音楽ナタリー PowerPush - 己龍

ヴィジュアル系に生きて

「和製ホラー」で試行錯誤

──「気持ち悪いヴィジュアル系」は確かにわかりづらいかも。カッコいいだけじゃない、ということはわかりますけど。

一色 そうですね。まあカッコいいバンドはたくさんいるんで。

遠海 プラスαがないと、絶対に上には行けないと思うんです。何百っているヴィジュアル系のバンドの中で頭1つ抜け出るためには、ほかとは違うものがないと。

酒井 どうしたらインパクトが出せるか?っていうのは、ずっと考えてました。「和製ホラー」っていう言葉が出てきてからも、「じゃあ、和製ホラーって何?」っていう試行錯誤を続けていて。

──そのイメージを楽曲やライブに落とし込んでいかなくちゃいけないわけですからね。

遠海准司(Dr)

遠海 それが固まるまでに2年くらいかかったかな? 一時はだいぶ迷走してしました。

──2009年のシングル「月ノ姫」あたり?

遠海 そうですね。

酒井 それまではだいぶブレてましたね。

遠海 同じことをしている先輩なんてもちろんいないから、自分たちだけでずっと考えて。今の事務所に入ったのも、1つの転機ですね。

一色 客観的な意見がもらえるからね。「和製ホラーって言ってるのに、なんで着物を着ないの?」とか(笑)。

酒井 「ああ着物! それは確かにわかりやすい!」ってなって、事務所に入ったタイミングから着るようになった(笑)。

一色 和柄の衣装って、自分たちだけで用意するにはハードルが高かったってこともあるけどね。

情報量の多い曲にワクワク

──楽曲についてはどうですか? もちろん和の要素はふんだんに盛り込みつつ、演奏テクニックを強調した楽曲も多いと思うのですが。

酒井 僕自身、難しいことは全然できないんですよ。基本的に独学だし、「速弾きをするためには、こういう練習が必要」みたいな基礎をすっ飛ばしてるから、今さらやろうと思ってもできなくて。ただ、ヘンな曲を作ろうという意識は常にありますね。わけのわからないようなリズムだったり、聴いたことのないようなコードを使ってみたり。不協和音もかなり入ってると思います。それをどこまでOKにするかは、僕と武政の感覚で決めてるんですけど。

──もし外部のプロデューサーが入ったら、いろいろ言われそうですね。「ここ、音がぶつかってるよ」とか。

酒井 言われるでしょうね(笑)。もしそうなったら「やっぱり俺らは自分でやります」ってことになりそう。

九条 理論的なことを言われても「いや、俺らはこっちがカッコいいと思うんで」って通しちゃうでしょうね。

一色日和(B)

一色 参輝と武政がプロデューサーの役割もやってるからね。

──九条さんも「ヘンな曲を作る」という意識がある?

九条 そうですね。あと、情報量の多い曲が好きなんですよ。アレンジするときも極力、左右の耳にいろんな音が飛んでくるようにしたいんです。ボーカルのメロディだけではなくて、ドラム、ギター、シンセとかがどんどん飛び込んでくる曲というか。これは僕の感覚なんですけど、情報量の多い曲ってワクワクするんですよね。「次はどんな音が飛んでくるんだろう?」って。その高揚感をファンに伝えたいっていうのはありますね。

──情報量が多い曲というと、アニソンやボカロPの楽曲にも共通してますね。

九条 うん、そうですね。実際、そういう音楽は個人的にも好んで聴いてるので。

一色 アイドルも聴いてるよね。

九条 でんぱ組.incとか。ヒャダインさんがアイドルに提供した曲も大好きですね。

どう弾けばいいの

──己龍の楽曲はどれもかなり奇天烈なフレーズが多いですよね。

遠海 僕はもともとメタル系が好きだし、難易度の高いフレーズが多くてもできないことはないんですよ。武政と参輝も「これくらいはやってくれるよね?」という感じでデモを作ってると思うし。そもそも僕が叩けないことで、曲の幅を狭めたくないですからね。

一色 面食らうことは多いですけどね。デモを聴いて「これ、どうやって弾くんだろう?」って思うこともけっこうある。一度、武政に「どう弾けばいいの?」って聞いたことがあるんですよ。そしたら「知らない。がんばって」って言われた(笑)。

ライブの様子。

──キッズたちもコピーしづらいでしょうね(笑)。

一色 確かに己龍の完コピバンドは見たことないな。

酒井 ギターだけとかではコピーしてる人がいるんですよ。リリースした翌日に必ず“弾いてみた”の動画をアップする猛者もいるし。

一色 そんなにすぐアップしてる人いるんだ?

