「氣志團万博2018」特集|平成最後の「万博」を終えて綾小路 翔が思うこと

THE ALFEEは氣志團にとっての大きな指針

──そういう意味で、今年の目玉はTHE ALFEEでした。

THE ALFEE(Photo by HAJIME KAMIIISAKA)

実はTHE ALFEEには長年お願いし続けていたんですけど、やっぱりなかなかTHE ALFEEとしてはおいそれと動けないわけで。やっぱり、あの3人が集まるっていうのは、すごく大きなことなんですよね。何かよほどの大きな理由がない限りTHE ALFEEとしては動けないし、それこそこれまでフェスにも一切出たことがない。

──煽りVの中で言及されてましたけど、フェスが始まる前、スタジアム以外の野外での大規模ライブといえば、THE ALFEEは間違いなく日本の音楽シーンのパイオニアだったんですよね。それこそGLAYやLUNA SEAが野外で大きなライブをやるようになる、その何年も前から毎年のようにいろんなところでやっていた。

しかも、毎回ものすごい規模のステージセットだったんですよね。「氣志團万博」を始める前、資料として当時のTHE ALFEEのビデオを持っていったことがあるんですけど、舞台監督から「頼むから、これを参考にしないでくれ」って言われて(笑)。

──今では考えられない規模と場所でやってますよね?

有名な話だと、1986年にお台場の埋立地で「TOKYO BAY-AREA」っていうライブを10万人集めてやったんですけど、その時のタイトルがきっかけであのあたりがベイエリアと呼ばれるようになったとか。

──すごい話ですね(笑)。

いやあ、今回の「氣志團万博」でもTHE ALFEEはやっぱり強かったですよねえ。演奏力も歌唱力もステージングも別次元だったし。そんでもって想像以上に出音もデカかったし(笑)。僕、ずっとTHE ALFEEのこと大好きだったんですよ。

──世代的に、自分の世代はほぼ全員が原体験として通ってるんですけど、翔さんの世代だとちょっとあとなんじゃないですか?

THE ALFEEの高見沢俊彦。(Photo by HAJIME KAMIIISAKA)

今回まさかの演奏をしてくださいましたが、「FLOWER REVOLUTION」という曲があるじゃないですか。1990年の花博(大阪で開催された万博「国際花と緑の博覧会」)のテーマソングです。あの曲を最初に聴いたときの衝撃がすごすぎて。世の中的にはバンドブームが来てた時代で、自分はもちろんそっちも大好きでしたけど、桜井(賢)さんの美声、坂崎(幸之助)さんの笑顔、そしてサビ前の高見沢(俊彦)さんの絶叫、そのうえまるで同じグループとは思えない出で立ちの3人による、一糸乱れぬハーモニーをテレビで目撃して、「なんなんだこの人たちは!」って慄いて。感動と驚嘆と混乱が同時に訪れたと言うか……はたまた、盆とハロウィンとクリスマスとお正月が一緒にやって来たと言うか……。

──わかります。

世代的に、周りではあんまり聴いてる人はいなかったんですけど、そこからハマっていろいろ聴いていくうちに、好きな曲がどんどんでてきて。音楽性がフォークから急にロックになったこともあって、実験的なこともたくさんやってるんですよね。そうかと思うと、テレビのバラエティにもみんなバラバラで出てるし。

──バンドでありながら、音楽シーンと芸能を横断しているという意味では、氣志團にも通じる部分はありますね。

THE ALFEEって、歌謡界の王道にいながらにして異常な芸達者集団でもあって。それで、自分にとってはずーっと気になる存在であり続けてきたんですね。でも、お三方に会ったら「気がついたらレジェンドみたいにされちゃったけど、俺たちのことを誰も尊敬してないんだよね」って言ってて(笑)。

──でも、それってすごくないですか?

本当にすごいですよ。それでいて、ミュージシャンとしての実力はずば抜けてて。だから、そういう3人の本気のカッコいいステージを、今回こうして「氣志團万博」で披露していただけて、それをあそこに集まっている幅広いジャンルのオーディエンスに見せられたことにはすごく達成感がありましたし、あの「テレビタレントだと思われていながらも、実際に音を出したらすごい」っていうあり方って、僕ら氣志團としても今後の大きな指針だなって改めて思いましたね。

トリを終えて出迎えられ「僕、これがやりたかったんだな」

──今回「氣志團万博」皆勤組で言うと、ももクロはメンバーが4人になって、HYDEさんはVAMPSではなくソロでの参加ということになりました。HYDEさんは冗談半分で「『氣志團万博』にひと区切りつけるのにちょうどいい機会だと思ったんだけど……」とステージ上で言ってましたが(笑)。

HYDE(撮影:上山陽介)

(笑)。でも本当に、バンドやグループが変わらずにいることってなかなか大変なことなんだなって、改めて思いましたね。もともとはもう1組、皆勤組では仙台貨物がいたんですけど、彼らは完全に活動停止してしまいましたし。今年出ていただいたバンドだと、それこそ東京スカパラダイスオーケストラだって、Dragon Ashだって、これまでにいろんなことを乗り越えてきたバンドですしね。まあ、今年のマキシマム ザ ホルモンの終演後の一時ライブ活動休止の発表に関しては、会場がすっかり変な空気になっちゃって、その後にステージに出る我々の身にもなってくれよとは思いましたけどね(笑)(※9月15日の「氣志團万博」ではライブ活動を休止することと今後のライブのキャンセルについてのみ発表され、その理由がダイスケはんのヘルニア手術であることは明かされなかった)。

