浅葱|和がコンセプトの1stソロアルバム 豪華ゲストを迎えて完成

ヴィジュアル系バンドDのボーカリストであるASAGIが、浅葱名義による初のソロアルバム「斑」をリリースした。和をコンセプトにした本作は、日本の伝承や民話や歴史からインスパイアされた歌詞、多様性あふれるロックサウンドと伝統的な邦楽器を融合させた楽曲群からなる壮大な作品に仕上がっている。また、SUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)、真矢(LUNA SEA)、岡野ハジメ、DAITA(BREAKING ARROWS、BINECKS、ex. SHAM SHADE)といった日本のヴィジュアル系シーンを代表する豪華ゲスト陣のプレイも本作の聴きどころだ。

音楽ナタリーでは浅葱にインタビューを実施。初のソロアルバムに対する思い、作品のコンセプトと制作過程などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

かぐや姫の血を引く子孫が地球にやってくる物語

──初のソロアルバム「斑」がリリースされました。まずは浅葱さんの手応えを教えてもらえますか?

ソロとしてフルアルバムを作るのは人生初ですからね。Dのメインコンポーザーであり、作詞もすべてやっていますが、今回のアルバムの世界観は100%自分のイメージを具現化したものなので達成感はハンパなかったです。全曲の作曲、歌詞、メロディ、歌、アレンジのすべてにおいてこだわり抜きましたし、BPMを1変えるだけで半日くらい考えることもあって。しっかり時間をかけられたのもよかったです。

──Dとして約15年のキャリアを重ねてきたわけですが、このタイミングでソロアルバムを出すことになったのはどうしてですか?

浅葱

2016年4月にメジャー第1弾ソロシングル「Seventh Sense / 屍の王者 / アンプサイ」を出したのですが、そのときに「ソロアーティストとしての表現を探求したい」という向上心がさらに高まってきて。自分自身から生まれる世界をもっと深く描いてみたくなったし、それはDとは違うベクトルのアウトプットになるはずだと思ったんですよね。その気持ちがフルアルバムというボリュームにつながったんじゃないかなと。

──ソロアーティストとしての方向性も明確だった?

もともと世界各国の民族音楽が好きなので、最初は「アルバム1枚を通して、世界中を旅しているような気持ちになれる作品を作ってみたい」と思っていたんです。そこでまずは日本的な和をモチーフにした楽曲を作ろうと思い、「月界の御子」という曲の制作に取りかかったのですが、そこで完全に和のモードに入ってしまって。その後もどんどん和の楽曲があふれてきたので、アルバム全体のコンセプトを和にしようと。だからシングル曲はまったく入ってなくて、すべて新曲になったんです。

──和をモチーフにした楽曲が現在の浅葱さんのモードに重なった?

はい。自分らしい作品、自分にしかできないことをやろうと常々意識しているのですが、その1つがまず「日本人であること」だと思っていて。この国の伝統文化を融合した作品は、日本で育ってきた自分だから作れるものですからね。以前Dで「桜花咲きそめにけり」というシングルを発表したり、胡蝶という和テイストのユニットをやっていたりしたこともあるのですが、これほど和の楽曲があふれ出てきたのは初めてなんですよ。ソロ作品のもう1つの特徴は、孤独な世界が中心になっていることですね。Dの場合はメンバーと一緒に演奏することが大前提だし、絆、つながりといったテーマが自然と多くなるんです。自分1人で制作すると、どうしても孤独を表現したくなる。そこは大きな違いでしょうね。

──なるほど。アルバム「斑」は壮大な物語を軸にしたコンセプチュアルな作品に仕上がっています。アルバム全体のテーマはどんなものなのでしょうか?

