音楽ナタリー Power Push - 己龍×Royz×コドモドラゴン

3バンドのボーカリスト集結! 先輩後輩の垣根を超えたガチンコ決起集会

B.P.RECORDSに所属するヴィジュアル系バンド・己龍、Royz、コドモドラゴンによる合同CD「FAMILY PARTY」がリリースされる。己龍の酒井参輝(G)、コドモドラゴンのハヤト(Vo)が作曲、Royzの昴(Vo)が作詞を担当したリード曲「繚乱レゾナンス」は3バンドの個性とテクニックがぶつかり合う強力なロックナンバーに仕上がっている。さらに3バンドは今作を携え、全国10カ所を回るB.P.RECORDS主催のツアー「FAMILY PARTY」を実施する。

今回音楽ナタリーでは己龍の黒崎眞弥、Royzの昴、コドモドラゴンのハヤトによるボーカリスト鼎談を企画。「繚乱レゾナンス」の制作エピソード、合同ツアーに対する意気込み、そして、互いへのリスペクトと“負けたくない”という気持ちがせめぎ合う3バンドの関係性についても語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

3バンド初の合作「繚乱レゾナンス」

──己龍、Royz、コドモドラゴンによる合同CD「FAMILY PARTY」、そして初のレーベルツアーについてのインタビューになります。以前から気になっていたんですが、この3人だけで話す機会はあるんですか?

(Royz) ほとんどないですね。

ハヤト(コドモドラゴン) 今回の機会があるから今はベッタリ一緒にいますけど、普段は3バンドがツアーで転々としてるので。仲はいいから会えば話すんですけど、これだけ長い時間一緒にいるのは珍しいと思います。

──新鮮なトークになりそうですね。

黒崎眞弥(己龍) そうですね(笑)。

──では3バンドの合同による楽曲「繚乱レゾナンス」について。レーベルメイト3組でコラボすることが決まってからはどんな流れで制作されたんですか?

ハヤト(コドモドラゴン)

ハヤト まず作曲者として、僕と己龍の(酒井)参輝さんの名前が挙がって。参輝さんは己龍のメインコンポーザーで、僕もコドモドラゴンの曲をほぼ作ってるので、普段からよく2人で話をするんですよ。それぞれで作った曲を聴き合うくらいの仲なので、一緒に曲を作ることについても全然不安はなく、楽しみだったんです。あと曲の土台を参輝さんがいち早く作ってくれたのも大きかったですね。それまではみんな「どうなるの?」という感じだったんですよ、実際に走り出してみないとわからないし。そんな中で参輝さんが合同企画の第一走者として走り出してくれて。最初にもらったデモはもろに己龍の曲というか、すごく参輝さんっぽい感じでした。

黒崎 それはたぶん「アレンジでハヤトが絶対に変えてくれるはずだ」って思いがあったからだよね。

ハヤト そうだと思います。参輝さんに「どうします?」って聞いたら、「好きにやっちゃっていいよ」って言ってくれたし。そうやって任せてくれたことがうれしかったし、がんばって期待に応えたいなって。最後にみんなが「やってよかったね」って言えるように、まずは僕が必死にいいものを作って、次の誰かに渡さなくちゃいけないと思ったんですよね。

──具体的にはどう変えたんですか?

ハヤト コード進行やメロディを付け足した部分があるんです。僕の理想としては、サビに入る前にこの3人がそれぞれ単体で歌うところが欲しくて。最初の構成はAメロ、Bメロ、サビだったので、そうするとメロが足りないじゃないですか。だからCメロを足したんですよ。

黒崎 あ、そうなんだ。

ハヤト 歌う順番も自分の中で決めていて。まず昴から始まって、次に俺が歌って、Cメロのメロディアスなところを眞弥さんに歌ってもらってからみんなでサビに入るっていう。

 ハヤトがそれぞれのボーカルの特性を意識してメロディを考えてくれたので、よかったと思います。

ハヤト なかなかよくできてました?(笑)

