KIRINJI|堀込高樹と千ヶ崎学が語るサウンドの正しい答え

鎮座くんって“モノホン感”あるじゃないですか

──RHYMESTERをフィーチャーした「The Great Journey」以降、シングルにゲストを迎えるというスタイルもKIRINJIをまだ知らない、聴いたことがない人に向けての発信と受け止められます(参照:「ネオ・KIRINJIを語らう KIRINJI×RHYMESTER座談会」)。

堀込 その意図はもちろんあります。あとは昔から聴いてくれている人にはマンネリに陥っていない作品を届けたいという気持ちも込めています。もちろん、バンドとしてもいい刺激になりますし。逆にKIRINJIのファンにも、フィーチャーしたミュージシャンを知ってもらえる機会にもなる。

──ニューアルバム「cherish」では先行シングルでもある「killer tune kills me」でYonYonさんを、先行配信された「Almond Eyes」で鎮座DOPENESSさんをフィーチャーしていますが、高樹さんはこの2組に機会があったら参加してもらいたいと思っていたのでしょうか?

堀込 そうなんです。YonYonはタイミングよくInstagramをフォローしてくれていて、ちょうど「killer tune kills me」ができて、これはもう今しかないということでオファーしました。鎮座くんも、「Almond Eyes」という今までのKIRINJIにしてはクールでソウルっぽい曲ができたので合うかなと思って声をかけたんです。彼はZEN-LA-ROCK、G.RINAと一緒にFNCYというユニットもやっていて、前から聴いて気に入っていました。ああいうキラキラとしたサウンドをやるタイプだと思ってなかったから、こういう曲もやるんだったらKIRINJIも頼めばやってくれるかなと。

──彼には何か曲に対してのリクエストなどはしたんですか?

堀込 いえ、ほとんどなかったです。こんな感じなんですけどって曲を投げて、最初に会って打ち合わせをしたときに、この曲の歌詞は女性の一部分をテーマにしていて、そこから放たれるイメージを具体化していくのがいいんじゃないかという話をしたくらいで。もしかしたら2つパートがあるので、やりづらかったかもしれませんね。前半は畳みかける感じで、後半はメロウラップみたいな感じで。すごくいいバランスになりました。僕が最初にイメージしていたラップは8分音符っぽい刻みが中心になるもので、鎮座くんのスタイルもそんなふうだと思っていました。でも、歌メロが8分でラップも8分だと上がらない感じになってしまう。そこは鎮座くんが考えて、歌はゆったりしているから、ラップのパートは畳みかけるようにしようと判断したんじゃないでしょうか。モノホンが来たという感じで。鎮座くんって“モノホン感”あるじゃないですか(笑)。

──モノホン感(笑)。「The Great Journey」以降、KIRINJIのサウンドとヒップホップの親和性が高まってきている気はします。

堀込 もちろん相性がよさそうな曲を選んでお願いしていますが、「Almond Eyes」はJ-POPにおけるサビ的なものがない。1つのメロディの連なりと展開するメロディがあって、それを歌だけで引っ張るとなると平板な曲になるので、ラップが入ってくるとちょうどいい起伏ができるんです。「killer tune kills me」も含めて、サビの役割を果たせるほどフックのあるラップになったと思います。ABCの展開があるのはJ-POPだけで、それはある意味、貴重というか独特で面白いものですが、これまで散々やってきましたし、新鮮な気持ちで曲作りをしようとするとどうしてもその定型から外れていってしまう。何がなんでも世の中のトレンドに合わせようというつもりはありませんが、今流れてきて心地いいなと思える音楽がだいたいそういったテイストなんですよね。

千ヶ崎 僕は曲の構造がJ-POPじゃないことが気になったというか、これをシングルとして出しても大丈夫なのかなと最初は思いました。ものすごく好きなタイプの曲なんですけど。最終的に構造がどんなふうになっても、日本のポップス、J-POPとして成立するというのは歌詞によるところが大きいんだなと改めて思いました。

「雑務 雑務 雑務」だけのサビ

──歌詞に関しては従来通り、曲調に合わせて付けていったんですよね?

堀込高樹(Vo, G)

堀込 はい。でも「雑務」は語感がおもしろいから、“雑務”というワードを使って曲を作りたいというアイデアがずっとあって。先にBメロを思い付いて、ここに雑務にちなんだ言葉遊び的な雰囲気のある言葉を当てはめてサビにしようとしたのですが、このパートを一番のフックにすると普通だなと気付いて。そのあとによりリズムを強調するようなものが来たら面白いかなと思って、「雑務 雑務 雑務」だけのサビを持ってきました。

──6曲目の「善人の反省」はわりと辛辣な内容の歌詞ですね。

堀込 これは詞先で作った歌詞です。頭の2行のメロディはできていたのですが、そこから先はだらだらと考えていき、トラックをエレピのループとシンプルなリズムにして、千ヶ崎くんが家に来てくれたときにベースを弾いてもらって完成させました。メロディを紡いでいくというよりも、メロウラップみたいなものにしたかったのですが、単にメロウラップみたいなことをやっても様にならないなと感じて、ギターでメロディを弾きながら歌うジャズミュージシャン、ジョージ・ベンソンやトゥーツ・シールマンスとかの感じで弾きながら歌詞を歌ったら面白いかもと思い付きました。そうすると器楽的な譜割りやリズムの取り方になる。そのジャズっぽい器楽的なメロディは、今のヒップホップに影響を受けたシンガーたちの音楽に近しいもので、タメたり、3連符や5連符が入ったりする。そうしたボーカルスタイルにアプローチするのならば、この手法が最適かなと思いました。

──8曲目「休日の過ごし方」は前作の「時間がない」に通じるような人生を見つめる歌詞で、続編的だと思いました。歌詞全体に言えることですが、KIRINJIになってからは意識的にわかりやすい言葉を選んでいるというのがわかります。

堀込 これはミドルエイジクライシス第2弾、独身編です(笑)。前作もそうでしたが、ダンサンブルな曲に観念的な表現や複雑な比喩、暗喩が散りばめられていてもノレないんですよね。曲全体が鈍重な感じになってしまう。だから風通しをよくする意味でもわかりやすい歌詞を心がけています。