爆勝宣言~

氣志團の主催で9月15日、16日に千葉・袖ヶ浦海浜公園にて行われた野外フェスティバル。2003年と2006年に氣志團の大型野外ライブとして開催された「氣志團万博」が、2012年より会場を袖ヶ浦海浜公園に移し、フェス形式で行われるようになった。現在の形式では7回目の今年は2日間合わせて34組が出演。氣志團は万博史上初の両日大トリを務めた。

出演者

9月15日

YASSAI STAGE

森山直太朗(OPENING CEREMONY ACT) / SiM / JUN SKY WALKER(S) / レキシ / Dragon Ash / 和田アキ子 / マキシマム ザ ホルモン / 氣志團

MOSSAI STAGE

オメでたい頭でなにより(WELCOME ACT) / KEYTALK / 岡崎体育 / 04 Limited Sazabys / coldrain / BiSH / 竹原ピストル / 打首獄門同好会

9月16日

YASSAI STAGE

AMEMIYA(OPENING CEREMONY ACT) / ゴールデンボンバー / グループ魂 / 東京スカパラダイスオーケストラ / ももいろクローバーZ / 10-FEET / HYDE / THE ALFEE / 氣志團

MOSSAI STAGE

DJダイノジ(WELCOME DJ) / ベリーグッドマン / LiSA / ORANGE RANGE / the GazettE / 森山直太朗 / ヤバイTシャツ屋さん / MIYAVI

番組情報

WOWOWにて「氣志團万博2018」を12時間にわたり独占放送決定!

初日

  • 前編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)12:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)15:00~

2日目

  • 前編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)18:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)21:00~
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Vo)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。結成20周年を迎えた2017年8月にはら豪華アーティストの楽曲提供によるアルバム「万謡集」を発表。今年8月、「氣志團万博2018」公式テーマソングの「週末番長」をシングルリリースした。