浅葱

「月界の御子」を作ったあと、それに続く物語を考えたんです。これは胡蝶の楽曲「輝夜」ともリンクしているのですが、「月界の御子」は「かぐや姫の血を引く子孫が地球にやってくる」というストーリーが中心になっていて。かぐや姫は月に帰るときに地球での記憶を消されたということになっていますが、僕の考えでは実は記憶が残っていて、地球のことを子孫に話していた。地球に憧れを抱いた子孫がついに地球にやってきて、人間と恋に落ちてしまう。「その後、御子は何をしただろうか?」と考えて、妖怪退治をさせることにしたんですよ。それが「妖刀玉兎」「物の怪草子」といった曲につながったという。さらに妖怪の視点から書いてみようと思ったのが「冬椿 ~白妙の化人~」「白面金毛九尾の狐火玉」などですね。1曲1曲が独立していて、すべてシングルにできるような異なる輝きを持ちながら、アルバム全体が芸術作品としてまとまっている。そんな理想のアルバムができあがったと思っています。

──「かぐや姫」の物語にインスパイアされたことがすべての起点だったんですね。

そうかもしれないです。日本古来のお話が大好きなんですよ。小さい頃にアニメの「まんが日本昔ばなし」もよく観ていたし(笑)、自分の中に根付いているものがあるのだと思います。あと、楽曲を作っているときに故郷の景色が浮かぶことも多かったですね。例えば「畏き海へ帰りゃんせ」とかもそう。自分の中に存在しているものが自然と出て来たんでしょうね。

歌詞はすべて古語、本人書き下ろしの意訳付き

──ヘヴィロック直系のバンドサウンドと箏、三味線といった日本に古くからある楽器を融合させたアレンジも素晴らしいですね。

ありがとうございます。制作を通してすごく楽しみながらやっていましたが、わざとらしくなるのだけは避けたいと思っていたんです。ロックバンドのサウンドに対して、いかに自然な形で和楽器のフレーズを取り込むかはすごく考えましたね。着物を着て扇子を持って、和楽器を使うだけでは和は表現できない。そうではなくて、伝統を正当に受け継ぐ音楽を目指しました。

──和楽器、純邦楽の勉強も必要ですよね。

浅葱

そうですね。歌詞をすべて古語で書いたのですが、自宅にある書物だけではなく、資料をたくさん集めて、複数の辞書を突き合わせながら確認して。CDのブックレットには意訳も付けたのですが、日本人が日本語で作った歌に訳が付いているのは、おそらく初めてじゃないかな(笑)。

──確かに(笑)。全編古語による歌詞も史上初だと思うのですが、作詞の作業はどうでした?

とても興味深かったです。全曲メロディが先なんですが、1つひとつのフレーズに古語を当てはめていくのは、俳句や短歌の延長線上にあると思うんですよ。歌詞はもっと長いですが、響きの美しさ、言葉が持つ深い意味合いなどは共通しているので。このアルバムには膨大な情報量が込められていますが、凝縮された言葉でリスナーに伝えることができたのではないかと思っています。そういう美学も自分のスタンスに合っていたし、このアルバムが古語の美しさに触れるきっかけになったらうれしいですね。

──古語を歌うことで、ボーカルの表現にも変化があったのでは?

重心を下げて、芯の部分をしっかり出したいという思いはありました。ロックだからノリも重要なんですが、それだけではなく、艶っぽさとか雅なイメージも出したくて。温故知新的な発見も多かったし、声の出し方、表情の付け方も今までは違っていると思いますね。全曲、細部にもすごくこだわっているんです。例えば「冬椿 ~白妙の化人~」では雪女の雪の息を表現するために高音のファルセットを生かしたり、「白面金毛九尾の狐火玉」では狐が跳ねている場面をイメージして歌ったり。ちなみにこの曲は“九尾”なので九拍子のテーマを作って、曲順も9曲目にして。歌詞ができたのも去年の9月9日だったんですよ(笑)。