 うん(笑)。いい流れだと思うし、不満とかは一切感じなかったな。

黒崎 想像してたよりも、いい具合に3人のボーカルがなじんだなって。僕は特に歌の癖が強いので「どうなるんだろう?」って思ってたんだけど、意外にスラッと聴ける感じに仕上がりました。

──確かに3人ともボーカリストとしての個性が強烈ですからね。

ハヤト 僕としてはまず、昴の歌唱力で聴いてる人を安心させたくて。Bメロのリズムに乗って歌う感じは俺にしかできないと思ったし、Cメロはとにかくメロディアスにして、サビにつなげたくて。あと眞弥さんに“和”以外のメロディを歌ってほしいっていう俺の思いもあったんですよ。

──己龍の音楽性のベースは“和”ですからね。黒崎さんが普段とは違うテイストのメロディを歌うことも、この曲のポイントですよね。

黒崎 歌詞とメロディの当てはめ方とか……ちょっと歌い回しが難しかったけど、そこはそのパートを付け足した昴の味なのかなって思った。

 うまくやってもらいました(笑)。

──作詞は昴さんが担当しています。どんなテーマで書いたんですか?

 デモを聴いたときはやっぱり「和風だな」と思って。僕の中のイメージは完全に“お祭り”だったんで、そのまま“和”に寄せました。でもお客さんの中には「己龍の事務所にいる3バンドが和風のシングルを出したってことか」っていうネガティブな印象を受ける人もいると思うんですよ。

ハヤト 「己龍の曲を3バンドでやっただけじゃねえかよ!」っていうのが一番サムいよね。

 そうそう。でも俺はそのイメージを恐れてなくて。日本人であるっていうのは共通しているし、ヴィジュアル系はジャパンカルチャーの1つですからね。その上で「この3バンドでできることってなんだろう?」ということを考えればいいんじゃないかって。俺としては「こんな思いを伝えたい」というよりも、ひたすら楽しい歌詞にしたいなって思ってましたね。

合作ができるまで

──演奏の割り振りはどうなっているんでしょうか?

ハヤト ドラムは己龍の遠海准司さん、ベースはコドモドラゴンのmeN-meNで、ギターは己龍の九条武政さんとRoyzの杙凪さんで、レコーディングの日程もバラバラ。各々のバンドの活動の合間にやってたから、1人ずつ順番に録音していく感じで。

黒崎 現代ならではの作り方だね。

己龍

ハヤト 直接会う機会がほとんどないですからね。己龍さんが武道館公演をやったとき(参照:己龍、「龍跳狐臥」千秋楽で念願の日本武道館に立つ)にみんなで会いましたけど、それまでは電話とメールのやりとりだけ。電話で打ち合わせてして「じゃあ、お互い今日もライブがんばりましょう」っていう。そういえば己龍さんは韓国にも行ってましたよね。

黒崎 そうそう、韓国でデモを受け取ったんだ。

──3バンドともライブの数が多いですからね。「繚乱レゾナンス」以外の収録曲は、それぞれのバンド名義の楽曲です。そのバランスはどうやって取ってるんですか?

 まあそこは自由に。それぞれのバンドの味もあるので。

黒崎 系統が全然違いますからね。

ハヤト もちろん曲調がカブるのはイヤなので、曲を形にするのが早い己龍さんから「俺らはこういう感じ」ってデモを聴かせてもらって、「やっぱりカブりようがないですね」って確認して(笑)。その後、Royzの曲を聴いて「なるほど、じゃあウチはこういう感じにするか」って感じで決めました。

──己龍は仕事が早いんですね。

ハヤト めっちゃ早いですね。

黒崎 そこはしっかりしてますね。特に参輝は作詞も作曲も本当に早くて。逆に武政は時間をかけてじっくり作り込んだ曲を持ってくるんです。己龍はコンポーザー2人のバランスがうまく取れてるんじゃないかな。

