上白石萌音|自らの意思で切り拓く“シンガー・上白石萌音”の新たな表情

「よし、やってみるか!」という気持ちを大事にしたい

──映画「L♡DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」と、その主題歌である「ハッピーエンド」。そこからどんなものを感じ取ってもらいたいですか?

恋することの楽しさ、好きな人がいることの素敵さみたいな気持ちを味わってもらえたらいいですよね。あとは、各主人公たちがものすごくリアルな悩みを抱えていたりもするので、そこに自分を当てはめて一緒に悩み、一緒に乗り越えていってほしいという思いもあります。「ハッピーエンド」は、そういった映画の内容をしっかり後押しできる内容に仕上がっていると思うので、映画とひとくくりに愛してもらえれば。最後の1音まで心に染みこませてもらえたら、これ以上うれしいことはないです。主題歌のタイトルが「ハッピーエンド」ですからね、これから映画をご覧になる方も安心して観に行ってほしいです(笑)。

──ミディアムテンポの楽曲が映画自体のいい余韻を感じさせてもくれますしね。

上白石萌音

そうですね。全体的に次から次に展開していく映画でもあるので(笑)、観ている方は主人公たちと共にわーっと翻弄されてしまう部分もあるとは思うんですよ。でも最後に流れるこの曲で鎮魂と言いますか(笑)、クールダウンして穏やかな気持ちになってもらえるんじゃないかなと。その状態で改めて映画の世界を深く噛みしめてもらうといいかもしれませんね。

──今回ひさしぶりの新曲をリリースされた萌音さんですが、振り返ればCDデビューからは約2年半ほどの時間が経ちました。

そうですね、うん。そうみたいです(笑)。

──いちリスナーとして聴かせていただくと、萌音さんの歌はふんわりとした心地よい雰囲気をまとっていて、聴き手に癒しを感じさせてくれる魅力があるように思うんですよね。

確かにとがった感じではないですよね。今後そういった側面が見えることがあるかもしれないけど、どこか力を入れすぎない感じで雰囲気は1つの個性としては持ち合わせているのかもしれないです(笑)。

──その大きな個性だけにとらわれず、いろんな表現にトライしていきたい気持ちもありますか?

そうですね。そういう曲に出会うことがあれば、とことんとがってやりたいという気持ちはあります(笑)。「自分はこうなんだ」みたいな感じで決めつけることなく、何に対しても仕切りを作らずに「よし、やってみるか!」という気持ちを大事にしていきたいなとは思っているんですよね。そのための技量はもちろん磨いていかなければいけないとは思うんですけど、トライしてみる分にはタダですから(笑)。

自分のこだわりを一番強く見せられる場所こそが音楽

──では、近い未来に向けた目標って何かあったりします?

これは音楽だけに限らずなんですけど、今年はいろんなことに対してこだわり抜く年にしたいなと思っていて。私は子供の頃から比較的、相手に譲りがちだったんですよ。自分で思っていることがあったとしても、相手に何か言われたら「じゃあそれでいいよ」と言ってしまうっていう。でもそろそろ「私はこう思ってるんです!」ということをはっきり言えたほうがいいと思うんですよね。そういうこだわりを一番強く見せられる場所こそが音楽だと思うので、とことんこだわって楽曲を作って行けたらなと。それこそ、音楽において自分らしくあれたらいいかなと考えているところですね。

──萌音さんにとって歌うことはずっと変わらず楽しいものとして存在していますか?

実はCDデビューした当初、歌うことが全然楽しくなくなってしまった時期があったんです。曲を歌っても、楽しいという気持ちよりも先に「音程を外した」「声が震えた」「息が足りなかった」みたいな反省ばかりをするようになってしまったんです。そういう状況が続くことで、歌うことが怖くなったりもして。

──技術的な面ばかりに意識を向けたことで、歌うことの楽しさを忘れてしまったと。

そうなんです。でも、歌うことが純粋に楽しくて、「早く歌わせてくれ!」って常に思っていた子供の頃のような気持ちをエネルギーにできないのであれば、それは私にとっての歌ではないのかなって。

──そのエネルギーは取り戻すことができたんですか?

今はもう大丈夫です。自分が楽しくなければ、それは絶対聴いてくださる方に伝わってしまうものですからね。歌うことが楽しい、歌うことが好きだという気持ちを何よりも一番大切にしようと今は思えています。そのうえで、しっかり歌えるように技術を磨いていく気持ちもありますし。なので、ここからはライブも含め、楽しいと思えることをどんどんやっていこうと思っています。

上白石萌音