──もちろんダイスケはんには早く完治をしてライブに戻ってきてほしいですけど、あの段階では何が何だかわからなくて。お客さんの中には、ネタだと思ってる人もいましたし……。

マキシマム ザ ホルモン(撮影:浜野カズシ)

自分も最初に聞いたとき「え?『氣志團万博』で発表するの?」と思ったんですよ。しかも、2日後の「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2018」と2回に分けて発表したいと言う。まあでも、彼らとは20年来の付き合いですからね。もう絶対の信頼があるわけですよ。「ホルモンのことだから、このシリアスな案件すらも絶対に面白くしてくれる」って。だから、映像を使って発表したいと言われたときも「どうぞどうぞ」と。こちらも完全にノーチェックで。そしたら、「何これ?」っていう(笑)。客席もバックステージもまさかの絶句(笑)。一周回って突っ込んじゃいましたもん。「何スベってんねん!」って(笑)。でも、今年の1日目は「氣志團万博」を始めて以来、ずっと夢見ていたことが実現したんですよ。

──え? 何ですか?

トリのステージを終えて、ステージ裏に戻ってきたら、ほかの出演者やバンド仲間がみんなほとんどまだ残っていてくれて、僕らのことを出迎えてくれたんです。そのまま会場で打ち上げ大会になって、みんないい感じに酔っ払ってくれて。正直、打ち上げの間はずっと泣きそうでしたよ。

──ああ、以前から言ってましたよね。最近のフェスは、みんな自分の出演時間が終わるとさっさと会場をあとにしてしまう。「氣志團万博」では、そうじゃない空気を作りたいんだって。

はい。実は僕、これがやりたかったんだなって。氣志團のライブでさえ、その日のうちに東京に帰れるところだと、メンバーが無言でそのまま家に帰っていくことも最近では珍しくなくて。それだけが理由で「バンド、やめたいな」って何度も思ったくらいで(笑)。自分がなんのためにバンドをやってるかって言ったら、打ち上げをやるためにやってるわけだから!

──(笑)。

Dragon Ash(撮影:上山陽介)

いや、本当にバンドっていいなって、心から思いましたね。Dragon Ashのおかげなんですよ。彼らが率先して、あの日はそういう空気を作ってくれた。木更津なんて東京のすぐ近くだから、帰りたい人もいたと思うんです。会場入りが朝だった出演者もたくさんいたし。でも、特にバンドの出演者はほとんど最後まで残ってくれていた。本当にうれしかったですよ。SiMとか、coldrainとか、打首獄門同好会とかそういう若いバンドが、レキシの池ちゃん(池田貴史)とか(森山)直太朗とかと一緒になってキャーキャー言い合って。自分もまだ翌日があるのに、すっかり声が涸れるまではしゃいじゃって。正直、これまで「氣志團万博」をやってきた中で一番楽しかったのが、今年の9月15日でした(笑)。

シミズオクト Presents 氣志團万博2018
~房総爆音爆勝宣言~

氣志團の主催で9月15日、16日に千葉・袖ヶ浦海浜公園にて行われた野外フェスティバル。2003年と2006年に氣志團の大型野外ライブとして開催された「氣志團万博」が、2012年より会場を袖ヶ浦海浜公園に移し、フェス形式で行われるようになった。現在の形式では7回目の今年は2日間合わせて34組が出演。氣志團は万博史上初の両日大トリを務めた。

出演者

9月15日

YASSAI STAGE

森山直太朗(OPENING CEREMONY ACT) / SiM / JUN SKY WALKER(S) / レキシ / Dragon Ash / 和田アキ子 / マキシマム ザ ホルモン / 氣志團

MOSSAI STAGE

オメでたい頭でなにより(WELCOME ACT) / KEYTALK / 岡崎体育 / 04 Limited Sazabys / coldrain / BiSH / 竹原ピストル / 打首獄門同好会

9月16日

YASSAI STAGE

AMEMIYA(OPENING CEREMONY ACT) / ゴールデンボンバー / グループ魂 / 東京スカパラダイスオーケストラ / ももいろクローバーZ / 10-FEET / HYDE / THE ALFEE / 氣志團

MOSSAI STAGE

DJダイノジ(WELCOME DJ) / ベリーグッドマン / LiSA / ORANGE RANGE / the GazettE / 森山直太朗 / ヤバイTシャツ屋さん / MIYAVI

番組情報

WOWOWにて「氣志團万博2018」を12時間にわたり独占放送決定!

初日

  • 前編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)12:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)15:00~

2日目

  • 前編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)18:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2018年11月23日(金・祝)21:00~
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Vo)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。結成20周年を迎えた2017年8月にはら豪華アーティストの楽曲提供によるアルバム「万謡集」を発表。今年8月、「氣志團万博2018」公式テーマソングの「週末番長」をシングルリリースした。