酒井 うん。「弾いてるフレーズが違うぞ!」って思う部分もあるけど、シンセがすごく多いから、簡単には完コピできないんですよね。バンドスコアを出すときは、クリックとシンセのデータを付けないと(笑)。

──楽曲の情報量が多くて、複雑なアンサンブルだと、歌も演奏も難易度が高そうですよね。

九条 ボーカルからも文句言われてます。「めちゃくちゃなメロディを付けやがって」って(笑)。でも、レコーディングするたびにバンドがスキルアップしてると思います。

黒崎 いつも試行錯誤しつつ、なんとか歌ってます。

酒井 ちょっとずつキーを上げてますからね……気付かれないように。

黒崎 いやいや、気付いてるよ!(笑)

ニューシングル「九尾」2015年4月1日発売 / B.P.RECORDS
初回限定盤Atype [CD+DVD] 1080円 / BPRVD-158
初回限定盤Btype [CD+DVD] 1080円 / BPRVD-159
初回限定盤Ctype [CD+ブックレット] 540円 / BPRVD-160
初回限定盤Dtype [CD+ブックレット] 540円 / BPRVD-161
初回限定盤Etype [CD+ブックレット] 540円 / BPRVD-162
初回限定盤Ftype [CD+ブックレット] 540円 / BPRVD-163
初回限定盤Gtype [CD+ブックレット] 540円 / BPRVD-164
通常盤Htype [CD] 540円 / BPRVD-165
通常盤Itype [CD] 540円 / BPRVD-166
通常盤Jtype [CD] 540円 / BPRVD-167
初回限定盤A、B、C、D、E、F、Gtype CD収録曲
  1. 九尾
初回限定盤Atype DVD収録内容
  • 「九尾」ヴィデオクリップ+オフショット
初回限定盤Btype DVD収録内容
  • 「九尾」マルチアングルPV
初回限定盤C、D、E、F、Gtypeブックレット
  • 黒崎眞弥版(Ctypeのみ)
  • 酒井参輝版(Dtypeのみ)
  • 九条武政版(Etypeのみ)
  • 一色日和版(Ftypeのみ)
  • 遠海准司版(Gtypeのみ)
通常盤H、I、Jtype CD収録曲
  1. 九尾
  1. 後ノ今宵(※Htypeボーナストラック)
  1. 鬼ノ傀儡(※Itypeボーナストラック)
  1. 露一筋(※Jtypeボーナストラック)
特典
  • 特典応募券「初回A」(Atypeのみ)
  • 特典応募券「初回B」(Btypeのみ)
  • 特典応募券「初回C」(Ctypeのみ)
  • 特典応募券「初回D」(Dtypeのみ)
  • 特典応募券「初回E」(Etypeのみ)
  • 特典応募券「初回F」(Ftypeのみ)
  • 特典応募券「初回G」(Gtypeのみ)
  • 特典応募券「通常H」(Htypeのみ)
  • 特典応募券「通常I」(Itypeのみ)
  • 特典応募券「通常J」(Jtypeのみ)

※初回限定盤封入特典:トレカ2枚(全10種)

※全タイプ購入応募特典:応募者全員に「龍跳狐臥」ツアーパンフレットプレゼント

己龍(キリュウ)

黒崎眞弥(Vo)、酒井参輝(G)、九条武政(G)、一色日和(B)、遠海准司(Dr)からなるヴィジュアル系バンド。2007年に結成し、バンドのサウンドコンセプトを「和製ホラー」、ビジュアルコンセプトを「痛絶ノスタルジック」と銘打ち活動している。2009年10月にリリースしたシングル「月ノ姫」がオリコンのインディーズチャートで1位を記録するなど着実に知名度を上げ、2012年に47都道府県ツアー「47都道府県単独巡業『朱花艶閃』」を実施。その後も精力的なライブ活動を続け、翌2013年には2度目の47都道府県ツアー「47都道府県単独巡業『愛怨忌焔』」を開催し、東京・Zepp Tokyoで千秋楽を迎えた。日本のみならず海外にも進出しており、2014年4月に韓国、中国、香港、台湾を巡る単独アジアツアーを敢行。同月に4thフルアルバム「暁歌水月」を発表し、全国のCDショップを巡るインストアイベントツアーとワンマンツアー「己龍単独巡業『暁歌水月』」を行った。11月から12thシングル「天照」のリリースを記念して全国のホールクラスの会場を巡るツアー「己龍単独ホール巡業『雅神天照』」を実施。2015年4月に13枚目のシングル「九尾」をリリースし、3度目の47都道府県ツアー「47都道府県巡業『龍跳狐臥』」を開催。7月31日の東京・日本武道館をもってツアーファイナルを迎える。


2015年4月15日更新