ハヤト 早い派と遅い派に分かれますけど、僕は遅い派ですね……。

黒崎 レコーディングに間に合わなかったりするし。

 ウチの公大(B)は曲を書くのが早いほうかな。趣味みたいに曲を作ってるんですよ。映画を観てるか、曲を作ってるかのどっちかっていう感じで。ゲーム感覚で常に作業してる感じなんですよ。

己龍(キリュウ)

己龍

黒崎眞弥(Vo)、酒井参輝(G)、九条武政(G)、一色日和(B)、遠海准司(Dr)からなるヴィジュアル系バンド。2007年に結成し、バンドのサウンドコンセプトを「和製ホラー」、ビジュアルコンセプトを「痛絶ノスタルジック」と銘打ち活動している。2009年10月にリリースしたシングル「月ノ姫」がオリコンのインディーズチャートで1位を記録するなど着実に知名度を上げ、2012、13年の間に47都道府県ツアーを2回開催。海外にも進出しており、2014年4月に韓国、中国、香港、台湾を巡る単独アジアツアーを敢行。同月に4thフルアルバム「暁歌水月」を発表し、ワンマンツアー「己龍単独巡業『暁歌水月』」を行った。11月から12thシングル「天照」のリリースを記念して全国ホールツアー「己龍単独ホール巡業『雅神天照』」を実施。2015年4月に13枚目のシングル「九尾」をリリースし、3度目の47都道府県ツアー「47都道府県巡業『龍跳狐臥』」を開催。7月31日に東京・日本武道館で千秋楽を迎えた。

Royz(ロイズ)

Royz

昴(Vo)、杙凪(G)、公大(B)、智也(Dr)からなるネオヴィジュアル系バンド。2009年9月に活動を開始し、デジタルロックサウンド、切なさや愛を歌った歌詞、昴の透明感あふれる歌声で徐々にファンを増やしていく。2010年1月にライブ会場限定シングル「星に願いを」を発表し、4月に初の自主企画「季節はずれの打上げ花火~Royzと一緒におバカさん~」を開催した。2011年4月にB.P.RECORDSに所属し、リリースのペースを落とさずにインストアイベント、ワンマンツアーなどで積極的に全国各地を回り続けている。2014年6月の東京・赤坂BLITZ公演をもってオリジナルメンバーの和稀(G)が脱退するも、翌7月からアジア公演を含むツアーを敢行。2015年5月に通算11枚目のシングル「THE BEGINNING」をリリースし、初の47都道府県ツアー「Royz 47都道府県 ONEMAN TOUR『The 47th Beginners』」を開催した。9月には大阪・なんばHatchでバンドの活動開始6周年を記念したワンマンライブ「6HEAVENS」を行い、成功を収めた。

コドモドラゴン

コドモドラゴン

2010年に結成されたヴィジュアル系バンド。メンバーはハヤト(Vo)、華那(G)、ゆめ(G)、meN-meN(B)、チャム(Dr)の5人。カラフルなビジュアルと、ポップス、プログレ、メタル、ハードコアなどさまざまなジャンルを融合させた楽曲でパワフルなライブを展開している。2013年6~9月に己龍の47都道府県ツアー「愛 怨 忌 焔」のオープニングアクトに抜擢され、同年11月には自身初のワンマンツアー「NEPENTHES.」で全国5カ所を回る。2014年1~4月にRoyzのワンマンツアー「Red Desire『LILIA』」に参加。4月に1stアルバム「Children's Dope.」をリリースし、その後「【VIper】」「SODOM」「WARUAGAKI」という3枚のシングルを発表。さらに台湾、香港、韓国でのライブに出演するなど活動の幅をアジア圏に広げた。2015年7月に2ndアルバム「下剋上。」を発表。同月より新作のリリースを記念した6度目のワンマンツアーを実施し、9月に東京・赤坂BLITZでツアーファイナルを迎えた。