上白石萌音|自らの意思で切り拓く“シンガー・上白石萌音”の新たな表情

内澤さんの心の中には絶対ちっちゃい女の子が住んでる

──内澤さんが手がけた歌詞は、萌音さんが演じた主人公の西森葵ちゃんの心情に見事にリンクしていますよね。男性が書いたとは思えないというか。

上白石萌音

ほんとですよね! なんでこんなにかわいい歌詞が書けるんだろうって思いました。女の子よりも女心をわかっているというか。内澤さんの心の中には絶対、ちっちゃい女の子が住んでるんだと思います(笑)。葵というキャラクターの気持ちにめちゃくちゃリンクしているから、私自身、曲を聴くたびに「葵はあのとき、こういう感情だったのかもしれないな」って改めて気付くことがあったりして。同時に恋する女の子が聴いたら、みんな共感できるような広がりも持っていますしね。私的には、あのシュッとして飄々とした雰囲気の内澤さんが部屋でこの歌詞を書いていたことを想像すると、それだけでちょっとキュンとしてしまうんですけど(笑)。

──内澤さんが出されていたコメントを拝見しましたが、萌音さんが映画の中でトライした初のキスシーンを歌詞に落とし込むことにこだわったそうですよね。

はい。そこはかなりこだわってくださったみたいです(笑)。あと、デモの段階の歌詞には“愛”という言葉が使われていたんですけど、できあがった「ハッピーエンド」には一切出てこなくなっていて。それについて内澤さんに聞いたところ、「高校生は“愛”じゃない。“恋”なんだ」っておっしゃっていました。

──映画は高校を舞台にしていますからね。

そういう細かい部分までこだわり抜いて作詞してくださっているんですよね。あ、中にはデモの歌詞から残ったフレーズもあるんですよ。出だしの「せっかくのケーキも失敗作」ってところとか、サビの「何千もの星の下で巡り合う奇跡」とか。頭の中で映像がパッと広がるフレーズだし、何よりも数年間繰り返し聴いてきた歌詞でもあるので、私としてはすごく愛着のあるパートにはなっていますね。

映画があったからこそこの曲を歌うことができた

──歌に関してはどんな思いでレコーディングに臨みましたか?

内澤さんが映像のイメージを伝えて歌のディレクションをしてくださったんですよ。最初はちっちゃい部屋の中で歌っている感じ。サビではその部屋の壁がドリフのコントみたいにバコーンと4方向に倒れるから、夜空の下で歌っている雰囲気で歌ってみてください、って。なので私はそれを頭の中で完全再現しながら歌いました(笑)。

──その映像を思い浮かべたことで、どんな表現が出たと思いますか?

最初は音もすごくシンプルなので、思っていることがポツリポツリとあふれているような雰囲気ですよね。自分の感情を鼻歌みたいに口ずさんでいる感じというか。で、サビではいろんな音が盛りだくさんな壮大なサウンドになるので、ハッピーな雰囲気、多幸感のある声で愛を叫んでいる感じ……ですかね。全体的に歌い上げるタイプの曲ではないけど、サウンドやストーリーに合わせた起伏、緩急みたいな部分をちゃんと出せるように意識しました。

──1曲の中でいろんな表情が見えますけど、全体通して笑顔が見える歌声になっている印象もありました。

上白石萌音

ああ、そうですね。もうニッコニコしながら歌ってましたよ(笑)。ちょっとノロけている感じというか、部屋に1人でいることをイメージしたからこその声色が出ている気がします。全体的なイメージはありながらも、「思い切り遊んじゃってもいいですよ」とおっしゃっていただけたのも楽しかったですね。内澤さんのアイデアも取り入れつつ、小悪魔的に歌ってみたりとか、ウィスパーっぽく歌ってみたりとか、ノドをキュッと締めて歌ってみたりとか、使われる使われないは別として、いろんな表情を試せたのもよかったなと思います。

──デモを聴き込んでいたことでメロディがカラダに入っていた分、より自由に表現を試せたところがあったのかもしれないですね。

そうですね。内澤さんの曲は基本的にすごく難しいんですけど、この曲はちょっと聴いただけで覚えられてしまうくらいメロディもキャッチーだし、描かれている感情もシンプルでストレートですよね。あとは私のことをデビュー当時から知ってくださっている内澤さんだからこそ、というのも大きかったと思います。レコーディング中はずっと安心感に包まれていたので、あまり緊張することなくいろんな表現を解き放つことができたのかなって思います。終始、健やかに気持ちよく歌えました(笑)。

──その結果、萌音さんの新たな魅力を感じさせてくれる楽曲にもなっていますし。

確かに今までの私は、ここまでかわいらしい曲をあまり歌ってこなかったですからね。そういう意味でも新しい引き出しを開けられた実感はあります。「L♡DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」という映画があったからこそこの曲を歌うことができたわけだし、逆にこの曲を歌うために映画があったのかなと思っちゃうところもあって。そんな運命的な関係にある映画と「ハッピーエンド」には私自身、すごく感謝しています。