浅葱「斑」
2018年1月31日 / HPQ / avex trax
浅葱「斑」CD+DVD

[CD+DVD]
4320円 / YICQ-10401/B

Amazon.co.jp

浅葱「斑」CD

[CD]
3240円 / YICQ-10402

Amazon.co.jp

CD+DVD盤収録曲
  1. 天地(あめつち)行き来る小船
  2. 月界の御子
  3. 畏き海へ帰りゃんせ
  4. 花雲の乱
  5. 隠桜(おぬざくら)
  6. 螢火
  7. 大豺嶽(おおやまいぬだけ)~月夜(つくよ)に吠ゆ~
  8. 冬椿 ~白妙の化人~
  9. 白面金毛九尾の狐火玉
  10. 鬼眼羅(きめら)
  11. 雲の通ひ路
  12. 物の怪草子
  13. アサギマダラ
DVD収録内容
  • 月界の御子(Music Video)
  • 月界の御子(Music Video with lyrics)
  • 月界の御子(Music Video Making)
CD盤収録曲
  1. 天地(あめつち)行き来る小船
  2. 月界の御子
  3. 畏き海へ帰りゃんせ
  4. 花雲の乱
  5. 隠桜(おぬざくら)
  6. 螢火
  7. 大豺嶽(おおやまいぬだけ)~月夜(つくよ)に吠ゆ~
  8. 冬椿 ~白妙の化人~
  9. 白面金毛九尾の狐火玉
  10. 鬼眼羅(きめら)
  11. 雲の通ひ路
  12. 妖刀玉兎
  13. 物の怪草子
  14. アサギマダラ
ゲストアーティスト

aie(the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy、THE MADCAP LAUGHS、KEEL)
亜季(Sadie、AXESSORY)
天野攸紀
岡野ハジメ
K-A-Z(sads、DETROX、STEALTH、カイキゲッショク)
奏-kanade-
沙我(A9)
咲人(NIGHTMARE、JAKIGAN MEISTER)
Sakura-櫻澤泰徳(gibkiy gibkiy gibkiy、Rayflower、THE MADCAP LAUGHS、ZIGZO)
SYU(GALNERYUS)
SHUSE(†яi¢к、La'cryma Christi)
真矢(LUNA SEA)
Shinya(DIR EN GREY、SERAPH)
樹威(GOTCHAROCKA)
JUN(GOTCHAROCKA)
淳士(BULL ZEICHEN 88、ex. SIAM SHADE)
SUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)
DAITA(BREAKING ARROWS、BINECKS、ex. SHAM SHADE)
千聖(PENICILLIN、Crack6)
Tsunehito(D)
TERO(†яi¢к)
十夜(GOTCHAROCKA)
遠海准司(己龍)
TOSHI(Gargoyle)
Tomoko(HEAVENESE)
中村佳嗣(Eins:Vier、alcana、青天の霹靂、yohiaco)
HIDE-ZOU(D)
人時(黒夢、CREATURE CREATURE)
HIRO(La'cryma Christi、CREATURE CREATURE)
HIROKI(D)
藤原いくろう
MiA(MEJIBRAY)
MOTOKATSU
Motoki(HEAVENESE)
you(Janne Da Arc)
燿(摩天楼オペラ)
yo-ka(DIAURA)
Ruiza(D)
Leda(Far East Dizain)
LEVIN(La'cryma Christi)

浅葱全国単独公演 二〇十八「斑(まだら)」
  • 2018年2月10日(土)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
  • 2018年2月17日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2018年2月18日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2018年2月22日(木)岡山県 IMAGE
  • 2018年2月23日(金)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2018年2月25日(日)福岡県 DRUM SON
  • 2018年3月3日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2018年3月8日(木)宮城県 仙台MACANA
  • 2018年3月11日(日)北海道 COLONY
  • 2018年3月17日(土)大阪府 OSAKA MUSE
  • 2018年3月18日(日)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2018年3月24日(土)東京都 新宿BLAZE(※千秋楽)
浅葱 / ASAGI(アサギ)
2003年結成のヴィジュアル系バンド・Dのリーダー兼ボーカリストかつ自身で立ち上げた有限会社GOD CHILD RECORDSの代表。Dでは全楽曲の作詞や作曲を担当し、作品のトータルプロデュースを手がけている。バンドとして動員やセールスを着実に増やし続ける傍ら、2006年にソロシングル「Corvinus」をリリース。2016年4月「Seventh Sense / 屍の王者 / アンプサイ」を発売し、ソロとしてメジャーデビューを果たす。2018年1月には浅葱名義でメジャー1stアルバム「斑」を発表し、2月に全国12都市を回る単独ツアーをスタートさせた。